Elliott Sharp 「Dyner's Club」(1993)

 エレキギター四重奏。インプロ要素はあるにしても、完全即興でなく譜面モノだ。

 エリオット・シャープがキャリアの初期に発表したアルバム。全8曲、2分足らずの小品から17分越えの大作まで幅広く収録した。メンバーはRoger Kleier, David Mecionis, John Myers。本盤以外の作品は残してない。93年12月27日に録音された。
 
 歪んだ響きのエレキギターを4人並べ、ユニゾンもしくは対比構造を作ってザクザク刻むダイナミズムを表現した。曲によっては奇数拍子でエキゾティックなパターンも使う。激しい音色のせいでラウンジ的な寛ぎより、フリージャズに似たスリルに近い。最初はでたらめに聴こえ、そのうちふっと完全な譜面モノと気づく。

 主役と伴奏や、リズムとメロディって対比構造ではない。全員がほぼ平行の立ち位置だ。したがってどのフレーズをE#が弾いてるかも不明。
 若干はインプロ要素あるにしても、少なくともテーマ部分は完全に譜面。メンバーは一糸乱れずアンサンブルを構築した。いや、言いすぎか。少しばかりブレるところもあり。だがそれも愛敬、もしくはニュアンス。機械仕掛けもしくはクラシック的な精緻さよりも、揺らぎがグルーヴ感を表すのに一役かった。

 ディストーションをかけた音色ながら、歪みやノイズが主軸ではない。メロディやフレーズの対話、もしくはストロークや白玉の流れが続くミニマル寄りのサウンドが主眼だ。
 ロック、もしくはエレクトリック・ジャズ的な荒々しさを持ちながら、本質は現代音楽としてきっちり制御されている。
 派手なテクニックひけらかしの速弾きは無いにせよ、全員が揃って同じリフを重ねたり、特殊奏法のハーモニクスを合わせるさまは痛快だ。

 いわゆるソロ回しや、アドリブ合戦のような個人技が本盤には希薄だ。細かいフレーズや中間部分は即興要素がありそうだが、基本的にがっちり固められた構成が全編を覆う。
 もしこれがアコギなら。バイオリン四棹なら。もっと現代音楽らしい堅苦しさに満ちたろう。しかし歪んだ音色のエレキギター四本が産む、スピード感と鋭さが本盤に冴えた鋭さを付与した。
 
 轟音で荒れ狂うように見せて、実は知的に制御されたアンサンブル。E#の作曲家としてシンプルながら効果的な世界観を見せた。
 美しい旋律よりも、ストロークやパターンの組み合わせによる爽快さを狙った。聴くほどに奥深さを感じる。できれば轟音で聴いて欲しい。吼える歪みの奥に荘厳な残響が漂うから。
 
 とりわけCDにプレミアはついてないが、今はMP3でも容易に音盤が手に入る。
 

Track listing:
1 Jitters 6:36
2 What It Isn't 3:28
3 Blur 4:14
4 Zappin' The Pram 17:22
5 Chomper 5:00
6 Kludge 1:55
7 Residue 7:15
8 Flowtest 3:23

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