Optical*8 「Optical*8」(1992)

 バブル時代に現れた、四方八方に尖り破裂したサウンド。

 ホッピー神山が立ち上げたインディー・レーベル、ゴッド・マウンテンの発売第一作目にしてオプティカル8のデビュー盤。
 Pinkつながりのスティーヴ衛藤以外は、アメリカ人のメンバーを起用した。ライブ活動がしづらくなったのか、やがて大友良英やフリクションのレックにメンバーは変わっていくのだが。

 無秩序な即興ながらジャズやプログレとは一線を引く、独特のアバンギャルドなスタイルを持つ。パンクを取り入れたミクスチャーな方向性。これが当時の第一線だった。
 鋭くもまとまりがなく、全方位に棘を立てつつ根底にグルーヴィさを持つ。

 下手くそだがアイディア一発の勢い任せではなく、全員が自分の出したい音を理解して体現していた。と、思ったのは後年のこと。リアルタイムでは理解できなかったが。
 そもそもライブ活動が、この手のサウンドは肝になる。現場を体感せず、音盤だけで追おうとするのに無理がある。

 イカ天ブームは90年。インディー・パンクのブームはさらに数年前。日本でもそれなりにシーンの裏付けがあった。だが青田刈りで焼け野原な一帯で、しぶとく伸び始めたのがこういうサウンドになる。
 テクニカルで音楽性豊かだが、表現上はノイジーで前衛的。この10年後にはしっかり花を咲かせる東京アンダーグラウンド・シーンの前段階、芽吹く様子が本盤からうかがえる。

 どうも抽象的な表現になる。現場を知らない、論理より直観的な感覚だ。ビジネスとは別次元、自力で好きな音楽をやる素地の体現が本盤と思う。

 メロディも構成も無視。しかし騒音一辺倒ではない。インプロで音楽になっている。
 NY録音の本盤は、ホッピーが敢えて売れ線を意識せず、伸び伸びと即興を現場の最前線と繰り広げた。

 マーク・リボーはラウンジ・リザーズで名を売っていたが、膨大なリリースを始めるのはこのあと。Sebastian Steinbergがソウル・コフィングに参加も、本盤の数年後。
 パンク世代で活躍し、ラウンジ・リザーズに参加したDouglas E. Bowneが最もベテランか。
 メンバー全員が駆けだしではなかった。キャリアを積み、そのうえで過激な前衛を目指した。それが、本盤になる。

 いわゆるソロ回しではない。てんでに力任せの疾走でもない。抽象的でメリハリを敢えてつけない。しかし骨太なファンクさと混沌はきっちり両立させた。
 危なっかしくも頼もしい、細い針金を絡み合わせた強靭なアンサンブルがここにある。

 コラージュ感覚はホッピーの好みか。全編生演奏ながら、どこか電気仕掛けなミニマルさもあり。
 いわゆるフリーなセッションの一発録りと思うが、切り貼りした唐突さも所々に漂う。
 この盤はまだ咀嚼しきれていない。もう25年も前なのに。古めかしさをまとわない、ざらついた刺激をいまだに音楽は滲ませている。

Track listing:
1 Ambidextrousness 13:07
2 Undercover Man 9:59
3 Jungle Protects The Past 15:12
4 The Love That Dare Not Speak Its Name 15:58

Personnel:
Bass - Sebastian Steinberg
Drums - Douglas E. Bowne
Guitar - Marc Ribot
Percussion - E.J. Rodriguez
Performer [Metals] - スティーヴ衛藤
Synth, Sampler [Sample], Performer [Gram-pot] - ホッピー神山
Producer - E.T.《Universe》

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