赤天 「赤天」(1995)

 ユーモア路線デュオの1st。

 高円寺の餃子専門店の名前を付けた津山篤とのデュオ、赤天。ルインズに似たベースとドラムの編成ながらアプローチは全く異なる。インプロや演奏技術を追求も可能だが、ギャグ路線のお手軽ユニットが赤天だった。

 まさか20年以上たつ現在も、断続的ながらメンバーチェンジ無しで、いまだにワールド・ツアーをこなす活動に至るとは。気負わずしたたかに音楽を続ける、二人ならではのゆるやかな結束ならでは。
 それと当初はルインズ+津山、今は河端一との"Japanese New Music Festival"企画を産んだことも、活動が続く大きな要因だろう。

 気軽で低予算だった。30分足らずのアルバムは祝儀袋を模した紙包みの簡素なジャケット。
 阿佐ヶ谷の今は亡きQKUスタジオで95年2月6日に、サクッと録音された。津山の生年は知らないが、おそらく二人とも30代半ば。パワーとアイディアに満ちた頃合いで、勢いに任せ製作した。

 津山のベタでこってりしたギャグと、吉田のクールでとぼけたユーモア・センスが噛み合って、独特のコミカルなネタが詰まってる。
 3rdあたりからテーマや非楽器を使ったインプロ路線にシフトするが、本盤ではもっと奔放で無秩序な即興が並ぶ。
 25分強のアルバムで15曲。(7)で6分ほど尺を使い、あとは1分未満から2分弱の短い楽曲をズラリ並べた。
 
 チェンバー・プログレ風のアンサンブルで津山がベースやギターを弾き分ける。ナンセンスなユーモアが、ラフな録音でつぎつぎにばら撒かれた。ぼくはプログレに詳しくないのだが、知識ある人ならパロディやネタへ気づくのかも。
 
 ワン・アイディアを連呼しながら楽曲を展開する路線は今と変わらず。変拍子にこだわった吉田のドラムが楽曲に安住を許さない。津山は懐深いでたらめさ複雑さを受け入れ、さらに骨太な展開に変換した。
 ベースだけでなくシンセで吉田に応えてベーシックを録音し、さらに歌も同時録音か。(7)でシンセをダビングなど、投げっぱなしではないけれど。全体的にはあまり凝らず、当時ならではのサイケなラフさで仕上げた。

 アルバムとしてはとりとめない。無造作なセッションと、おふざけなスカム路線が混ざっており、はっきり言ってマニア向けだ。
 ただし現在の赤天と異なる、しぶとく無軌道なセッションぶりは独特な魅力あり。なまじ日本人なだけにタイトルに引きずられ、音楽に意味性を求めてしまう。

 例えば(9)は吉田の住む高円寺駅に、土日の中央線は快速が停まらないことをネタにしたインプロ。でも意味なく聴いたほうが、この怒涛の連呼っぷりに凄みが出るだろう。 ベースと鍵盤をダビングした(13)のスピード感もすさまじい。これこそ2分足らずの尺じゃなく、ガッツリじっくり聴きたかった。

 どの曲も分析するよりむしろ無邪気かつ意味性に囚われず、直感的かつ素直にインプロとして愉しむほうが、本盤をよりじっくり味わえる。

Track listing:

1 眼球 Part 1 2:07
2 結婚 1:01
3 ゴミ箱 0:50
4 くさってる 1:28
5 マルコ・ポーロ 2:38
6 スピルリナ 0:28
7 赤天 6:04
8 ファンク 1:27
9 快速 1:07
10 ノイズ 1:09
11 野ばら 1:20
12 現代音楽 1:17
13 マハビシュヌ 1:50
14 ヨネザワ 0:53
15 眼球 Part 2 1:20

Personnel:
Recorded At QKU Studio on February 6, 1995.
Bass, Drums, Guitar, Vocals :津山篤, 吉田達也

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