Mike Rutherford 「Smallcreep's Day」(1980)

 幻想的ながら上品なポップさを見せる。まさに80年代ジェネシスの萌芽あり。

 "..And Then There Were Three... "(1978)のあと、ジェネシスが活動中止中に発売されたマイク・ラザフォード初のソロ。コンパクトなバンド編成でシンフォニックな展開を見せる。ジェネシスの陰りある和音がそこかしこに感じられ、なおかつフィル・コリンズでないドラムのため、やたらどたばたの16ビートで押すこともない。
 プログレ寄りなポップ・ジェネシスの味わい漂う面白い盤だ。

 A面は組曲、B面で個々の楽曲と2面性をみせた。ギターが効果的なイントロを刻む(2)もあるが、サウンドの主体はシンセサイザー。ラザフォードはベース演奏でアルバムを支えた。
 ギター・ソロが響く場面も、音色はシンセ・ストリングスと混ぜられシンセ・ギターめいた硬質な音色になってる。

 そこかしこで聴ける、シンプルなフレーズの鍵盤もジェネシスっぽい。トニー・バンクスでなくラザフォード自身のセンスも楽曲に反映してたと分かる。

 メンバーは元ジェネシスのアンソニー・フィリップス他、プログレ界隈の凄腕ミュージシャンが揃った。なおアンソニー・フィリップスがギターでなく鍵盤でクレジットなのもミソ。
 のちにマンフレッド・マンズ・アース・バンドに参加のNoel McCalla(vo)。彼はゲイブリエル脱退後のボーカル・オーディションでコリンズと並び、最後まで残ったという。つまりはifのジェネシスとしても本盤は楽しめるか。
 801で叩き、のちにTOTOに参加のSimon Phillips(ds)。BrandXでも演奏したMorris Pert(per)。

 リズムを強調してボーカルはゲストに任せる。遠慮深く一歩引いたラザフォードの立ち位置だ。本盤の製作を機にフロント役の立ち位置やアンサンブルについて得るものが多かったらしい。

 アルバムはPeter Currell Brownが1965年に書いた唯一のシュールレアリスム的小説"Smallcreep's Day"を下敷きにトータル・アルバムな仕上がりという。
 穏やかで影を持つムードがアルバム全編を覆う。どのていど売れ行きを気にしたんだろう。煮え切らなさを保ちながらも、解放感は意識してるようだ。
 サービス精神にあふれるコリンズとは違う立ち位置で、ラザフォードは素直に趣味性を表現した。

 ある意味、理想を追ったのかもしれない。合議制で人間関係の込み入ったジェネシスに無い、自分一人が責任を負うが自由も得られた場所で。おそらく売れ行きのプレッシャーは少なかったろう。一枚くらい、駄作を作っても許される立ち位置だ。
 手すさびの趣味性に終わらせないプライドを持ちつつ、ラザフォードは慎重に音を作ってる。
 
 即席アンサンブルながら、バンド的なダイナミズムをしっかり作ったのはさすが。プロデューサーとラザフォード、どちらの手柄だろう。
 ここにはテクニック追求のギラギラした焦りはない。もっと内省的で、なおかつシンフォニックな雄大さを持つ。うっすらメロウなニュアンスも愛おしい。それでいてキャッチーさに走らない孤高さも滲む。

 だが一方できっちり刻むドラムを据えて、安直な安楽路線には向かわない。キャリアを重ねた音楽性を、十二分に本盤へ反映した。地味目だが、充実した盤だ。

Track listing:
1 Between The Tick & The Tock 3:59
2 Working In Line 3:08
3 After Hours 1:45
4 Cats And Rats (In This Neighbourhood) 4:52
5 Smallcreep Alone 1:25
6 Out Into The Daylight 3:53
7 At The End Of The Day 5:39
8 Moonshine 6:26
9 Time And Time Again 4:54
10 Romani 5:27
11 Every Road 4:15
12 Overnight Job 5:45

Personnel:
Ant Phillips - keyboards
Noel McCalla - vocals
Simon Phillips - drums
Morris Pert - percussion
Mike Rutherford - guitars, basses
Technical
Produced & Engineered by David Hentschel of Dukeslodge Enterprises, Assisted by David Bascombe

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