口内炎

唇の先に出来て、痛え。ちょうど今はピークを過ぎ、治りかけてる過程と思う。毎日のように痛みが増してきたけれど、ピークは越えてるはず。きっとそのはず。
湿らせるのと、乾燥させるのと、どっちがいいのやら。とりあえず起きてるときは、無意識に舐めちゃってる。

ということで、ふと聴きたくなった一枚。じっくり感想も考えてみた。

<今のBGM>"Enigmata"John Zorn(2011)
本アルバムはとっつきの悪い、スルメな音楽。12曲で44分ほどの作品だ。
TZADIKより11年7月に発表された。録音は10年3月と11年3月に実施。
ギターとベースのデュオだが、一本調子の音色と構造の読みづらさ、不協和音を狙い親しみやすさをシャットアウトした。クリムゾン好きのプログレ文脈なら、すんなり聴けるかも。
TAZIKのキャッチフレーズは「ビーフハート meets シェーンベルク」

本盤は2010年秋から現在まで毎月のようにリリースが続く、膨大なソロ作品の一部だ。
ジョン・ゾーンはMASADAを筆頭にしたライブでのダイナミズムから、明確に構成した作曲家へと立ち位置の主軸を数年かけてジワッとずらしてる。アルバム・タイトルは"Enigma"の複数形で、語義では"謎"。だがジョン・ゾーンの事だから、ナチスのローター式暗号機から取ったか。

ぱっと聴いて、どう味わうか戸惑う一枚。
音色こそ激しく歪ませてもディレイやリバーブの飛び道具は希薄で、音程の流れは明確なマーク・リボーのエレキ・ギター。高音域も積極的に当てていく、芯の野太いトレバー・ダンのエレキ・ベース。
テクニシャンの二人が演奏する本盤は、かなり楽譜要素が高い。ひょっとしたら即興じゃ無いかも。

ジョン・ゾーンらしく、断片を脈絡無しに積み上げる。だが他作品ほどスピード感が無い。疾走をあえて抑えたか。フレーズの繰り返しも多く、この二人のテクニックならテンポはもっと上がるはず。意識的なミドル・テンポの配分と思う。
次々に提示される短いパターンや旋律を、希薄なストーリー性で流してく楽曲群のスピードは、むしろ遅めだ。ジョン・ゾーンにしては、異様なほどに。

スタート&ストップも揃う。全休符のタイミングが二人とも零れないあたり、いかにも譜面っぽい。面白いのは急停止にも、スポーティな爽快さを感じさせぬところ。ダイナミズムを狙うなら、盛り上がりやフレーズの急峻な切り落としで休符、のアレンジもある。むしろゾーンの他作品は、強烈なブレーキっぷりも味だった。
だが本作は違う。のっそりと恐竜が動いては休むがごとく、じわっとフレーズが止まり、すぐに二人が揃って動き出す。

二人はユニゾンを注意深く避けた。時たま譜割やフレーズの前後で合わす程度。互いにカウンターを当てて産む和音は、強靭ながら不安定な響きを提示する。
ちなみに小節線も良くわからない。ミニマルな場面でも拍子は読みづらく、変拍子びしばし?だが縦の線に無秩序さは全くない。楽曲により、うっすらとカントリーっぽい音使いも。音色の歪みっぷりはさておいて

このパターンがアルバム全編を貫いた。いくぶんスピーディで、コードをかきむしる(7)から、一転して唯一ブライトな音色でスリリングに迫る(8)。対比的なギターが味わえる、この場面がお薦め
特に(8)は歪まぬ音色でミニマルな展開をきっちり持続した。無秩序とは逆ベクトル。本盤が作曲性を、わかりやすく象徴する重要な一曲だ。

とはいえ基本的にはどの曲もぱっと聴いただけでは、各曲の切れ目すら判然としない。12曲のトラック切りも必然性から、まず想像する羽目になる。数学的な複雑さをあえて狙い、コンセプト先行で聴きやすさを切り捨てる。いわば異物さを前面に出す、いかにもジョン・ゾーンらしい一枚。

相反する魅力を備えた盤だ。
彼のキャリアを代表する楽曲、とは言わない。だが聴き捨てるには惜しい一枚。もっとも繰り返し聴くことを薦めにくい。でも聴きこむと、強烈な味わいが滲みでる気もする。
ということで「とっつきの悪い、スルメな音楽」とまとめる。

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