Eddi Reader with The Patron Saints Of Imperfection 「Mirmama」(1991)

 みずみずしい切なさを、硬質なマスタリングでまとめた五目味な一枚。
 

 フェアグラウンド・アトラクションズが解散に至り、心機一転でソロ活動を始めた1st。ソロでなくThe Patron Saints Of Imperfectionとのバンド名義だった。しかし継続せず、次の"Eddi Reader"(1994)から今に至るまでソロ名義で活動してる。
 一枚たりとも駄作の無い、素晴らしい作曲家でありシンガーだ。大好き。

 日本盤で見ると、このアルバムは少しばかりややこしい。原題の"Mirmama"は発売当時、使われなかった。ジャケ写も異なりエディがうつむき気味に街角に立つモノクロ写真。ぼくはリアルタイムでこっちを買ったため、どうしても本盤はこのイメージが強い。
 タイトルも"Eddi Reader"。自分の名前を冠した。
 だが次作でエディ自身がアルバムに"Eddi Reader"とつけてしまう。

 さらに発売当時、日本盤は4曲のボートラが付いていた。のちに"Mirmama"でリリース時に1曲ボートラがついて、最新仕様は16曲入り。その上、古い日本独自ジャケットでも16曲仕様がある。紛らわしい。

 なおボートラ4曲の内訳は、1stシングル(2)のカップリング曲(12,13,15)と、2ndシングル(2)のカップリング曲。他にも当時にシングルのみの曲はあるが、ボートラに収録がなく、少しばかり中途半端な選曲だった。当時は細かい情報までつかめておらず、のちにディスコグラフィーを見て知ったのだが。

 ちなみに16曲仕様で再発時に追加の"Sunday Morning"は1stシングルのカップリング曲。これで1stシングルのアルバム未収録曲は網羅できるようになった。

  

 アルバムの感想に戻ろう。
 音楽はエレクトリックさが混じる、硬質さが逆に新鮮で良かった。フェアグラウンド・アトラクションはバスキングを連想するアコースティックさを強調のイメージ。エレキギターを使用有無にかかわらず、生楽器の柔らかい雰囲気が似合った。
 だが本盤は全体的に音が硬い。前述のボートラ4曲仕様で聴いてるせいもある。マスタリングの影響が多分にあるだろう。ちなみに僕は他のバージョンで聴いたことなし。

 アレンジはトラッドを下敷きのアコースティック路線なのだが。ところどころ、硬質なエレキギターが挿入される。逆に僕は、このアレンジが好きだ。心機一転のイメージ一新をエディが図ったように誤解できるため。新たなベールをまとおうと試みる、エディの真摯な姿勢が透けて見える幻想を見てしまう。

 録音は小さなスタジオにて2週間ほどで完成したという。クレジットを見るとバンド編成を意識しながら、微妙に違うコンセプトも混ざっている。なお(1)のリミックスはトーマス・ドルビーが担当。どうしてもエレクトロのイメージが強いため、違和感ある選任だ。決して悪い仕事はしてないのだが。

 The Patron Saints Of Imperfectionのメンバーはフェアグラウンド・アトラクションから継続した関係のロイ・ドッズ(ds)。それとスタジオ・ミュージシャンあがりかな?Phil Steriopulos(b)。さらにEwan MacCollとPeggy Seegerの息子なNeil MacColl (guitar)だった。
 兄弟のCalum MacCollがサポートでツィターやダルシマーでサポートしてる。このメンバーでアルバムのほとんどを占めた。

 プロデュースはエディ自身にこのバンド・メンバー。バッキング・バンドでなく、仲間として録音した様子が伺える。
 (8,9)のみKevin MoloneyとRoy Doddsが協力プロデュースに変わる。根拠はないが、こっちが最初の録音じゃないかな。フェアグラウンド・アトラクションのプロデュースにもクレジットされたKevin Moloneyだし、当時のアウトテイクもしくは小手調べで吹きこんだのでは。

 そしてこの2曲はダビングの多さや音世界が違う。より硬質な(8),アコースティックな(9)。これらを試して、もっと素朴なサウンドが欲しくてエディはThe Patron Saints Of Imperfectionを稼働させたと空想する。いずれにせよ硬質さは残したが。

 しかしエディは満足できなかったのだろう。数年間の雌伏を経て、もっと穏やかな世界観を温めた"Eddi Reader"で再デビューを図る。 

 とはいえ、繰り返すが本盤は決して悪くない。むしろ良い。フェアグラウンド・アトラクションの崩壊を受け止め、ぴんと緊張したエディが多重ボーカルを駆使して自分の美学を追求してる。サービス精神の前に、曲ごとにあれこれ試行錯誤して舞台構築を図る挑戦視線が清々しい。

 バンド一体型のサウンドとは少し違う。アレンジやアプローチがいろんな方向に向けられている。とっちらかった形はない。エディのファンの贔屓目だとしても。歌手としてさまざまな曲調を狙うのでなく、歌世界は変わらず衣を色々と着替えている感じ。

 最後に。(15)が名曲。鳥のさえずりはSEではない。フィールド・レコーディングでアコギにバックに伸び伸びとエディが歌う。風でマイクが吹いても気にしない。素朴でふくよかな世界が広がった。
 ウッドベース、パーカッションはダビング?
 ボートラとは分かっていても、硬質でぴりっと締まった世界を作ったアルバムの風景を、柔らかく溶かすような演奏でしみじみとアルバムを優しく締めてくれた。日本盤で初めて聴いた人の特権だ、これは。

Track listing:
1 What You Do With What You've Got
2 Honeychild
3 All Or Nothing
4 Hello In There
5 Dolphins
6 The Blacksmith
7 That's Fair
8 Cinderella's Downfall
9 Pay No Mind
10 The Swimming Song
11 My Old Friend The Blues
12 Broken Vows
13 Ole Buttermilk Sky
14 I Wish You Were My Boyfriend
15 The Girl With The Weight Of The World In Her Hands

Personnel:
Vocals, Concertina(on 3,11) - Eddi Reader
Co-producer - Eddi Reader, The Patron Saints Of Imperfection (on 1-7, 10-11), Kevin Moloney (on 8-9), Roy Dodds (on 8-9),

Backing Vocals, Guitar (on 2-7, 9-11),Piano (on 2), Autoharp (on 6,10), Mandolin (on 11)- Neill MacColl (on 2)
Double Bass (5 string) - Phil Steriopulos
Drums, Percussion - Roy Dodds

Whistle (on 3), Zither (on 4), Dulcimer (on 6) - Calum MacColl

Accordion, Organ - Kim Burton (on 1)
Cello - Huw Warren (on 1)
Fiddle - Aly Bain (on 1)

Organ (on 2,3,7), Piano (on 5) - Jools Holland
"Accordion, Cello, Piano" (on 8), "Accordion, Cello, Vibraphone, Piano" (on 9) - Huw Warren (on 8)
Guitar - Dominic Miller (on 1,8-9)

Engineer - Terry Medhurst (on 1-7, 10-11)
Remix - Phill Brown, Thomas Dolby (on 1)

関連記事

コメント

非公開コメント