ESP Ohio"Starting Point Of The Royal Cyclopean" (2016)

 ミドル・テンポで華やかな甘いメロディを強調したロックが並ぶ。唐突に結成のサブ・ユニット。

Vocals Robert Pollard
Bass Guitar Mark Shue
Drums And Percussion Travis Harrison
Guitar,key Doug Gillard
Trumpet Dennis Cronin (tracks: 4, 9)

 ギラードとは過去、サブ・ユニットでLifeguardsがあり。これはボブとギラードの完全デュオだった。この名義を使わないのは別メンバーが加わったことを理由に、あえて別の名義を使いたかったのだろう。
 本質的な意味でのバンド活動は無頓着なのに、名義はやたら稼働させたがるボブの好みが出たと思われる。

 二度目の再結成したGbVには昔なじみのダグ・ギラードが参加した。その一方で、ギラードと改めて組んだバンドがこのESP Ohio。
 作曲はすべてボブ、バック・トラックをNYでギラードが中心に録音して、ボーカルをオハイオでボブがかぶせるおなじみの分業録音スタイルを取った。

 他のメンバーは、ベースのマーク・シューが現GbVのメンバー。ドラムはLifeguardsの2nd"Waving At The Astronauts"(2011)でエンジニアを務めたトラヴィス・ハリソンだ。
 現GbVの派生バンドっぽい。なお本盤でもハリソンはNY側の録音を担当してる。

 ちなみにボブの中でバンド名義によってある程度、音楽性も変えてる節が伺える。明確なコンセプトでなくセンスに近いが。
 本バンドのこだわりはポップさとミドル・テンポ。アップテンポで疾走や、ローファイなやっつけの要素は低い。一曲がそれなりに完成されている。

 ソロでもGbV本体でも投げっぱなしの作曲にこだわったボブだが、本盤では珍しく完成度高い。その一方でライブでグイグイ押す、もしくはスタジアムで映えそうなスケール大きい勢いは無い。
 少しこじんまり。しかし密室性は低い。そんな方向性がESP Ohioだ。過去数年の作品で屈指のポップな仕上がりを見せた。
 ボブは時にハーモニーやダビングを歌声で施し、丁寧に楽曲を紡いだ。

 全16曲入りで43分弱。数分のきちんとしたロックが並ぶ。一分足らずの小品もあるけれど。変な言い方だが、やればできるじゃん。このところ鈍ったかのようなメロディ・メイカーぶりが、一気に本盤では花開いた。

 この年はボブのソロ"Of Course You Are"を3月、GbV本体は"Please Be Honest"を4月に発売した。
 その後4月にGbVでツアーに出てしまい、断続的ながら年内いっぱい費やす。

 本盤に先立ち約一か月前にシングル2枚を10月に発表、11月に本盤。そのあと翌年4月に"August By Cake"をリリースと、GbVの活動が続いてる。
 そのため今のところESP Ohioの続編は無い。地元でギグくらいやってるかな。一過性の思い付きで終わらせるには惜しい出来なため、じわじわと続いて欲しいバンドだ。

 なおシングル2枚はアルバム未発表曲あり。1枚が(15)で、B面の"She Wrote Well (To Tell)","Whoa Nelly"はシングルのみで聴ける。
 もう一枚のシングル(9)でB面"Hit Me With Tonic","A Mallard Pushing"の両方もアルバム未収録曲。
 シングルは両方とも500枚限定プレスのコレクターズ・アイテムながら、MP3で音源は容易に聴ける。
  

<全曲感想>
1. A Much Needed Shot In The Arm 2:25

 緩やかなギターのストロークから、さらに寛いだ譜割で穏やかに浮かんでいくメロディ。ボブ流の作曲が冴えた。だんだんサビに向けて高まって行き、ふわっと着地する。これをGbVやソロでなく、新バンドに提供するあたり何とも豪華だ。
 ギターは数本ダビングされ、時に高らかに吼えるなどアレンジにも微妙に気を使った。
 最後は口を絞るように、ひゅおんと腰砕けに終わるセンスはギラード側の選択かな。

2. The Great One 1:53

 ギターがシンセのように野太く鳴り、曲を引き立てた。ボブのメロディはキャッチーだが、アイディア一発で終わらせ一曲に紡ぐ。他の曲と合わせたらもっと練った作品となるだろうに、こういうメロディの無駄遣いがボブらしい。
 このところ、こういう甘酸っぱい曲ってあまり聴かなかった印象だ。

3. Tom Tom Small And Wonderful 2:54

 じわじわとメロディが近づいてくる。シンプルなハーモニーが独特の和音感を作り、ボブのメロウなセンスを補強した。これも小技を使わずキャッチーな仕上がり。だがハーモニーも少し音程をずらして一声入れてみたり、いろいろギラード側も工夫してる。
 アップテンポで駆けたら爽やかなのに、あくまでもテンポはグッとミドルに絞った。

4. Miss Hospital '93 2:26

 サビの華やかな盛り上がりが見事な名曲。これもシングル的なキャッチーさと可愛らしさを持つ。そのわりにあっさりアルバムの中に沈めてしまった。
 淡々としたテンポがもどかしい。サビでの付点なパターンもソフトに弾ませるし、トランペットを数本ダビングしたアレンジも効果的。
 あまりヌケないペットがまるでメロトロンみたいな古めかしさも演出した。

5. Birdman Of Cloth 3:08

 前曲がカットアウトで終わり、そのままこの曲へ。組曲みたいな構成を知らずに聴いてたら、一つの曲かと思わせる。
 ここでもギラードのオルガン音色な鍵盤がさりげなくオブリを入れてくる。幾本もギターを重ねて、キラキラとサウンドを輝かせた。 
 バンド的なダイナミズムに加え、丁寧な音作りが光る一曲。 

