Sun Ra 「Blue Delight」(1989)

 スインギーで聴きやすく、微妙にヘンテコ。

 唐突にメジャー・レーベルなA&Mと契約してリリースの一枚。サン・ラが他界は93年、晩年の時期にあたる。この当時は88年夏に来日して新宿ピットインなどに出演してニュースになったため、「アルバムを多数リリース」って伝説とともに知識としてサン・ラを知ってはいた。ただ、音を聴くチャンスも無し。ライブに行く習慣もなかったし。
 その後にレコ屋で本盤を見かけた。リアルタイムで買っては無いかな。だいぶ後に聴いたかもしれない。

 ぱっと聴いたら、かなり耳馴染みが良い。並行してサターン時代の再発を聴いたため、特にそう感じた。だからずっと「サン・ラの晩年はスイング回帰して、素直なジャズに戻った」と思い込んでいた。やばいやばい。早合点だ。
 久しぶりに本盤を聴いたら、聴きやすさはそのままに芯には曇った影を残してた。

 本盤は来日した88年の暮れ、12月5日にニューヨークで録音された。この日のアウトテイクは"Somewhere Else"(1993)に収録されている。
 
 サン・ラを入れて19人編成。アーケストラに交じって、なぜかトミー・タレンタイン(tp)が参加した。他にサン・ラとの共演盤は残っておらず、エキストラみたいな役割か。そのわりにペットはFred Adams、Ahmed Abdullahがおり、特別に金管へ不自由した編成でもないのだが。

 全8曲中、サン・ラのオリジナルは4曲と半数。(2)(5)(8)がカバーとなる。(7)はアーケストラのメンバーで本作でも吹いてる、Julian Priester(tb)の作品。
 調べてみると(2)はジョニー・グリーンの1931年ヒット曲。(5)は「風と共に去りぬ」に題材を得た37年の曲。(8)はマンシーニの63年に出た有名曲「酒とバラの日々」。オリジナルとスタンダードが並んだ。30年代の曲すら、1914年生まれというサン・ラには若い時に耳馴染んだ曲かな。

 マルチ・トラックできっちりと録音された分離良いサウンドは、明瞭にアーケストラの風貌を伝える。サン・ラの暗黒風味は(4)あたりが顕著。淡々と猛烈にフリーな形状を奔出させた。

 その一方で小粋なスインギーさを見せるところが、本盤の両極端となる。朴訥ながらサン・ラは明るくクッキリしたタッチできれいなピアノも奏でた。 
 サン・ラは昔からアバンギャルド一色だったわけではない。ライブではエリントンの「A列車で行こう」など、カバーもしていた。エンターテイナーとして、サービス精神はあったろう。ピットインのライブを収めた"Live at Pit-Inn (Cosmo Omnibus Imagiable Illusion)"でも、8曲中3曲は人の作品だ。なおこの日のライブ音源はMP3で"The Pit Inn 8-8-88"(2015)と発掘済み。知らなかった。

 だがアルバムの中で、明確にスインギーさを出したのが新鮮だったのかもしれない。サン・ラの作品を全部は聴いたことないので、決めつけられないが。
 サン・ラのディスコグラフィ・サイト(http://www.sunraarkestra.com/)で本盤の前を何枚か辿ってみたら、"Reflections in Blue"あたりが分岐点のようだ。この盤でも6曲中3曲がスタンダードだ。この盤もたしかにスインギーさが前に出てた。
 やはり晩年は聴きやすいジャズも大胆にアンサンブルに取り入れたのだろうか。
  
 だが本盤は、甘さ一辺倒ではない。マーチング・バンド風のスネアに導かれ、スマートなピアノで幕を開ける本盤は聴きやすい。
 しかし奥底に鋭く深い前衛を残してる。サン・ラは歳を重ねて、丸くなったってことだろうか。
 とにかくヌケの良い録音が心地よい。さすがメジャーの環境、か。

Track listing:
1 Blue Delight 11:10
2 Out Of Nowhere 5:26
3 Sunrise 11:48
4 They Dwell On Other Planes 14:41
5 Gone With The Wind 5:51
6 Your Guest Is As Good As Mine 5:53
7 Nashira 4:09
8 Days Of Wine And Roses 6:58

Personnel:
Sun Ra - piano, synthesizer
Fred Adams - trumpet
Tommy Turrentine - trumpet
Ahmed Abdullah - trumpet
Al Evans - flugelhorn
Tyrone Hill - trombone
Julian Priester - trombone
Marshall Allen - alto saxophone, flute, oboe, clarinet
Noel Scott - alto saxophone, percussion
John Gilmore - tenor saxophone, clarinet, percussion
Danny Ray Thompson - baritone saxophone, flute, bongos
Eloe Omoe - bass clarinet, alto saxophone, contra-alto clarinet, percussion
James Jacson - bassoon, flute, percussion
Bruce Edwards - electric guitar
Carl LeBlanc - electric guitar (all solos)
John Ore - bass
Billy Higgins - drums
Earl "Buster" Smith - drums
Elson Nascimento - percussion

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