Funkadelic 「Uncle Jam Wants You」(1979)

 ファンカ屈指のコンセプト・アルバム。アクの強さで時代の接点から外れるきっかけになった。

 大傑作"One Nation Under a Groove"(1978)の翌年に発売の本盤は、P-Funkの歴史上で「P-Funk失速の始まり」と位置付けられる。

 単にWikiのP-Funkのリリース・リストを見てると、そうでもない。毎年のようにパーラもファンカもレコードは出し続けた。
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_P-Funk_projects
 実際にファンカ名義のリリースが停まったのは"The Electric Spanking of War Babies"(1981)。未発表曲や共同名義を除いた、スタジオ盤の新譜って定義では"First Ya Gotta Shake the Gate"(2014)まで待つことになる。

 本盤は前作に続きゴールド・アルバムの売り上げを叩き出した。アルバムは全米2位という。
 チャート一位のシングル"(Not Just) Knee Deep"も収録あり。商業的には成功と言っていい。
 本盤から失速ではなく、本盤以降に失速と言うのが正しい。

 けれども本盤が時代と接点を持ちづらくなったきっかけなのは、間違いない。それは本盤のコンセプトにあるのではないか。
 奇妙なほど右傾化を前面に出した。
 もちろんクリントンのユーモアだろう。「ファンクで世界を統一する」とぶち上げた前作の踏襲でもあったろう。しかしこのアクの強さが、リーダー的な志向を示したクリントンに、軽薄短小傾向に向かう時世が厭って失速に至ったと思う。

 タイトルは米軍勧誘スローガンのもじり。ジャケットはブラック・パンサーの写真をパロった。クリントンはバランス感覚だったのかもしれない。だが正規軍も黒人思想リーダーも茶化すスタイルは全方位に喧嘩売ってるよう見えてしまう。
 いわばアメリカ版「自衛隊に入ろう」に通じる。面白がりはする。だが熱狂的な賛同は表立ってしづらい。そんな風潮でイケイケに本盤をぶち上げたP-Funkは、逆に求心力を失ったのではないか。
 
 おりしも世間の流行りはディスコの画一ビート。なおかつこのあとに打ち込みのジャスト・ビートばやりが控えていた。
 すなわち大編成で粘っこくファンクネスを追求するスタイルは、古めかしくなっていた。当時のステージで動員数は知らない。だが経営的にも厳しくなり、シュリンクさせるべくクリントンは模索した。

 具体的にはパーラとファンカの融合。二つの大所帯を稼働させず一つにまとめる。その方向性の一つが本盤となる。のちにクリントンはソロ名義やパーラ・ファンカの連名バンドなど模索を続けた。
 大編成ファンクには厳しいご時世だった。

 本盤はサウンドとして、バラエティさを狙った。15分越えの(2)と10分越えの(3)の大作2曲を核にして。
 あからさまにディスコを意識した(1)は、むしろ野暮ったさが滲む。ファンクネスを極限まで薄れさせてキャッチーさを狙いながら、なんというか吹っ切れなさが残った。売らんかなに徹底しきれないクリントンの嗜好か。P-Funkとしても軽みが強まり、中途半端になった。だが、悪くはない。今でも聴ける。

 (2)もディスコ的な硬いビートが全編を覆う。けれどもコーラスの和音感が持つ不穏さはP-Funkスタイル。ジャンルと個性を上手いこと混ぜた。ダンス・ビートの画一さを持ちながら、大編成の要素はコーラスのみにとどめた。

 クレジットだけ見ると、メンバーは相変わらず多い。だがサウンドはむしろシンプル。 ホーン隊を使わず、シンセが彩りを出すアレンジでこじんまりした響きのファンカ・スタイルだ。
 トレードマークであるエレキギターのソロも、7分過ぎからたっぷり投入する。

 B面にあたる(3)以降は好き放題。セールスはA面で稼ぎ、B面はオマケと言うか趣味の世界を全開にした。まさに「自衛隊に行こう」的な勧誘を続ける(3)でたっぷり聴き手を煽り立てた。
 コーラスのリフが妙にポップで親しみやすいのが肝。元ネタの"Uncle Sam wants you"にCMメロディがあるかは知らない。だが白っぽいバック・リフに、ソウルフルなメロディをぶつけるアレンジが刺激的な面白さあり。
 語り中心のボーカル・スタイルは、のちのヒップホップに通じる猥雑さもある。

 カッチリ決まったギター・インストの(4)は軍隊行進のパロディだろうか。数本のエレキギターが重なり、ちょっとつんのめるリズムを混ぜ合わせたイントロが9拍子、かな。
 ギター・ソロの箇所は4拍子。二つの違うパターンでメカニカルだが引っかかるノリを作った。

 (3)はディナーショー・スタイルに歌い上げる。楽曲としてはP-Funkらしさは無い。富裕層をコケにしたジョークの曲だろう。軍隊の悲惨さと、それに構わず贅沢かつ優美に暮らす連中への皮肉か。

 そして(4)。国家"星条旗(The Star-Spangled Banner)"をもじったタイトルで、これも行進曲的にスネアのマーチング・ドラムをリズムの軸に据えた。
 数分の短い曲で、戦場へ向かう不穏さを表現か。歌詞が無く、ラララで歌うだけ。進め、進め、と煽られる。

 全体的に、どうにも中途半端。穿った見方かもしれないが、アルバム全体に嫌戦を敢えてポジティブな勧誘風景に混ぜることで表現してるように思えてならない。
 このメッセージを意識しながら聴くと、本盤のそこかしこに引っかかる興味深さが出る。
 
 しかし単純に音楽として楽しむには、バラエティに富んだところが散漫さに見えてしまう。
 クリントンはメッセージ性を本盤に込め、決して単純に楽しませるつもりはなかったのだろう。そのへんが、後追いで時代性を無視して聴く身としてつらい。

 だが敢えて深読みしながら本盤を聴くと、表面的なアレンジや構成の奥に色々と空想を広げさせるポイントがあって刺激的な盤なのも確か。

Track listing:
1. Freak Of The Week 5:31
2. (Not Just) Knee Deep 15:19
3. Uncle Jam 10:24
4. Field Maneuvers 2:23
5. Holly Wants To Go To California 4:23
6. Foot Soldiers (Star Spangled Funky) 3:31

Personnel:
Producer - Dr. Funkenstein

Vocals - Dawn Silva, Garry Shider, George Clinton, Greg Thomas, Jeanette McGruder, Larry "Sir Nose" Heckstall, Michael "Clip" Payne, Philippe Wynne, Ray "Stringray" Davis, Ron "Prophet" Ford, Sheila Horn
Backing Vocals - Greg Boyer, James Wesley, Gerome Rogers, Jessica Cleaves, Lige Curry, Linda Brown, Mallia Franklin
Bass - Billy Nelson, Cordell "Boogie" Mosson, Jeff Bunn, Rodney "Skeet" Curtis, William Collins
Drums - Dennis Chambers, Larry Fratangelo, Tiki Fulwood, Tyrone "Speedfeet" Lampkin, William Collins
Guitar - Dewayne McKnight, Eddie "Maggot Brain" Hazel, Gary "DoWop" Shider, Glenn Goins, Michael "Kidd Funkadelic" Hampton, William Collins
Keyboards - Bernie (U.S.S. Woo!) Worrell, Gary Hudgins, J.S. Theracon, Gerome Rogers, Juni Morrison

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