Prince 「Graffiti Bridge」(1990)

 蔵出しと録り足しでバラエティさを狙うも、寄せ集めな散漫に至った。
 

 90年の同名映画サントラで、スタッフ側は誰もが"Purple Rain 2"を期待したろう。だが映画はコケてしまう。プリンスは映画"Graffiti Bridge"に燃えていたはず。"Under the Cherry moon"でケチが付いた映画ベタのレッテルを払拭するべく。ぼくは映画を見たことないので、ここでは触れない。

 本サントラはバラエティさを狙った。前作"Batman"を元に「サントラなら好き放題できる」とプリンスは思ったのか。趣味性を敢えて消し、"Purple Rain"の集中力さもない。
 自分一人で隙無く作った"Purple Rain"とことなり、ファミリー性を強調した。本盤に参加したゲスト、ジョージ・クリントンのP-Funkのファミリー具合を模倣でもなさそうだ。

 CD時代のパッケージ性を見誤ったか。ぼくはプリンスのコンセプト編成はLPサイズでこそ映えると思う。A面とB面の冒頭と最後で4回のメリハリを作れるLPに比べ、CDはあまりに長い。
 "1999"の時とは違う。プリンスは本盤で初めてCDサイズを意識した盤を作った。

 トラックひとつながりで連続性を狙った"Lovesexy"とは違う。CDでドラマ性を作ることを狙った。そのメリハリが、Timeやメイヴィス・ステイプルズ、テヴィン・キャンベルの起用だったのかもしれない。
 
 アルバム1枚に17曲を詰め込んだ。ゲストの起用はあくまでシンガーとしてのみ。楽曲や演奏はきっちりとプリンスが締めあげた。傀儡から脱したTime、ベテランのクリントンやメイヴィス、初々しいテヴィン。それぞれの多様さが産むメリハリを狙ったのかも。
 Prince Vaultには本盤に至る3種類の曲順が記された。本項最後にコピペする。
 ざっくり概観すると、LPとCDの曲順で模索に見える。
 最初はLP一枚サイズ。合計10曲だった。だがそのほとんどが発売までに没となる。思うにプリンスはまさに"Purple Rain 2"な取られ方を嫌ったのかもしれない。

 約1年後のガラリ変わった曲順ではほぼ、現在の並びに近い。14曲入りとボリュームを増した。このときのゲストはTimeに絞られ、本盤に収録の(3)(9)(11)すべてが並んだ。逆に(13)が無い。
 不思議なのは、なぜここでプリンスは蔵出し集へ本盤のコンセプトを変えたか、だ。これはあとに触れる。

 そしてもう一度いじった曲順は、LPの並びでPrince Vaultに記されている。曲順はほぼ同じ。違いは(6)がプリンスのボーカル版で、(13)(14)が逆なこと。これはCDサイズで並べたのを、LPでハマるか試したのではないか。
 メリハリをさらにつけるべく、(6)にテヴィンをあてがって本盤に至る。

 もしかしてプリンスは孤高から、ボスとしてファミリーづくりを望んだのか。
 のちのバンド名で続く(2)も初めて本盤で現れる。
 ニュー・パワー・ジェネレーションとは、古い世代とは違う自分自身になぞらえたと読む一方で、「自分より後の世代」とも思える。むしろ後者の意味では無いか。

 当時の時代感を思い返すとピンと来るはず。はっきり言って、リアルタイムではこのときのプリンスは一世風靡したあと、の立場だった。ベテランの域で時代の先駆をひっぱる求心力は"Lovesexy"で終わった。
 当時は今ほどミュージシャンの活動スパンは長くない。ベテランに位置付けられたプリンスは、だからこそ蔵出しでお茶を濁そうとしたのか。

 繰り返しになるが、"Purple Rain"での集中力はすさまじかった。どこにも弛緩を許さず、メリハリと情報量の詰め込みに専念した。
 けれども本盤には、そのギラギラする熱意が感じられない。それぞれの曲で出来は決して悪くない。でもなぜこんなに、蔵出しばかりなのだろう。

 謎だ。起死回生のアルバムではなかったのか。自分で奮起した映画のサントラなんじゃないのか。
 "Batman"の復活を経て、今なら何でもできるとの思い上がったか。実際、曲は別にわるくないんだもの。

 本盤収録曲の元音源はブート流出を当時、してたっけな?前述のように本盤は、蔵出しの要素も強い。
 一番古いのが81年録音の(10)。すべて本盤のために再録されているが、さながら没曲再生産集のようだ。他に(1)(4)(8)は過去曲のお色直しとなる。

