Acid Mothers Temple & The Melting Paraiso U.F.O. 「New Geocentric World Of Acid Mothers Temple」(2001)

 ショーケースのように多彩で、重たいサイケな曲を詰めたアルバム。

 このときの基本メンバーはコットンと一楽がいる5人編成のようだ。
 本盤ではさらに色々なゲストを招きヒッピー・コミューンめいた要素を取り込んだ。逆に津山はあまり楽器を持ち替えたりダビングせず、ベースにギターのみとあっさりした傘下に留まった。河端がさまざまな楽器を弾くこともさりながら、本盤では東がシンセの他にギターやリコーダーなど、意外と積極的にレコーディングへ参加してる。

 アルバムは冒頭こそ疾走するAMT印のジャムを貫くが、あとはトラッドやアシッド・フォークの色合いも混ぜた様々なアレンジの楽曲が並ぶ。
 すでにアシッド・マザーズの活動を始めて何年もたっているが、アイディア一発の量産体制ではなく、アルバムならではの引き出しの多さを披露するかのよう。
 CDでは一枚だがアナログだと2枚組のボリューム。その各面ごとに場面転換する構成で形作った。

 まず1曲目はA面全部を使った強烈なジャムの嵐。AMT流の奔流が途切れなく続く。イントロはメカニカルな打ち込み風アンビエントな幕開けで、炸裂音とともにいきなりトップギアでインプロの疾走に雪崩れる構成を取った。
 初手からいきなりカッコいい。本盤はあと一曲以外、この手の暴れるサウンドが無い。全体的には静かなイメージある盤なのだが、最初はきっちり期待に応えるサービス精神が嬉しい。
 左右に音像が振れ、エキゾティックなきらめきをまといながら剛腕のエレキギターがあたりを薙ぎ倒していく。痛快な楽曲だ。

 一転して(2)は英国トラッド風味。津山の趣味を前面に出して男女二声で静かに楽曲が紡がれる。オルガンの三連符はいつしか歌やギターと譜割がずれていき、ポリリズミックな展開に。浮遊しながら二つのリズムがたゆたい、混ざり合った。

 ぐっとアシッド・フォーク風味の(3)は深いリバーブが全編を覆う。重たいビートにシンセの蠢き。ちょっとしゃがれ気味の女性ボーカルが混ざり合う凄みは、深くサイケの沼に潜っていった。
 テンポは緩やかだが引きずらず、しなやかなグルーヴがミニマルなフレーズの中から漂ってくる。

 これも10分くらいの尺。中盤で少し間をおいて、エレキギターがおもむろに空気を切り裂くさまに強烈な美学あり。そのままリズムとつかず離れずな感じの譜割とノリでエレキギターは妙に泰然としたフレーズ感でソロを取った。
 この辺の無常感は独特の凄みと寂しさが同居する。
 なおLPでは(2)と(3)でC面を構成、さらに"Grateful Head"なるボートラが収録された。ぼくはこの曲を未聴。
 
 LPのB面がCDだと(4)~(6)。(4)もトラッド風味。アコギの素朴な爪弾きに、津山の雄叫びが乗る。英国の香る楽曲ながら、シンセがうごめいてインド的な煙っぽさも演出した。
 ここでは退廃的なミニマルさを演出か。じわじわと音像が左右を飛び交う。

 (5)が本盤でもう一曲のスピード優先なジャム。ここでは音質が思い切りへしゃげてる。ギターソロの妙味やアンサンブルの切れ味でなく、鈍器のように重たい音の塊ごと振り回すかのよう。
 エレキギターとシンセのツイン・フロントな構成とわかるけれど、細かいフレージングは読みづらい。やたらローファイなサウンドが力任せに暴走してる。これはこれで痛快感が満載。
 例えばムジカ・トランソニックで聴けるような音質悪いセッションを、さらに一ひねりして丸ごと振り回してる。大音量のほうが、このでたらめな生き生きさが伝わりやすい。

 終盤でいきなりカット・アウト。ピアノの演奏に切り替わる。静かに、不協和音で。クレジットによるならば、演奏はGinestet Audrey。とりとめなく、構成も読めず。即興的に鍵盤を押さえるような、不思議な音列が続く。
 打楽器やクラスターは使わず、あくまでも緩やかなフレーズを並べるところが特徴だ。

 そして(6)へ。これも津山によるトラッドっぽい展開。シンセのひきしぼりが空気を粘らせ、背後のオルガンがそっとサイケ風味を振りかけた。たっぷりのリバーブを持ちながら、
 たとえば(3)や(4)とも明確に違う。この楽曲はもっと楽器演奏に軸足を置いた。中盤から訥々とオルガンが長いソロを取る。似たようなアプローチで異なるアレンジが三者三様に本盤では並んだ。

 アルバム最後、15分にわたりLPではD面全てを使い切るのが(7)。たぶんリアルタイムのディレイ・ループを駆使した、河端のギター・ソロ。
 本盤発売の01年は既に河端のソロ・アルバムも複数枚のリリースあった。しかし本盤でも河端はたっぷり独自の世界を描いた。
 
 充満するエレキギターのドローン。弓弾きの音が混ざり、ロングトーンがループして幻想的な世界を描く。途中でブレイクさせ、音数を消してリバーブ中心のふくよかな響きに変わった。
 それでもエレキギターのソロな構成は維持する。ここではAMTのアルバムながら、リズムもダビングも無い。あくまで河端の世界感で幕を下ろした。

 繰り返そう。1アルバムで長尺1アイディアの戦略ではなく、あくまで本盤はアルバムのバラエティさを選び、AMTの懐深く幅広いヒッピー・サイケでアシッド・フォークな世界観を強調した。

Track listing:
1 Psycho Buddha 21:27
2 Space Age Ballad 4:00
3 You're Still Now Near Me Everytime 10:44
4 Universe Of Romance 5:21
5 Occie Lady 8:31
6 Mellow Hollow Love 4:39
7 What Do I Want To Know (Like Heavenly Kisses Part 2) 15:06

Personnel:
河端一 : electric guitars,violin,bowed peacock harp,organ,bouzouki,zurna,alto saxophone,cornemuse,synthesizer,vocal,speed guru
Cotton Casino : vocal,synthesizer,beer & cigarettes
津山篤 : monster bass,acoustic guitar,vocal,cosmic joker
小泉一 : drums,percussion,soprano saxophone,sleeping monk
東洋之 : synthesizer,acoustic guitar,soprano recorder,chorus,dancin'king
一楽儀光 : drums,kendo
Mano Kazuhiko : tenner saxophone
Ishida Yoko : peacock harp,chorus,cheese cake
Haco : vocals
Father Moo : guru and zero
Magic Aum Gigi : jew harp,erotic underground
Ginestet Audrey : bass,piano,voice,cosmos

Recorded at Acid Mothers Temple, FTF Studio and Mescalina.

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