Manuel Göttsching 「Inventions for Electric Guitar」(1975)

 波打つギターのクリアなミニマルさ。硬質なサイケっぷりがドイツらしさか。

 独アシュラ・テンペルのリーダー、マニュエル・ゲッチングが1stソロもしくは6thアルバムとして発表した盤。4チャンネル・レコーダーとエレキギターのみで録音した。
 ミニマル要素が強く、繰り返されるディレイ・ループに新たなフレーズが重なり、薄く繊細な世界を編んだ。

 今ならばエフェクタを駆使してリアルタイムのライブ演奏でできる音像だが、当時はダビングかな。鋭角でタイトなフレーズ感覚が独特だ。
 クラウトロックもしくはジャーマン・プログレとして位置づけられるゲッチングだが、さもありなん。ここにはサイケのいい加減さやジャズ的なアドリブ要素は皆無だ。本盤はのちにテクノの始祖と位置付けられたのもうなずける。
 すべて生演奏のはずなのに、機械仕掛けっぽい正確で涼やかな音像が広がった。

 本来、クラウトロックはサイケの影響を受けたという。しかしドラッギーなあいまいさは本盤から現れない。即興的にフレーズを重ねたっぽいけれど、明確で論理的な真摯さがにじみ出た。
 
 長尺2曲に6分の作品が1曲。あえてA面B面を1曲にまとめなかったところが、極端に走りすぎないまじめなバランス感覚か。時代だな。今ならば構わずに長尺一本槍でも不思議でない。

 (1)のテンポはほぼ一定。フレーズが細分化して前のめりなビート感を産んだ。ショート・ディレイで小刻みな旋律を表現かな。フル・ピックでない柔らかさあり。U2の元祖。論点が少しずれてしまうが。
 メカニカルなフレーズが延々続いたあと、15分過ぎに情感あふれるワウを効かせた旋律を絡ませる構成が、かなりかっこいい。最後の最後で燃えさせる。

 (2)は白玉を生かした伸びやかな旋律。倍音でふうわりと包み込むかのよう。
 リバーブの海の中、ゆるやかにメロディの断片が浮かんでは沈む。この浮遊感が美しい。
 
 (3)もディレイを駆使した酩酊感で幕を開ける。エッジの甘い低音感が音像を柔らかく支えた。裏拍の効いたフレーズの繰り返しが、緩やかにグルーヴする。
 白玉は拍の頭をズラしながら高まり、リズムへかすかな複雑さを付与した。だんだんと高まっていくさまがきれいだ。

 ディレイで次々フレーズが足されていく。強く鳴りすぎず、音も充満しない。足し算の方法論だが引き算で音が作られている。このセンスが才能か。
 フレーズの積み上げを、かなりこの曲では揺らしてる。(1)がぴっちり角を揃えたとしたら、ここではほんの少し互い違い。いい加減でなく、きちんと整えを意識してる点は変わらない。

 中盤で少し大人しく着地する。一息つくかのよう。そのあと改めて、しゅわしゅわと加工した音色を背後に、歪ませたギターが唸るメロディ場面へ移行していった。
 結局、最後は人間臭さを表現したいみたい。ほんのりブルージー。しかし感情に流されない。最後は再びメカニカルな世界観でしっとりとまとめた。

 あれこれ聴いてはいるが、プログレは本当に詳しくない。ジャケットではかなり前から知ってたが、本盤も今回に初めて聴いた。こういう音楽があったのか。タンジェリン・ドリームのクラウス・シュルツェがアシュラ・テンペルのメンバーだったことも改めて知った。
 ドイツ音楽はテクノの周辺から、ものすごく遠回りして聴いてる。こういう漂う感じがクラウトロックならば、ハマるのも分かるなあ。
 16年にゲッチングがリマスターの再発も出てたんだ。
 

Track listing:
1 Echo Waves 17:45
2 Quasarsphere 6:35
3 Pluralis 21:35

Composed By, Arranged By, Performer - Manuel Göttsching
Mixed By Heiner Friesz, Manuel Göttsching
Producer : Manuel Göttsching
Recorded July-August 1974 in Studio Roma (Berlin, Quadro-Mixing at Dierks Studio (Cologne).

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