Thelonious Monk 「Plays Duke Ellington」(1956)

 何をやっても滲む節回しこそ個性。それがモンク。

 リバーサイドにプレスティッジから移籍したセロニアス・モンクによる初リーダー作。自作中心の活動だったモンクへレーベルの強い要請でエリントンのカバー集をコンセプトに作られた。

 この時期、エリントンは低迷時期だったらしい。だが耳馴染みが良いということで、なりふり構わずレーベル側が売りにかかったか。あまりヒリヒリする前衛の緊張でなく、少し後ろ向きの企画。
 
 ベースのオスカー・ペティフォードとは本盤が初共演。こののち、数枚のセッションをモンクと重ねる。
 逆にドラムのケニー・クラークは古なじみ。ビバップ時代から共演を重ねてきた。ディスコグラフィーによれば、本作で2年ぶりの共演。しかし本盤のあとに吹き込んだ記録はない。直後の盤では主にアート・ブレイキーが叩いてる。
 レーベル移籍で心機一転なトリオを作ろうとして、モンクが模索中の一枚か。

 曲はエリントンの有名曲がずらり。ただ、もごもごと唸るようなモンク節がフレーズのそこかしこに出て、一筋縄でいかないカバー集になっている。
 訥々とスイングするピアノをベースとドラムが着実に支えた。新奇性は無いが、モンクの個性がしっかり滲む。穏やかでちょっと癖のあるジャズに仕上がった。

 洗練や爽快さを独特の煙った風味に変えている。ソロはとってもあくまで伴奏に徹する二人の上で、のびのびとピアノを弾いた。たとえば(4)。イントロのフレーズはどっぷりモンクのスタイル。
 そもそもエリントンの曲は、独特の色合いを最初から兼ね備えてる。そこへモンク流の和音感を投入して、鈍く輝く躊躇い気味なグルーヴを作った。

 (8)みたいに強烈なリズムと構成を持つ曲は、モンクのフレーズ感覚が命。簡素なトリオ編成で、ドラムが頑張ってオリジナルのジャングルな荒々しさを演出する。
 そこへ訥々と微妙に音符の配置をずらす、モンク式なフレーズが載った。こういう個性のぶつかり合いみたいな場面だと、奇妙な浮遊感が漂う。

 アルバム全体で派手じゃない。しかし、独特な芳香のアルバムだ。

 ぼくは(6)での透き通るノリに惹かれた。
 音を詰め込まず、隙間を多くしてそれぞれの楽器を生かす。決してモンクの唯我独尊ではない。強烈な主役の主張はしているが。
 いっぽうで三人のバランス感覚を上手く取った瞬間には、極上の涼やかな風景を描いた。

 本盤録音時点でモンクは39歳。このあと脂っこさをじわっと抜いて、傑作を次々と発表していく。
 リバーサイドには55年から61年まで6年間在籍した。ブルー・ノートが48~52年の4年、プレスティッジが続く2年。渡り歩いた時代の音源は、瑞々しいスリルに満ちていた。
 
 しかしリバーサイド時代のモンクは、どこかスッキリ落ち着いてる。本作のあと"Brilliant Corners"(1956),"Thelonious Himself"(1957)を筆頭に、矢継ぎ早に歴史的な名盤を残した。そのどれもに、達観した空気を感じる。

Track listing:
1 It Don't Mean A Thing (If It Ain't Got That Swing) 4:38
2 Sophisticated Lady 4:27
3 I Got It Bad And That Ain't Good 5:52
4 Black And Tan Fantasy 3:24
5 Mood Indigo 3:13
6 I Let A Song Go Out Of My Heart 5:40
7 Solitude 3:42
8 Caravan 5:55

Personnel:
Thelonious Monk - piano
Oscar Pettiford - bass
Kenny Clarke - drums

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