Red Garland 「Red alone」(1960)

 武骨なロマンティシズムが滲むピアノ・ソロ。

 プレスティッジのサブレーベル、ムーズヴィルの第三弾で発売された。今は別ジャケットの再発がCDとデジタルで色々あり。最後のものは当時のムーズヴィルやスウィングヴィルでリリースされた音源をまとめて聴ける廉価ボックス。
   
 レッド・ガーランドが膨大な録音を残したのは55年~58年頃まで。マイルス・バンドへの参加やコルトレーンと共演など多数の収録がある。
 本盤の60年は少し落ち着いた、とはいえ年に数枚のリーダー作は出した頃合い。ジャズが若干下火になりつつある時代、だったのだろうか。当時の時代背景が知りたい。

 この時期はプレスティッジと契約し、様々な盤を吹きこみながらも音楽的な主張は読み取りづらい。流されるまま、次々と仕事をこなしてるかのよう。実際、どのくらいいわゆる熱意があったのか。最終的には本人しかわからないところだが。

 本盤は1960年4月2日の録音。これまたムーズヴィル用の音源な前作"The Red Garland Trio + Eddie "Lockjaw" Davis"が年末、数ヵ月ぶりのレコーディングか。ディスコグラフィーによると、この4月2日には16曲を録った。まず本盤が第三弾。そして第十弾"Alone With The Blues"として双方とも60年に発売された。

 お仕事、だったのではないか。お仕着せのパッケージとムーディなイメージ戦略に包まれることが決まっていたために。おそらく夜に酒を飲むBGM的な目的に販売を狙ったと思われる。今となっては文字だけのムーズヴィルのジャケットは、それはそれで格好いいのだが。
 本盤は全曲、他人の作品。個性はいらない、スマートさがあればいい。そんな程度のテンションだったのではないか。

 ガーランドが本盤で手を抜いてるとは思わない。ところどころ、無造作に弾いてるっぽいところもあり。しかし根底は武骨に淡々と鍵盤が鳴らされた。タッチは柔らかい。しかし繊細ではない。
 本盤を機に世界を変えてやろう、みたいな気負いはなかったろう。かといって適当に流しては仕事がなくなる。そんな振り幅を本盤に聴き取ろうとしてしまう。

 気を抜いた適当な演奏でも、名演は名演。音が出てきた瞬間に、それは奏者と別の価値観が音楽に付与されるのだが。

 たぶん今のぼくは疲れてるんだろう。この盤を聴きながら、素直にロマンティックな世界に浸れない。どこかとげとげしいリアルの痕跡を探してしまう。
 
 素直に耳を傾けたら、本盤は美しい。流麗すぎないタッチが、逆に素朴で煙ったダンディさを演出した。例えば(5)。切なく高まるエリントンのムードが、心を柔らかくえぐる。
 ガーランドは本盤で壊れそうなギリギリを攻めない。暖かく丁寧に音をのせ、じんわりとグルーヴさせた。ムーズヴィル用の音源だけあって、激しいテンションは皆無。隙もつくる。
 スタンダードを崩しすぎず、個性に走らず。心地よいぬるま湯を披露した。メロディとアドリブがいい塩梅に混ざってる。ピアノ・ソロならではの小宇宙を堪能できた。
 きっちりと素晴らしい仕事。見事な職人芸、だ。

Track listing:
1 When Your Lover Has Gone 6:41
2 These Foolish Things 5:04
3 My Last Affair 3:36
4 You Are Too Beautiful 4:42
5 I've Got It Bad (And That Ain't Good) 7:06
6 The Nearness Of You 5:01
7 Nancy (With The Laughing Face) 5:21
8 When I Fall In Love 5:05

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