6. Intercourse Fashion 3:32

 いったん加速しかけてじわっと減速。焦らすようなイントロが面白い。あえてギターを薄く広げて、からっと隙間の多いアレンジに仕上げた。
 ダブル・トラックのボーカルでうっすら不安定感を演出しつつ、メロディはきっちりボブ節。
 若干だけ投げっぱなし寄りの楽曲を、ギラードがブロックごとに繰り返させてきちんと曲に仕上げた感じ。
 爽やかを狙いつつ、すこし野暮ったく感じるのはテンポが遅めなせいか。どうもESP Ohioはミドル・テンポで粘ってる。

7. You The Earthman 3:05

 これも楽曲の構成がさすが。ともすれば平歌のアイディア一発で終わりそうな展開だが、執拗にメロディを繰り返す一方で、ギターや潰した声の掛け合いでじっくり聴かせる曲に仕上げた。
 1分足らずで終わってしまうボブの潔さも魅力であり持ち味だが、こういうふうにしつこく構築狙いも意外と楽しい。冷静に聴くと、間が持たないのだが。ライブだといいかもしれないな。

8. Flowers And Magazines 1:24

 弾き語りの投げっぱなしな楽曲を無理やりバンドサウンドに仕上げた感じ。サビではいきなり高音のダブル・トラックを挟んだりと、なんとも唐突で好き放題な展開の曲。
 ESP Ohioはボブの遊び心とギラードの構成センスがいい感じでハマってる。

9. Royal Cyclopean 2:33

 同年4月からのGbVのツアーでも演奏されたシングル曲。相変わらずボブは楽曲を発表したユニットの違いを気にせず、GbVで色んな曲を演奏してる。
 楽曲もカッコいい。威勢のいいドラムの数打をイントロに、ひしゃげたトランペット数本のファンファーレ。しずしずと、しかし力強くメロディが道を進み、ギターが炸裂してロックに雪崩れた。
 構造はメロディの繰り返しであり、さほど変化はない。しかしアレンジ力とメロディの魅力で一曲を聴かせてしまう。

10. Weakened By A Logical Mind 2:24

 しっかりと拍頭を叩くギターのリフ。それをなぞるように歌声が寄り添った。いや、歌声にギター・リフをアレンジで合わせたのか。途中から多重録音でハモりを入れ、ボブも歌のアレンジに小技を足した。
 彼らしいセンチメンタルさが滴る良いメロディだ。本当にこの盤はキャッチーな往年のメロディがつるべ打ち。

11. Girls House 2:03

 これも歌メロに沿った形のギター・リフ。ユニゾンでしっかり歌を支える。こういうアレンジはギラードのセンスか。ひとしきり歌った後で、ふわっとフレーズをカウンターで沸せたアイディアも切なくて良い。ただ、たまにやるからいいのであって、そのあとに連発は興ざめ気味で苦笑した。でも、キュートだよ。

12. This Violent Side 1:33

 リズムボックスかな。詰まった規則正しいビートにギターが白玉と四分音符の拍頭の2パターンで飾る。歌声はバック・トラックを気にせぬように歌う。このテクニックも面白い。
 とはいえきっちり拍を刻むバック・トラックゆえに歌えるのだが。
 ここでも追いかける形でボブは歌を重ねた。けっして投げっぱなしではない。

13. The Ticket Who Rallied 2:33
 これも4月当時のツアーで数回、演奏の記録あり。曲調は前曲と似てるが、歌メロになるとグズグズ崩れ、リフで復活と独特な譜割の楽曲だ。つまり頻繁にテンポ・チェンジが行われる。けっこう難しい曲と思うが、これをライブで演奏に選ぶのか。この盤では他にライブ映えしそうな曲が、他にもあるのに。凝った構成だからこそ、かも。
 和音とメロディがずれてるようなセンスのメロディも、サイケ風味を演出した。

14. Sleeping Through The Noise 3:08

 続けてこれもサイケ寄り。シンセがストリングス風に広がり、バンドの刻みは控えめで不安定に広がる。夢見心地でタイトルのフレーズをメロディをずらしながらボブは歌う。
 それこそ1分くらいであっさり仕上げず、3分もねっちり追求した。
 しかしこの曲の魅力はサビ後。歌詞が無いまま、一節歌われる数音のメロディ。朗々と切なく胸に沁みる。

 これこそメロディの無駄遣い。こういうさりげなくも印象深い旋律が、曲にすっと当てはめて終わってしまう。
 Aメロの混沌さに癖はあるけれど、もう少し歌い継がれて欲しい。

15. Lithuanian Bombshells 3:04

 このシングル曲も同年4月からのGbVツアーで幾度も演奏された。キャッチーなロックで90年代のGbVで歌われそう。意図的にボブは本バンドにみずみずしさを投入したか。
 もう少しテンポ上げて威勢よくしたら親しみやすさが増すのだけれど。なぜかここでは、少し抑えめのテンポを採用した。
 ハーモニーのセンス、ギターのダビングなど丁寧なアレンジなのに。しかし和音進行は、一ひねり入ってて奇妙な動きだ。

16. Grand Beach Finale 4:51

 アルバム最後は5分弱と大作。ボブにしては。(14)みたいにメロウな終わりを決める方法もあったはずだが、てらいのないロックを最後の曲に選んだ。
 軽いドラムが格を下げてるが、もっとずっしりした響きに差し替えるだけで、スタジアム級で映えるアレンジと思う。
 これは逆にアレンジを妙に軽く仕立てた。歪ませた音色がでかい音で轟くさまは、むしろエンディングでなくオープニングにもなる。
 これで終わりではない、次にも続くって宣言・・・だといいな。

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