Youssou N'Dour 「Egypt」(2004)

 北アフリカ音楽を見事に血肉化した、美しい作品

 ユッスー・ンドゥールの20枚目くらいのアルバム?アフリカのミュージシャンは現地でのリリースもあるだろうし、今一つディスコグラフィーが分からない。
 凄まじい情報量のディスコグラフィーなこのページでは、本盤に93番目の番号が振られてる。
http://www.asahi-net.or.jp/~xx3n-di/071-yndour/yn-discography.html

 彼は過去からトーキング・ドラムを打ち鳴らすルーツ音楽を洗練させつつ、西洋音楽もきれいに導入して素晴らしい音楽を作り続けてきた。
 本盤でもエジプト音楽を導入、で新マーケットの拡大狙いと思ったら。もう少し地に足の着いたプロジェクトだったらしい。この記事でそれが触れられている。
http://www.jazztokyo.com/guest/akiyama-v1.html
 キーワードはセネガルのイスラム教。

独自の発展を遂げたセネガル・イスラム教の聖人たちへのオマージュである。
セネガル2大宗派の開祖、ムーリッドのAmadou BambaとティジャンのIbrahim Niasse、そして近年ダカール周辺で勢力を増すライェンの開祖Limamou Layeら、セネガル建国の歴史における巨人たちでもある彼らを歌っている。


 詳しくないのでこれ以上は触れない。だがユッスーの自国で発展したイスラム教に着目の音楽なようだ。本盤はワールド・ミュージックに強いノンサッチから"Nothing's In Vain (Coono Du Reer)"(2002)続くアルバムであり、レーベル的に違和感のないアプローチでもある。
 だが録音から数年温めたという記述も見かけたことあり。イスラム教とキリスト教マーケットとの緊張を踏まえ、発売のチャンスを狙ったのかもしれない。
 

 カイロで現地ミュージシャンと録音を行った。作曲はすべてユッスー。サウンドはどっぷりアラブ音楽なのに、きっちりとハマってるところが凄い。ちょっと鼻にかかった伸びやかな歌声が、滑らかにメロディを紡ぐ。

 アレンジや共同プロデュースを務めたFathy Salamaは現地のミュージシャンで、カイロのオリエンタル・ジャズの始祖Sharkiatの鍵盤奏者だそう。
 サウンドはダビングを重ねて作りこむより、セッションっぽい空気感で作られた。(1)こそ多重録音ボーカルを筆頭に整ってはいるが。

 曲によってさまざまなアレンジを採用し、北アフリカの音楽を貪欲に吸収した。あえて西洋要素を振りかける愚は侵さない。基本はアラブ音楽。そこへトーキング・ドラム的なバタバタと情熱的に畳みかけるパーカッションが重なった。

 現地を尊重しすぎず異文化の魅力に甘えず、ぐいっと自分に引き寄せた。それくらいセネガルの視点ではイスラムといわゆるアフリカ音楽と融合がなされているのかな。

 電子楽器を使わず、生演奏にこだわった。密やかなムードのストリングスと、甲高く軋むフルート、そしてワサワサ漂うパーカッション。
 ユッスーの歌声は常に個性的に響いてる。

 毀誉褒貶あるアルバムで、グラミー賞を取ったわりに「失敗作」の評もネットで見かけた。ぼくは北アフリカ音楽に詳しくなく、この音楽がどのていど崩され尊重されてるかは分からない。
 だがアラビックな和音感はそのままに、きっちりとユッスーの音楽になってるとこが良いとぼくは思う。借りてきた猫でも、簒奪者でもない。
 (7)や(8)のようにアフリカ音楽の要素を強めて、アラブ音楽に寄り掛かってない曲もあり。だが全体には心の広い愛情を感じる。単なる好奇心やそろばん勘定ではない、と思う。

 たまたま西洋音楽に親しんでここまで生きて来たが、アフリカもアラブもアジアもすべては異文化だ。ぼくは節操なく聴きたい。耳馴染み良いかどうか、だけで判断も性急だ。聴き進めていけば耳が馴染み、良さを自分の中で感じてくる。

Track listing:
1 Allah 6:10
2 Shukran Bamba 5:30
3 Mahdiyu Laye 4:58
4 Tijaniyya 5:45
5 Baay Niasse 5:18
6 Bamba The Poet 3:51
7 Cheikh Ibra Fall 3:35
8 Touba - Daru Salaam 5:50

Personnel:
Youssou N'Dour - vocals, producer, English translations, audio production

Fathy Salama - arranger, conductor, producer, audio production

Yaser Mal Allah - percussion
Beugue Fallou Ensemble - percussion, backing vocals
Philippe Brun - mixing
Mostafa Abd El Azeez - arghoul
Ahmed El Gazar - sagat
Mamdouh el Gebaly - oud
Nidhat Adb El Sameeh - violin
Bisheer Ewees - violin
Mbaye Dieye Faye - percussion
Kabou Gueye - backing vocals
Kabou Gueye - backing vocals
Mama Gueye - backing vocals
Souka Gueye - backing vocals
Hasaneen Hindy - mizmar
Yuri Kablotsky - violin
Babou Laye - kora
Ramadan Mansoor - tabla
Ayman Sedky - doholla
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