河端一 「Jellyfish Rising」(2005)

 雄大で幻想的なエレキギターのソロ。ビートは希薄なのにリズミックな性急さを常に持つ、素敵なアンビエントを味わえる。

 なぜかAcid Mothersの河端一ディスコグラフィーには未掲載だが、ブートではない。ドイツのレーベルFünfUndVierzigから発売された。84年活動開始という老舗のレーベル。Discogsによるとクラウト・ロック系らしい。本盤以外にAcid MothersがらみではAcidMothersGuruGuru"Underdogg Express"(2005)の発売もあり。

 本盤は河端が初めて多重録音でギター・ソロを発表した盤という。30分余りの長尺2曲が収められた。録音も河端自身で04年9月~10月の録音。
 
 演奏はひたすら気持ちいい。広がりある白玉と波打つディレイ・ループのようなフレーズがミニマルに広がる。細かいフレーズよりも繰り返しの脈動で音が紡がれた。単調ではない。フレーズは緩やかに新しい音に変わっていく。

 しかしあからさまでもない。瞬間を切り取れば、ふくよかで浮遊を続けるサウンドが一杯に広がっている。同じフレーズを続けてるのみかと思えば、実はじわじわ変わっている仕組み。
 人力でなくディレイ・ループを駆使に聴こえる。いくつものフレーズをミックスし構築ではなかろうか。

 (1)のほうが、演奏っぽい。変な言い方だが。(1)では細かくはじいたフレーズが繰り返され、次第に新たな音が加わる。だが音が積まれる一方でなく前のフレーズは次第に消えていき、充満する重苦しさはない。
 すっきりした感じを維持しつつ、残響を背後に仕込んで奥行きはたっぷり。こちらは即興的なフレーズをその場でどんどん足したかのよう。
 終盤に向け、どんどんスペイシーで混沌な風景が高まっていく。小節感は希薄だが、フレーズの持つノリが常にグルーヴを作った。

 (2)は逆に持続と酩酊に軸足を置いた。細かいフレーズよりループと白玉が持つ、奥深い懐深さをたっぷり描く。ストロークが繰り返され小節感を作る。こちらもリズム要素はないが、ループが性急なビート感を持つ。
 そう、本来ならばもっとゆったり聴くこともできる構造だ。だがぼくはどうも本盤を前のめりに聴いてしまった。
 フレーズの繰り返しに4拍子を取ってしまい、波打つ幻想的で広がりある世界には寛ぎよりも神秘的な畳みかけを感じる。
 特に20分以降のシンフォニックめいた伸びやかな響きは極上だ。エレキギターの多重録音にもかかわらず、残響や音色が大編成のオーケストラとコーラスによる演奏かと見まがう。
 
 ドラッギーな酩酊にも通じるアレンジながら、この盤は非常にクレバーで冷静だ。自分の音に酔いすぎず、沈着に音像を意識し単調さを注意深く避けている。
 ほぼ即興的な作曲と思うが、どこに行くか分からぬ不安定さは皆無。どっしり安定した音宇宙を存分に味わえる。

 テクニックやフレーズではなく、響きと構築性の妙味で楽曲を作った。素晴らしく心地よい。

Track listing:
1 Astral Aurelia Aurita Laavarek 28:05
2 Meditation Of Pelagia Panopyra Peron 27:16

Electric Guitar, Composed By, Producer, Engineer:河端一
Recorded at Acid Mothers Temple Sep-Oct. 04

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