赤天 「参」(1996)

 前作を踏まえつつ、芸風が確立した傑作アルバム。

 吉田達也と津山篤の即興的なノベルティ・ユニットだった赤天だが、本作でインプロとワン・アイディアのコミカルな方向性に振り切った。音楽にユーモアを込めたインプロだった前作から、ギャグやアイディアを音楽に昇華する方向に。似てるようで微妙に違う。
 本作のほうが、よりすっきりとわかりやすく面白くなった。そして本作を突き詰め、よりインプロへ高めた"純米吟醸"(1997)や、サンプリングやエフェクターを駆使してワン・アイディアを盛り上げる傑作"Chateau Du Akaten"(2001)に繋がる。

 本盤では一発録音な面持ち。今でも演奏し続ける"大根おろし"を収録してるが、むしろこの盤の中では異色になる。これはむしろ"純米吟醸"のコンセプトを先取りしてる。
 ここでは組曲を中心に、関連する言葉を連呼にて強引にメロディやリズムを当てはめて、混沌な勢いをもたらす方向性が中心だ。

 シンセ中心の雄大な風景のパターンをバックに、大海の名前を連ねる(1)が幕開け。楽曲の流れは意識するが、歌詞の落ちや構成はあまり気にしないのが特徴。つまりギャグに音楽を付与でなく、「関係ある言葉を次々と並べたら面白かろう」ってコンセプト。
 国の名前でもなんでもいい。楽曲のアレンジや構成は変わるだろうが、曲の芯はブレない。それが赤天のスタンスだ。

 その派生が(9)の"百貨店"。アイディアは(1)と一緒だが、表題で楽想やコンセプトが変わる。これがのちの傑作"カメラ","ジッパー"などにつながる、赤天の主軸路線になった。
 なお(9)ではルインズ風にガラガラと楽想が変化して、よりスリリングな楽曲に仕上げた。エレベータ・ガールのまねでおどける津山のギャグ・センスがいかにも。
 
 "大根おろし"(10)も赤天のもう一つの路線となった。ギャグのユーモアは吉田寄り。クールで大真面目だが、面白い。
 日常音を音楽に仕立てるスタイルがここで産まれた。のちの"歯ブラシ"などはこの路線。
 ちなみに"ジッパー"は、こちらのニュアンスも内包している。色々な意味で赤天を象徴する曲だ。

 数十秒の曲が7曲並ぶ、"組曲「野鳥」"は少し方向性が違う。鳥の鳴き声を音で模倣が目的ではない。むしろ鳥の鳴き声に音をプログレ的に当てはめた。日常のどこにでも変拍子やプログレは転がっている、って感じ。吉田や津山の創作性がにじみ出たといえる。
 それ以前にもっとシンプルに、大笑いしながら真剣に録音してる楽しさが漂うが。

 収録の順番は前後するが(12)からの5曲"組曲「ラーメン屋」"や(20)から6曲"組曲「石仏」"へ先に触れたい。
 これも"組曲「野鳥」"に近しい路線。ラーメン屋の方はいくぶんギャグ寄りで、石仏のほうは演奏へグッと重心を乗せた。逆にこれらの組曲は赤天の全二作の路線を踏襲している。

 このアルバムのアイディアをまとめるのに、どのくらい時間かけたかは知らない。仕事の速い二人だから、録音はあっという間と思うが。
 けれどもかなり、練ってアレンジを固めたと思われる。即興的な要素は高いにしても、ダレたところが全くない。どの曲も短くすっきりまとまった。
 お遊び要素の強いユニットだったとしても、音楽は真剣に。そんな姿勢に溢れている。

 残りの曲も簡単に触れたい。(11)は東伏見のアパートがテーマらしい。大友良英や内橋和久がほんとに住んでたのかな?それっぽい名前が出ると、彼らをパロッたようなフレーズがさりげなくダビングされるとこが楽しい。佐々木君ってのは元ルインズの彼?

 (17)~(19)は、方向性としては(9)"百貨店"に近い。だが声の面白さやフレーズ選びに軸足が置かれ、むしろ吉田の別ユニット、ズビズバにもハマりそう。
 この辺はナンセンスな面白さは漂う一方で、明確なギャグに走らない。
 のちの"ワイン"に通じる、サンプリング的な要素もあり。これは当時の録音や機材スタンスで、わさわさと畳みかけるアナログな勢いのアレンジになったのかも。

 (28)は何かのバンドをパロってるのかよくわからず。ビル・ラズウェルのバンドではなさそうだが。この辺は詳しい人なら、大笑いして楽しめるのかもしれないな。
 こういう知識を必要とするユーモアはどんどん赤天からそぎ落とされ、よりシンプルに楽しめる、いわば海外ツアー仕様に洗練された方向性に向かっていく。

 26曲と多いが、全編で30分弱。カッティング・レベルを下げればLP片面にすらぎりぎり収まりそう。
 だらだらやらず、つるべ打ちにユーモアを畳みかける。くどさを廃して勢い重視にスッキリとまとめた。

Track listing:
1 海 [Ocean] 2:00
組曲「野鳥」 [Suit "Wild Birds"]
2 うぐいす [Bush Warbler] 0:20
3 ほととぎす [Little Cuckoo] 0:08
4 おおじしぎ [Latham's Snipe] 0:37
5 さんこうちょう [Black Paradise Flycatcher] 0:06
6 ほおじろ [Siberian Meadow Bunting] 0:30
7 せんだいむしくい [Crowned Willow Warbler] 0:11
8 おおよしきり [Great Red Warbler] 0:56
9 百貨店 [Department Store] 1:02
10 大根おろし [Grated Radish] 0:58
11 三晃荘 [Sankohso Apartment] 1:31
組曲「ラーメン屋」 [Suite "Ramen Shop"]
12 天下一品 1:01
13 桂花 1:08
14 味噌一 0:46
15 一二三 1:16
16 坂内 0:58
17 競馬 [Horse Racing] 0:47
18 山菜 [Wild Plants] 0:57
19 Tensova 1:37
組曲「石仏」 [Suit "Stone Budda"]
20 北条五百羅漢 1:12
21 普光寺不動磨崖仏 0:40
22 飛鳥亀石 1:08
23 熊野磨崖仏 0:41
24 上坂田磨崖神像 0:18
25 臼杵磨崖仏 0:55
26 Last Exit 1:42

Personnel:
Bass, Guitar, Vocals :津山篤
Drums, Keyboards, Vocals:吉田達也
Producer:Magaibutsu

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