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Chris Anderson 「Inverted Image」(1961)

 ぺたりと撫ぜるロマンティシズムが漂うアルバム。

 クリス・アンダーソンはシカゴ出身。盲目と骨形成不全症に悩まされ、演奏活動もままならなかったらしい。
 本盤は彼が35歳にリリースしたデビュー作。リバーサイドのサブ・レーベル、ジャズランドから発売された。
 ただし本盤は実質的には2ndリーダー作。本盤の前に"My Romance"を60年に吹き込んだ。しかし83年までリリースはなされず。

 本盤のあとにも数枚のサイドメンで吹きこみはあるけれど、3rdは"Love Locked Out"(1990)まで、約30年も録音の機会に恵まれなかった。
 けっして評価の低いミュージシャンではなく、運が悪かったようだ。
 ちなみにサイドメンの経歴は長い。ビバップ時代にパーカー"An Evening at Home with the Bird"(1950)と録音あり。
 シカゴ繋がりか、サン・ラと"Sun Ra Sextet at the Village Vanguard"(1992)で共演するなど幅広く拘らないスタイルのようだ。

 特段に本盤でフリー寄りの演奏はしていない。しごくオーソドックス。テンポを緩やかにじっくり滑らかなタッチでピアノを奏でた。むしろ歯切れよさを抑え、撫でるようなアタックがときおり目立つ。
 武骨なタイム感で拍を揺らしながら。サイドメンがいなければ、もっとのびのびとフレーズやテンポを振らすのかもしれない。

 ピアノトリオな本盤、ベースのビル・リーは本盤の以前の録音"My Romance"にも参加の、顔なじみであろう関係。ドラムはフィリー・ジョー・ジョーンズが3曲で叩いた以外は、当時のセッション・ドラマーWalter Perkinsが務めた。
 録音は2回に分かれた。まずジョーンズと6月28日に。次は5ヶ月置いて11月8日にパーキンスのドラムで録音された。
 ジョーンズの歯切れ良いドラムの切れより、もう少し穏やかなビート感を求めたのかもしれない。

 本盤8曲中、アンダーソンは(1)(4)(6)と3曲の自作を投入した。他の盤でもさほど自曲に拘っていないようす。やはり本盤は気合を入れて得意のレパートリーを並べて臨んだレコーディングなのかもしれない。

 ピアノのスタイルは多彩だ。スインギーかつ小粋なアプローチから、武骨な暖かいフレーズでグルーヴまで。それらをテクニックでなく自然なセンスを伺わせる。けっして指が回るほうではない。早いフレーズではおぼつかなく走るときもある。
 けれども慌ただしくも、危なっかしくもない。キャリアの蓄積がなせる技か。

 オリジナルの(6)が切ない甘さを持って、美しく胸を焦がす。良い曲だ。緩やかなバラードで、もごもごとフレーズを弾ませた。
 これはパーキンスとの11月セッションより。ブラシのバズり具合と、訥々と拍頭をずらして優しくヒットさせるベースが、とことん柔らかいピアノを引き立てた。

 リイシューは単独でもMP3で出ているが、前述の"My Romance"と2in1のほうが手っ取り早いかも。
 

Track listing:
1 Inverted Image 5:55
2 Lullaby Of The Leaves 4:50
3 My Funny Valentine 4:22
4 See You Saturday 4:31
5 Dancing In The Dark 4:28
6 Only One 3:30
7 I Hear A Rhapsody 5:03
8 You'd Be So Nice To Come Home To 5:43

Personnel:
Chris Anderson - piano
Bill Lee - bass
Philly Joe Jones (tracks 4, 7 & 8), Walter Perkins - drums

Recorded at Bell Sound Studios in New York City on June 28, 1961 (tracks 4, 7 & 8) and at Plaza Sound Studios in New York City on November 8, 1961 (tracks 1-3, 5 & 6).

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