Oswin Chin Behilia 「Bedishon Disrfasa」(2002)

 委細不明だが上品で素朴なキューバ音楽を楽しめた。

 アンティル諸島のキュラソー島のSSW、オズウィン・チン・ベヒーリャの97~00年作品のコンピ。02年に蘭Otrabanda Recordsからリリースされた。
 チンとはセカンド・ネームでなく愛称かもしれない。

 インターネットの普及で、あらゆる情報に触れられる気がする。だが実際はネットに上がっていない情報は膨大だ。それを忘れて、ネットに引っかからないと妙に不安になってしまう。すべてがネットを拠点に活動ではないのに。
 この人も、そんな一人。Oswin Chin Behiliaで検索しても、さっぱり文字情報が引っかからない。Youtubeではいくつか、演奏動画を見られるけれど。

 本盤は日本盤まで出た。解説によれば彼、ベヒーリャの肩書は歌手兼プロデューサー兼政治家という。どこまで本当か検索かけるも上手く引っかからない。38年生まれで18歳から、すなわち56年から活動開始という。存命なら今は79歳。
 ローカルで自主製作的に活動してたらしい。もっとも詳しいパブ記事はここ

 本盤はベヒーリャの自主製作3枚、"Troubadours of the World Singing Chin’s Compositions"(1997), "Afrikatumba"(1999),"Bunita/Mahos"(2000)から抜粋とある。
 
 全11曲。バンド風のアレンジで、Yeyo Coldron(per),Edwin Kastaneer(per),Manuel Merete(fl),Ruben Scoop(b)といったミュージシャンが伴奏を担当した。
 ギターはベヒーリャの弾き語り。曲によってJulian B.Coco(g)も弾いている。ハーモニーは自分で多重録音かな。素朴ながらトロピカルな味わいだ。
 曲によってサックスもダビングあるが、クレジットは無い。Manuel Mereteの持ち替えで無ければ、他のミュージシャンも参加してそう。

 順番が前後したが、サウンドはカリブ音楽。キューバのブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブに通じる、ほのぼのしたラテンで寛いで聴ける。歌詞はけっこうシビアようだが。
 楽曲はすべて自作。生楽器のためかシンプルなアレンジだがチープさはない。二人のパーカッション奏者が繰り出す、軽やかなリズムがノリにふくらみを出した。

 活動の全貌は不明。Amazonでは本盤を含む、数枚のカタログはあった。Amazon、恐るべし。
  

 本盤発表時点ですでにベテランの域な世代であり、特に新奇性を狙わない。ボサノヴァにも通じる穏やかな世界観を、低く伸びる甘い声で柔らかく歌った。
 地元の音楽を素直に吸収し、緩やかに自分のフィルターに通して創作していそう。

 ちなみにアンティル諸島のキュラソー島とはカリブ海にある。17世紀にオランダの西インド会社が占領をきっかけに1815年以降オランダ領となる。だが2010年にアンティル諸島は解体され、今はキュラソー島は独立自治体となっている。

 本盤が製作された2000年前後は独立に向けて色々と政治的に緊迫した時期だったのかもしれない。Wikiによれば00年に住民投票が行われ、キュラソー島はオランダから独立を志向の結果だったらしい。なおキュラソー島は444平方キロメートル。種子島とほぼ同じ、とあるがピンとこない。住民は16年1月現在で約16万人。地図はこちら。


 とにかくこの音楽、残響を深く取った歌声とシンプルなパーカッションにギターの弾き語りを軸に、ラテン風味の寛いだサウンドを楽しめる。歌詞や文化圏に踏み込んだら違う感想を持つだろう。

 王政らしいが今一つ文化圏や日常感がイメージわかない。島は緑も多いが、町はそれなりにありそうだ。文化も背景も分からず、音楽を聴いていいものか。
 あれこれ検索しながら、のどかで伸びやかなサウンドを無邪気に楽しむのに引っ掛かりを憶える。何もかにも理解は不可能だけれど。

 よくわからないから耳をふさぐってスタンスも好みではない。無邪気に礼賛は控えるが、寛いだ本盤のサウンドは悪くない。派手なテクニックやキャッチーなメロディで斬るわけではない。素朴で穏やか、しっかり芯を持ちながら優しいムードで紡がれる。
 ギターの音色はあまり響かない。むしろ大味な場面もたまにある。だが歌声は確かだ。
 マイナー調子のメロディは、昔のムード歌謡を連想した。根底にある乾いたラテンの節回しが日本的な情緒と異なり、逆に素直にぼくはこの音楽を受け入れる。異文化の音楽として。

 07年と09年の投稿動画を貼っておこう。
 

Track listing:
1 Bedishon Disrfasa 7:06
2 Sunu 2:52
3 Djente Blanku Ta Kurason 3:02
4 Marie I Juana 5:14
5 No Bandona Korsou 4:31
6 No Bai 3:04
7 Curacao Di Nos E Ta 3:42
8 Si No Ta Pe 2:33
9 Stanero Den Bo Mes Pais 3:36
10 Plegaria 3:26
11 Zona...Mi Protesta 7:08

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