 87年の時点で(13)(16)は既に存在した。映画のために書いた曲、と解釈もできるだろう。しかし前述の「最初のLPサイズ」で(13)は外されている。
 (14)(5)(15)と曲が足され、Timeの作品がつくられる。

 映画のために新曲を一気に書き下ろしではない。「最初のLPサイズ」の紆余曲折を挟み、じわじわとプリンスは曲を書き足していった。このつぎはぎぶりが散漫さにつながるのか。
 このあともプリンスは例えば"Rave Unto The Joy Fantastic"のように、旧曲を蔵出しはやっている。ブートや録音時期を気にするから「蔵出し」何ぞと思うだけで、純粋に発売したものだけを見つめていれば、蔵出しも書き下ろしもない。世に出た時が新曲だ。

 本盤は発売当時、すごくよく聴いた。だが熱狂はしなかった。80年代の時代を牽引したプリンスとは明らかに違う。才能の枯渇か?とも思った。
 CDというデジタルに移りファットな質感から乾いて硬質な価値観に変わっていく時代だった。
 スマートに整った世界観を狙ったのかな、とも思った。

 あえて聴き返す頻度は、正直少ない。改めて一曲を切り取ると、悪くない。だが小粒に思えてしまう。(15)を筆頭に、一曲単位で見たらアレンジは練られており、小宇宙を作ってはいるのだが。

 デジタルな録音スタイルを模索した一枚だったのだろうか。
 実際、次の"Diamonds And Pearls"ではデジタル・ビートの追求と、ツアー先で録音を試みるライブ性の併存でさせる。ペイズリー・パークに籠ってしまわず、新たなアプローチを行っている。

  

 あと、長髪ストレートな髪形なプリンスを見て、マイケル・ジャクソンみたいに白人風スタイルに寄ったのかとも思ったっけ。

 もひとつ、こじつけの余談。(13)で"you're fired!"ってフレーズがある。同時期にTimeが発表のアルバム"Pandemonium"にプリンスは"Donald Trump (Black Version)"を提供した。
 いっぽうドナルド・トランプが"you're fired!"って言葉をTV番組"アプレンティス"で使ったのは04年以降。単なる、偶然だ。しかしプリンスが既にトランプのキメ台詞を先取りしてるみたいで、妙な符合の面白さがある。


Track listing:
1. Prince Can't Stop This Feeling I Got 4:24
2. Prince New Power Generation 3:39
3. The Time Release It 3:54
4. Prince The Question Of U 3:59
5. Prince Elephants & Flowers 3:54
6. Tevin Campbell Round And Round 3:55
7. Prince and George Clinton We Can Funk 5:28
8. Prince Joy In Repetition 4:53
9. The Time Love Machine 3:34
10. Prince Tick, Tick, Bang 3:31
11. The Time Shake! 4:01
12. Prince Thieves In The Temple 3:19
13. The Time with Prince The Latest Fashion 4:02
14. Mavis Staples Melody Cool 3:39
15. Prince Still Would Stand All Time 5:23
16. Prince Graffiti Bridge 3:51
17. Prince New Power Generation (Pt. II) 2:57

<アルバム選曲過程>
25 September 1988, configuration
Side 1
1. Big Tall Wall
2. Stimulation
3. Graffiti Bridge - alternate version
4. Bloody Mouth
5. The Question Of U
Side 2
1. Beatown
2. Pink Cashmere - alternate version
3. Melody Cool - alternate version
4. The Grand Progression
5. God Is Alive

Late 1989 configuration
1. Can't Stop This Feeling I Got - alternate version
2. New Power Generation - alternate version
3. Release It - The Time
4. Elephants & Flowers - alternate version
5. The Question Of U
6. We Can Funk - alternate version
7. Joy In Repetition - alternate version
8. Love Machine - The Time - alternate version
9. Tick, Tick, Bang - alternate version
10. Shake! - The Time - alternate version
11. Melody Cool - alternate version
12. The Grand Progression
13. Graffiti Bridge - alternate version
14. New Power Generation (Reprise) - alternate version

1990 configuration
Side 1
1. Can't Stop This Feeling I Got - alternate version
2. New Power Generation
3. Release It - The Time
4. The Question Of U
Side 2
1. Elephants & Flowers
2. Round And Round - Tevin Campbell - alternate version
3. We Can Funk - George Clinton and Prince
4. Joy In Repetition
Side 3
1. Love Machine - The Time
2. Tick, Tick, Bang
3. Shake! - The Time
4. Thieves In The Temple
Side 4
1. Melody Cool - Mavis Staples - alternate version
2. The Latest Fashion - The Time with Prince
3. Still Would Stand All Time
4. Graffiti Bridge
5. New Power Generation Pt.II

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