Prince 「Purple Rain deluxe : Disc 1」(2017)

 ついに出たパープル・レインのデラックス版。リマスターでぐっと太くなった。

 2015年にプリンスの立ち合いでリマスターが行われながらも、発売が没っていたパープル・レインのリマスター版。皮肉なことに彼の死後、未発表曲の蔵出し満載で聴くことができた。

 アルバム本編の感想は以前、ここでも書いた。だが本項ではそれをすべて横に置いて、改めて感想を書いてみたい。

 今回はあくまでリマスター。マルチからリミックスでなく、2chマスターを再度アナデジ変換ではなかろうか。
 以前の盤と比べ、数秒単位で異なる。だが誤差レベル。特段、別ミックスではなさそう。

 本盤のリマスターの特徴は、音質レベルを上げ強調する周波数帯も変えた。中低域がぐっと太く鳴り、場面ごとに解像度が上がった。
 LPってこんな音だったっけ。当時のLPと聴き比べたいが、もはや盤を手放しステレオ環境も無い。こういう聴き比べは良い環境で試したいから、どっちみち家では無理。

 今回に本盤を聴いて思う。プリンスの意向はあくまで「LP盤のリマスター」のみではないか。 

 Disc 2の未発表曲集やDisc 3の別ミックス曲群には、同様のリマスターが施されてない。音圧が本編と、Disc3の別ミックス集で全然違う。
 未発表曲集も音質はバラバラ。デモテープ風の荒い音質まである。こちらはあくまでオマケだ。

 もしプリンスの目が行き届いていたら、ブックレットでメンバーのコメント集は存在してなかったかも。つまり死後ゆえに実現した発売。・・・と考えたら複雑な気持ちになるし、全て仮定で根拠はない。やめよう。本盤を素直に楽しもう。
 いまさらifを積み重ねても詮無いことながら。本質的な意味でリマスターされた本編と他の曲群の差を感じたため、あえて書き記してみた。

 率直なところ、ぼくはアナログ時代からリアルタイムで本盤を繰り返し聴いてた。
「いまさらリマスターされてもな。まあ、音圧が上がるくらいだろ」と甘く考えて、あくまで未発表曲集が楽しみだった。

 ところが。さほど気負わず聴いた本編。たまらない。まったく隙が無い。
 次から次へとジェットコースターのように場面が変わるのと、記憶と違う微妙なバランスに惹かれて、最後まで改めて本盤へのめりこんだ。

 プリンスの未発表曲集はブートでいっぱい聴ける。クオリティは確かに高い。本盤に収録の楽曲も、色々と思いながら楽しめた。
 しかし本編と比較したら問題外。ぶっちぎりに本編が素晴らしい。

 プリンスは本盤へ臨むにあたり、膨大な曲を準備したという。録音も重ね、編集にも気を配った。ブートで聴けるが、もっと尺が長いオリジナルを切り刻み、集約して濃密な世界を描いた。
 いかに本編が練られ、高められた曲集かとよくわかった。

 本盤は素晴らしい。様々な二重構造を内包した。
 ファンクの粘っこさとロックのシンプルなダイナミズムを融合させた。
 前作"1999"の音世界を踏襲しつつ、もっと組曲風に詰め込んだ。場面展開も激しく、特にA面後半3曲の流れは一気呵成。

 さらにB面の2曲目以降はライブ演奏。これまで多重録音を売りにしたプリンスが、レボリューションズをフィーチャーした本盤で、さらにスタジオ録音とライブ収録の多面性を披露してる。
 もっと細かいことを言うと、プリンスの多重録音な"The Beautiful Ones"とその他、とう対比もある。

 その上で"When doves cry"という異物曲を放り込み、さらにアルバムにメリハリを付けた。
 LPだとよくわかる。一つの流れを作りこんだA面。ひっくり返してシンプルなファンクの"When doves cry"で一息つき、再びライブ演奏の世界へ一直線。

 本盤は聴き手の気をそらさない。それぞれの曲が持つ美しさを踏まえ、さらにアルバムに仕立てることで再び大きな流れを作った。

 本盤のリマスターについて。微妙に曲の時間が異なるのはインデックスの位置か。顕著なのが"Baby I'm A Star"。旧盤では頭の一拍に"I would die 4 U"が零れてた。流して聴いてると気づかないが、単独で聴くと腰砕け。
 これが今回、きれいに修正された。いちばんプリンスがムカついてた箇所だろうな。
 あとは最後の歓声の時間が微妙に切られてるような気がする。

 音質感の全体的な違いは3つ。中低域の強調、分離の良さ、残響のふくよかさ。
 旧盤と聴き比べたら明らかに違う。音の広がりも。でかい音で、なおかつヘッドフォンだと実感できる。

 もっとも曲の印象が変わったのは"When doves cry"。
 ベースが無いこの曲だが、バスドラの音程変えでベース・ラインを作ってるって今回、思った。ベースが無い分、パーカッションの音程違いがよくわかる。ベースとは違う音域でプリンスは低音ラインを作ってた。

 次が"Baby I'm A Star"。別ミックスでないはずだが、コーラスの乗り方や歌い方の解像度が異なり、生々しさが増した。これはぼくがLPも含めて旧盤の聴き込み不足かもしれない。繰り返し聴いて頭にこびりついてたはずの聴感が、本盤で違う印象を受けた。

 具体的にはハーモニーのクリアさ。これってダビングでプリンスも声を足してたのか。ガチガチに硬いバスドラの響きは、いかにも当時の流行り。シンセで空間を広げ、女性ハーモニーを軸にプリンスが歌いまくる。
 喉を絞ったりシャウトしたり。多彩な歌唱法を駆使してドライブさせるプリンスの歌の魅力が、このリマスターだととりわけ楽しめる。

 あとは"Beautiful ones"。モコッとした雰囲気が強調され、音像に奥行きが出た。
 とにかくどの曲も、残響感のふくよかさがすばらしい。

 リマスターで本盤の魅力は強調された。
 プリンスのアルバムの中で、本盤は聴きこみまくったと思い込んでた。
 とんでもない。まだまだ、本盤は奥が深い。リマスター一つで、ここまで印象が変わるのか。ぼくは音質厨じゃない。ローファイでも構わない。けれども本盤のリマスターにはやられた。かっこいいね。
   

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