Ruins 「Vrresto」(1998)

 驚異のデュオが明瞭かつ鋭く高まった傑作。

 4代目ベーシスト佐々木恒が加入の音盤って、正確には前作"Refusal Fossil"(1997)から。しかしどうしても本盤が、真の加入に思えてならない。佐々木ルインズの盤は他にもいろいろあるのだが、ここから始まる"Pallaschtom"(2000),"TZOMBORGHA"(2002)は至高の三部作だ。

 本盤で特徴的な過去との相違が2点ある。まず本盤から急にヌケが良くなったこと。GOK soundでしっかり録音も理由だろう。エンジニアはGOKの近藤祥昭だがミックスは吉田達也自身が手掛けてる。マスタリングは記載なし。
 このしっかりした音作りによって、初期のパンキッシュな荒々しさから洗練されたチェンバー・プログレへ音色の観点からも明瞭にシフトした。

 もう一点は佐々木が作曲に関与したこと。(2)(4)(8)(9)(10)(11)と半数近くが吉田と佐々木の共作だ。(2)のようにインプロじゃない曲も含めて。これまでワンマン・バンドだったルインズが、本作からアンサンブル面でもよりバンドっぽくなった。
 
 アレンジの面で6弦ベースを操り、MIDIで多彩な音を出す佐々木のおかげで曲想にも幅が出た。三代目増田隆一もギタリストだったが、佐々木はベースの立ち位置を踏まえながら、よりアグレッシブで多彩なベース・ラインを提示。これにより、さらにルインズはメロディアスな展開に向かった。
 ぼくがリアルタイムで聴けたのが、ちょうどこの時期。だからなおさら親しみ深い。

 佐々木が唐突に脱退してルインズは未だに吉田が後続を雇って再結成を図らない。もう15年近く。ルインズ・アローンを筆頭に、サックスルインズや増田との再結成ルインズなど周縁プロジェクトを繰り広げ、ルインズの色は残しながらも。色々理由あるんだろう。だが間違いなく、佐々木ルインズの時代の鋭さと即興の逞しさはピカイチだった。

 突発的な脱退で、いつかは佐々木のルインズ復帰があるかと思った時もあった。もはやありえないのかな。
 佐々木は今もyoutubeで緩やかに動画をアップしている。音楽から全く離れてはいないらしい。本人がルインズと関連付けを現在も望むかは不明なので、ここでIDのリンクは控えるが。

 本盤の話に戻ろう。骨太で分離の多い楽曲がずらり並ぶ。明確な作曲と、インプロっぽい奔放さが並列するのが特徴だ。(7)のように音域の高い旋律が加わったり、野太いシンセのリフが(8)で入ったり。(11)はエレピと吉田の歌声をイントロに。さまざまなドラム&ベースに留まらぬアレンジを採用した。
 ディレイやサンプラーなど機材の進歩を踏まえ、よりふくらみのある展開が二人で可能になったか。

 なおプロデュースはMagaibutsu名義。吉田のペルソナだが、あえて吉田とクレジットせぬところにこだわりも感じた。なおこの名義、Discogsによれば津山篤との赤天"参"(1996)が初。その後、10枚ほどのルインズや高円寺百景、Acid Mothers Temple SWRの盤で使われている。今一つ使われる基準は分からない。吉田と他のメンバー共同でプロデュースしたってことか。
 
 素早い場面展開と構築度高い旋律の挿抜に加え、即興の勢いも加わった。テクニカルな拍子の交換から、のちのライブで頻出するタイトル曲(13)でサンドイッチした本盤。
 ルインズの特徴である鋭利な跳躍っぷりをそのままに、パンキッシュからテクニカルな方向性へグイッとシフトした。
 すでに本盤時点で佐々木ルインズはライブを重ねていた。しかし本盤は実験と即興に軸足を置き、スタジオ録音に拘った当時の新鮮な勢いを試しに封じ込めた盤と感じる。
 積み重ねたライブ・アンサンブルを踏まえた、より強固なと楽曲の結晶は次作"Pallaschtom"に譲った。

Track listing:
1 Snare 1:15
2 Warrido 5:15
3 Ffenniko 4:30
4 Beguotto 2:51
5 Kpaligoth 4:00
6 Dagdad 0:55
7 Zumn-Vigo 5:35
8 Savollodix 3:34
9 Quopern 3:32
10 Laipthcig 2:04
11 Jarregoh 6:21
12 Liarikoschodel 4:13
13 Vrresto 6:36

Personnel:
Bass [6 String], Electronics [Midi Controller], Vocals:佐々木恒
Drums, Percussion, Vocals,Mixed By, Photography, Artwork By:吉田達也

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