The Acid Mothers Temple & The Melting Paraiso U.F.O 「In O To ∞」(2010)

 エレキギターを控え、サイケ・ドローンの充満に浸れる。

 ほぼ18分半の4曲が整然と並んだ。加速するアシッド・マザーズ流のサウンドは存在するものの、いくぶん大人しめ。シンセサイザーの比率が高い。
 アナログでは数種類のジャケットや黄色/黒/透明のカラーLPが限定盤で存在する。録音時期は明記無いがコットン・カシノや一楽儀光の在籍する編成、かつドラマーは志村浩二なため、00年代初期の音源を改めて編集やダビングしてリリースかもしれない。
 本盤発売後に津山、志村、東、河端の編成で、本盤のタイトルを冠した米加ツアーが同年3月~4月にかけて行われた。

 猛烈に噴出する河端のギターを抑えただけで、こんなにも世界が変わるのかと興味深い一枚。サウンドはしっかりアシッド・マザーズ印なのに。
 浮遊するドローン、シンセの蠢き、津山の唸りやコットンの高らかな歌声などがまぶされる。リズムは常に轟かず、場面ごとに存在感を出した。

 音数は決して少なくない。津山はクレジットによればサックスや笛なども奏でてる。(4)の後半でシンセとサックスのバトルが聴けた。
 河端はシンセやオルガン、パーカッションなどもダビングしている。アナログ・ギター・シンセともクレジットあるため、この揺らぐシンセのいくばくかは河端の演奏なのだろう。たとえば(4)の中盤とか。

 タイトルにそって極端に振れた。0やAだから少なかったり、Zや∞だから音数が多いとの単純な対比ではない。たしかに後半の曲に向けてテンションは上がっていくけれど、前半も複層構造を持っている。
 明確なメロディを提示させず、インプロ風に曲が進む。しかし奏者のテクニックよりも音像で成立しており、多数のダビングを施して彩は複雑だ。展開よりも酩酊。ドローンやミニマルにこだわっている。

 前述のとおり2ドラム編成ながら、地獄組のようなセッション的なドラムの掛け合いは特段に強調しない。曲によってドラマーが違うだけかもしれない。それともくぐもっているが、(4)が2ドラム?
 あまり細部にこだわらず、鷹揚に楽しむべきかもしれないが。

 ある意味、河端のミックスがとりわけ凝った一枚だ。
 なおサービス精神なのか、(4)ではぐっと派手でいかにもアシッド・マザーズらしい加速を強調して魅せた。痛快にして爽快な疾走がたっぷり楽しめる。12分あたりでいったんブレイクして、さらに猛進した。
 ここから最後まで、シンセの強調っぷりはROVOを連想する。タイトな涼やかさが付与されて、いくぶん荒々しいアシッド・マザーズのグルーヴが整理されて聴こえた。

 一般的なアシッド・マザーズのライブでイメージする音像から言えば、かなり異色なアレンジ。しかしアシッド・マザーズはスタジオ盤だと様々に実験を繰り返している。その観点では、振り幅が大きいけれど違和感はない。意外ではあるけれど。

 なおLP2枚組のボリュームな本盤だが、AmazonのMP3では1曲百円のレートにひっかかっており、わずか400円で本盤が聴ける。


Track listing:
1 In O 18:15
2 In A 18:21
3 In Z 18:39
4 In ∞ 18:29

Personnel:
河端一 : guitar, organ, synthesizer, analog guitar synthesizer, gong, glockenspiel, tape-loop, voice, speed guru
津山篤 : monster bass, voice, soprano sax, recorder, chimpo pipe, temple block, cosmic joker
東洋之 : synthesizer, dancin’king
志村浩二 : drums, latino cool
一楽儀光 : drums, doravideo
Cotton Casino : voice

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