Date Course Pentagon Royal Garden 「Report from Iron Mountain/アイアンマウンテン報告」(2001)

 名刺代わりとして、ポップでスタジオで煮詰めた1st。

 デートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデンの1stフルアルバム。思い起こせば焦らしに焦らされ、なおかつ「ライブに来い」と強烈なメッセージを感じる構築されたアルバムだった。
 前にも書いたが、当時も今も菊地成孔はライブとCDでコンセプトを変えている。生演奏では抜群のグルーヴと即興性を見せながら、CDでは簡単にそれを聴かせない。なおかつCDだと当時は菊地のサックスすら、容易にたっぷり聴けなかった。

 さらに生演奏のダイナミズムをシンプルに取り込まず、ダビングと編集に非同時演奏によるポリリズムへ徹底的にこだわってきた。
 聴きたい、しかし聴けない。そんな渇望感のなか発売が本盤であり、なおかつライブと全く違うトリートメントされたDCPRGを封じ込めたのが本盤だ。

 DCPRGの結成は99年あたりまでさかのぼる。11人編成で超豪華な顔触れは継続活動できるのかと思わせた。実際、かなりブッキングに苦労はしたらしいが。
 当時はライブを聴くチャンスが無く、ネットのレビューだけ読んでいた。いわゆるライブハウスの座って聴く環境から脱し、クラブで踊らせるスタイルを強引に切り開いてたころだ。
 
 初めて音を聴いたのはコンピ"タダダー!トリビュート 私服刑事"(2000)。ここですでに結成から1年たっている。収録曲は"Circle/Line~Hard Core Peace"。本盤収録より1分弱短いバージョンだ。
 菊地雅章の名は知ってたが"Susuto"は聴いたことが無く、マイルスっぽさもピンとこなかった。とにかくファンクでかっこいいなってだけ思ってた。

 次がROVOとのスプリット"全米ビーフステーキ・アート連盟"(2001)。翌月にようやく発売されたのが本盤だった。雑誌Quick Japanで特集も01年8月の38号。これを読んでから本盤を聴いたんだっけな?

 いずれにせよ、あくまで文字情報が先。1曲だけ楽曲を知って、なおかつ一ひねりのアウトテイク"全米ビーフステーキ・アート連盟"を経由して本盤につながった。しかもライブ未体験の状態で。
 ぼくが実際にライブを聴いたのは本盤の発売後、01年9月22日のこと。当時の感想はこちら。
http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Drum/1400/sound/live_010922.html

 つまり先入観が無く聴いたはず。しかしライブの印象があまりに強く上書きされ、本盤を最初に聴いたときの印象を今一つ思い出せない。

 ライブでは色んな意味でダイナミックだった。長尺でグルーヴィだった。だが本盤は冷静さがある。くっきりと整理され、きれいに飾られている。"全米ビーフステーキ・アート連盟"を聴けばわかるが、様々なテイクを取って編集を施して本盤は作られた。
 それが良い悪い、ではない。コンセプトが違う、と言いたいだけ。

 決して本盤が血の通わぬ機械仕掛けというつもりもない。菊地は本盤でライブの再現や同期を図らなかった。リザーバー扱いだったイトケンもゲストに招き、当時のレパートリーを並べ、そのうえでマルチ・リズムのポリリズムを明確に提示した。リズム・リテラシーに欠けるぼくは、分からないところも多いけれど。

 マルチ・ポリリズムの極北な(1)、活動テーマ・ソングの(4)。同時に活動してた第二期スパンク・ハッピーと連結する(3)。ライブの定番カバーとなったジミヘン(5)。
 (2)と(6)もライブで繰り返し演奏された。むやみに実験的なスタジオ作業に走ってこそいないけれど。本盤収録がDCPRGと思ったら大間違い。ライブはもっと、迫力あってノリが良くて凄かった。

 重ねて言うが、本盤が悪いとか物足りないって意味では無い。時代ならではのエッジの甘いマスタリングだけが少々もどかしいかな。リマスターしたらいいのでは。
 本盤はアドリブ要素も含まれてはいるが、かっちり明瞭にコントロールされた。危うい即興の破綻や暴走は全くない。安心純粋培養のファンクが楽しめる。隅々まで目配り効いて遊びが無い。

 象徴的なのが(1)。DCPRGのライブは即興性も魅力だった。菊地のハンドキューで楽器が抜き出されポリリズムの強調が醍醐味。けれど本盤は冗長さを嫌ったか、もっと濃密にマルチ・ビートが奔出した。

 本盤発売から既に15年以上たつのか。時間の流れの速さにくらくらくる。今も活動するdCprG、DC/PRGは新陳代謝を繰り返して、奏者も世代交代した。ポリリズムも、DCPRGの認知もしたうえで、最新型のDC/PRGを演奏してる。

 この盤の当時は違った。菊地は荒れ地を切り払って、ガラガラと地ならしの途上だった。明確なビジョンをいかに形にするか。
 結論として本盤は不穏さを取り払い、鮮やかに仕上げた。肉体的なファンクの試行錯誤をミックスと編集でクリアに整える。その結果、親しみやすくブレない傑作として本盤が産まれた。
 
 スマートなプロデュースぶりが際立つ。雑駁で混沌な要素へいくらでも針を触れるのに、ポップさを菊地は意識してまとめた。
 アルバムのそこらじゅうでポリリズムを噴出させ、リズムの多層性で空気を揺らす。しかし難解さは無い。

 これはコンパクトな一枚だ。当時のDCPRGの魅力をスピーディかつギュッと凝縮してる。しかもじっくり聴くほどに、繊細な工夫や趣向を味わえる。

Track listing:
1 Catch 22 10:00
2 Play Mate At Hanoi 12:29
3 S 10:51
4 Circle/Line ~ Hard Core Peace 16:02
5 Hey Joe 12:00
6 Mirror Balls 08:16

Personnel:
Organ [Vox-Jagar], Turntables [CD-J], Keyboards - 菊地成孔

Bass - 栗原正己
Synthesizer, Electric Piano, Clavinet - 坪口昌恭
Drums - 藤井信雄, 芳垣安洋
Guest, Drums, Tambourine - イトケン
Guitar - 大友良英
Guitar, Effects [Filter] - 高井康生
Percussion - 大儀見元
Tabla - 吉見征樹
Soprano Saxophone - 津上研太
Tenor Saxophone - 後関好宏

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