TZ 8007:Annie Gosfield "Lost Signals and Drifting Satellites"(2004)

 ひたひたと生真面目な、弦楽器が主体の現代音楽。

 TZADIK3作目の作品。彼女はNYを拠点の即興寄りの現代音楽家だそう。リーダー作はこれまで4枚をすべてTZADIKから発表。委嘱作品もいろいろあり、現場では評価されている作曲家のようだ。

 (1)は弦楽四重奏で重厚なメロディが広がる。現代音楽的な突飛にきらめく場面もあるが、全体的にはものすごくゆっくりと動くメロディを軸にした静かな作品だ。組曲形式のように、短いスパンで場面が一区切りつき、次の風景へ移っていくかのよう。
 スピードを抑え、じっくりじわじわと音楽が迫ってくる。緊張感を緩めず、真綿で締め付けるように。
 たぶん楽曲構造はしっかり組まれており、ときどき奏法に即興要素を混ぜているのでは。
 淡々と音楽は進んでいく。ストイックに、美しさを意識しながら。最後は前のめりに音列が刻まれた。

 (2)は電子音と弦楽器の協奏曲。電子音は明確なメロディでなく風切り音に音程があるような感じ。バイオリンとチェロが軋みながら静かに旋律を紡ぐ。
 前衛の無秩序には行かない。この緊張と緩やかな進展こそが、彼女の特徴か。寛ぎとは違うベクトルだが、耳ざわりではない。硬質な現代音楽の一方で、あまり実験性に走らないぶん聴きやすさが残る。

 前半は電子楽器という異物を挿入しながら、弦楽器を殺さない。ひとつながりの世界でなく、旋律の断片を並べていく。
 途中から電子音の自己主張が高まり、ノイズ的な要素が増えて楽しめた。

 (3)はプリペアード・ピアノ曲。Annie Gosfield自身が弾いている。金属質でざらついた響きの電子音みたいな音色で奏でられる曲は、ミニマルな電子音楽のような面白さあり。
 淡々とストイックなメロディのセンスは他の楽曲と変わらないが、ここではいくぶんテンポ感が早く、次々と場面展開が行われる。
 内部奏法もあり、かな。パーカッシブな響きが心地よいプリペアード・ピアノだ。退廃的な美しさが見事に描かれた。

 最終曲(4)はパーカッションと弦楽器の協奏曲。鉄板をロールするようなパーカッシブな響きと、軋む弦楽器が絡む。ここでも弦のメロディは大人しい。音程ある響きを断続的に並べた。
 一方でパーカッションはせわしなく空気を震わせ続ける。これも組曲形式で短いシーンが繋がって一曲を作る。緊張感が漂い、ストイックさがひときわ強い作品だ。

Track listing:
1 Lightheaded And Heavyhearted 19:56
2 Lost Signals And Drifting Satellites 8:20
3 Mentryville 4:58
4 The Harmony Of The Body-Machine 13:14

Annie Gosfield: Composer, Prepared Piano
Joan Jeanrenaud: Cello
George Kentros: Violin

Flux String Quartet
Tom Chiu: Violin
Dave Eggar: Cello
Conrad Harris: Violin
Max Mandel: Viola

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