Acid Mothers Temple & The Melting Paraiso U.F.O. 「Have You Seen The Other Side Of The Sky?」(2006)

 ヒッピー&ドローンを様々なアプローチでまとめた。盛りだくさんで硬軟の幅広い音像が楽しめる傑作。

 この時点の4人編成を軸に小埜涼子とNaoをゲストに迎えた。
 LPでは2枚組のボリューム。録音は05年5月から06年2月と幅広いクレジットあり。さまざまに録り溜めた音源を、じっくり編集や構成に凝って作ったアルバムのようだ。

 キャリアを既に重ねたAMTだが、本盤はどちらかというと初期に戻った雑駁な魅力を感じる。統一したコンセプトでも、奇抜なアイディアの一本勝負でもない。多彩な音楽性を無造作に混ぜて、むせ返る魅力をアルバムに封じ込めた。
 3分くらいの小品から30分越えの大作まで、幅広い。

 (1)はスペイシーなシンセのつぶやきが飛び交うイントロのあと、疾走するジャムに雪崩れていった。エレキギターが盛大にはじけるソロが続く。ここへフルートのアドリブも重なり二段構えの盛り上がりを見せた。

 ギターとフルート、どちらが主役と明確に立てない。とはいえギターはアンサンブルに溶けがちで、鋭く軋むフルートのほうが目立つかな。ドラムのブレイクを挟みながら、演奏は盛り上がっていく。
 津山はフルートを吹きながら唸る手法も披露した。いや、小埜涼子の吹くフルートもダビングされてるかも。テクニックを明瞭に出さない。
 
 演奏は力押し一辺倒ではない。むしろ中盤以降はバイオリンのかきむしりが前面に出て、静かめな音像。シンセと重なりサイケな混沌に向かった。

 (2)は英国トラッド風味の静かなアコギの弾き語り。シンセがのっかり、背後に弦の唸りも。しみじみ素朴な構成を基本に置きながら、混沌を噴き出すアシッド・マザーズ流の世界感を提示した。作曲クレジットは津山の単独名義。
 AMTは河端の幅広い音楽性と個性があってこそ成立するバンドだが、ここに津山の才能が重なることで、より混ざり合った複雑な世界観を産みだす。

 (3)もアコギのストロークによるフォーク調の楽曲だが、エレキギターもダビングして、よりサイケ色を強めた。津山の歌声に男たちのコーラスが載って盛り上がるあたりで、西海岸風のアメリカン・サイケへ風景は移った。テンポをあいまいに崩したところで、爪弾きのギターが重なる。
 6分ほどかけてめくるめくカラフルで多彩かつ暖かい混沌な世界を、じっくり描いた。 
 ドラムが加わらず、弦や木管楽器が入れ代わり立ち代わり。シンセの浮遊を共通項にアレンジはどんどん変わっていく。怒涛でなく穏やかで優しい雰囲気が漂う。

 そして9分過ぎ。唐突に女性の喘ぎ声が加わり、エロティックに風景が変わる。音楽はむしろ冷静。アコースティックな弦の爪弾きが数種類ダビングされ、フルートが淡々とソロを紡ぐ。シンセが空間を鋭く平べったく貫いた。
 高まるポルノティックな劣情と密やかかつ穏やかに吹くフルート。この対比がスリリングだ。
 このアルバムでのクライマックスの一つ。明確に音楽は落ちを付けず、ゆったりフェイドアウトする。
 
 一転してハードでパンキッシュな怒涛のセッションである(4)。1分半と短い尺でワイルドかつ、けたたましくがっつり吼えた。この充満する熱さと勢いがAMTのイメージではある。しかし本盤では穏やかな要素を前面に出し、ここで気分転換のように暴れた。
 
 (5)は再び静かな世界に。アジア的なドローン・サイケを軸に、アコギや他の弦楽器が細かく深く厚くダビングされていく。シンセで空間を縫い、彩りを添えるところも忘れない。
 素朴さとスペイシーさが同居した。途中から歌声が加わり、フォークの色合いを添える。

 アルバム最後の(6)が30分に及ぶ大作。イントロはフルートがケルトっぽく響いた。持続する音はハーディガーディだろうか。バグパイプを連想し、英国的な硬い雰囲気を脳裏に描く。
 強いアタックのフルートは凛々しく響いた。
 そのラインに弦楽器が載って、主役の役割をゆっくり交代する。ここまでが約6分。

 すぱっと場面が変わり、重たいギターのリフに。数本重なり、厚みを出す。
 ドラムが加わった。シンセも載った。ベースが唸る。さあ、AMT世界の幕開けだ。
 ただしいきなりギター・ソロが炸裂ではない。シンセと津山の歌が一杯に広がる。歌を前に出さず、サウンドに溶かすミックスで。

 10分を過ぎたところでギター・ソロ。重たく歪んだ響きでギターが伸びていく。
 さらに本盤ならではのセッション。16分過ぎには小野も加わりエレキギターとツイン・ソロのジャムに雪崩れた。テンション高くいななくサックスと、包容力溢れるエレキギター。 
 ドラムとベースが賑やかだが着実にアンサンブルを支え、シンセは隙間を逃さずきらめいた。

 このままで終わらず、インド風に唸る津山の歌声を挟んで曲のリフへ。ジャムの垂れ流しではない。ドラマティックさを保ち、大作ながら楽曲としてしっかり構成されている。
Track listing:
1 Attack From Planet Hattifatteners 6:14
2 Buy The Moon Of Jupiter 3:27
3 Asimo's Naked Breakfast : Rice And Shrine 15:02
4 I Wanna Be Your Bicycle Saddle 1:38
5 Interplanetary Love 5:55
6 The Tales Of Solar Sail ~ Dark Stars In The Dazzling Sky 30:30

Personnel:
津山篤 : monster bass, voice, acoustic guitar, one-legged flute, sopranino recorder, organ-guitar, cosmic joker
東洋之 : synthesizer, dancin’ king
Uki Eiji : drums, wrecker & convoy
小埜涼子 : alto sax, flute, aesthetic perverted karman
Nao : erotic voice, astral easy virtue
河端一 : electric guitar, sarangi, electric sitar, hurdygurdy, tambura, glockenspiel, electronics, short wave, percussion, voice, speed guru

Recorded at Acid Mothers Temple, May.2005-Feb.2006
produced and engineered by 河端一
degital mastered by 吉田達也

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