Acid Mothers Temple & The Melting Paraiso U.F.O. 「Troubadours From Another Heavenly World」(2000)

 ドローンとアンビエント、サイケな色合いを繊細かつ大胆に描いた。音数は多いが、本質は河端のソロに近い。

 アシッド・マザーズがキャリア初期にPSFからリリースのアルバム。河端や東とつるばみを組む恵美伸子と、小泉一の2ドラムでクレジット。しかし特段にリズムを強調のアレンジではない。
 トラックによってドラマーが違うということか。曲によっては2ドラムっぽい感じもあるけれど。

 また、津山にだけでなく河端もベースをダビングしてるのが特徴。ジャム・セッションを軸に、河端がバイオリンなど複数の楽器をかぶせて完成させた。
 音質はけっこうラフ。輪郭が歪み、あいまいなところがサイケな狙いか。

 (1)は穏やかなエレキギターの爪弾きを軸に、緩やかにリズムや女性ボーカルがかぶさる。明確な曲展開よりも、ただただ漂う混沌を描いた。
 実態はエレキギターのソロに、音を重ねて深みを出したともいえる。

 エレキギターは数本ダビングされ、複雑に溢れる。本盤に限ったことではないが、左右のパンなど定位も工夫して、浮遊感を演出するミックスを河端は細かく施している。
 ドリーミーさに向かいそうなのに、どこかほつれた危うさを持つサウンドだ。
  
 ギター・ソロの観点では13分過ぎから美しさが加速する。ストロークとフィードバック、二種類のギターが並行して鳴り、多層的な奥行きを作った。清涼と混沌、両極が一つの楽曲として溶けていく。ノイジーでなおかつ、きれいだ。
 シンバルが涼やかかつランダムに鳴り、ベースがそっと音を支える。
 アンサンブルはギターだけでも成立するだろう。しかしベースとシンバルが良いアクセントになり、音像を締めている。

 20分と30分越え、大作2曲に挟まれた(2)は6分弱とコンパクト。アコギに持続するオルガンが重なり、どっぷりエコーに包まれた女性ボーカルが乗るアレンジだ。
 曲調は英国のサイケ・トラッド。メロディが日本風味のためニューミュージック風にも聴こえる。
 とくにジャンルを意識はしてないはずだが、このメンバーならではの一曲だろう。粒だつシンセのアクセントが、AMT印を刻む。
 持続するオルガンがバグパイプもしくは中東かアジアのドローン風にも聴こえた。さらにバイオリンまで加わる。多彩な河端の音楽性がしっかり結実した。
 
 (3)のタイトルはピンク・フロイド"原子心母"のもじりか。風切り音のシンセをバックに、残響に包まれたフランス語の女性声が左右をせわしなく飛ぶ。
 静かにエレキギターが持続する音色で旋律を描いた。メロディアスなベースで世界を描き、ギターが抽象的に鳴る。

 コンボ編成ながら、雄大。この感じは確かにあの楽曲を連想するかも。この曲は2ドラムに聴こえる箇所があり。ダビングか、ぼくの勘違いか。

 楽曲の主役はエレキギター。時々、調を外すような音を混ぜて空気をかき混ぜ、不穏で存在感を出した。けっしてテンポは速くない。
 ドラムの着実なビートに、ベースが歌心あるフレーズを次々に投入。そしてシンセがぷくぷくっと弾けた。

 エレキギターの異物感が面白い。基本はジャムと思うが、速弾きに頼らずメロディを紡ぐさまが良い。
 10分過ぎあたり、ギターがじわじわと高まりを演出していき、シンセに役割を譲る。しばらくしてまた、ギターが強く前に出た。しかしシンセも負けていない。融通無碍な役割分担が心地よかった。

 再び現れる冒頭に似た女性ボーカルの世界。多重ボーカルでさりげなく加速した。
 (3)では極端に大きなメリハリは無い。しかし常に変化し続けている。漂う空気に身を任す30分。インプロ一辺倒でなく、楽曲として構成を意識しつつ即興性をしっかり残してる。 

Track listing:
1 Heroin Heroine's Heritage 20:58
2 She Is A Rainbow In Curved Air 5:45
3 Acid Heart Mother 32:27

Personnel:
河端一:electric guitars,violin,organ,synthesizer,bass
Cotton Casino:vocal,synthesizer
津山篤:bass,acoustic guitar,vocal
小泉一:drums
東洋之:synthesizer
恵美伸子:drums
Haco:vocals
Ginestet Audrey:cosmic voice

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