Colin James Hay 「Looking For Jack」(1987)

 新境地を狙った五目味のソロ1st。勇み足な部分もあるが後の萌芽もしっかり。

 メン・アット・ワークを解散は86年とある。大傑作だった"Cargo"(1983)と裏腹に、なんとも迷走で悩ましい"Two Hearts"(1985)をリリースのあと。作曲の主軸を担ってたコリン・ヘイは本盤で生き延びを図るべく、ソロ活動を始めた。
 大手コロンビアと契約を図れたのはメン・アット・ワークの実績を買われてだろう。しかし、ヒットしなかった。

 今聴いても、ニューウェーブっぽさからカントリーまで無闇に幅が広い。根底に沈むヘイのカントリー風味は感じ取れるし、なにより瑞々しいメロディが詰まった曲群は魅力的ながら。
 思えばメン・アット・ワークのキャリアそのものも、レゲエ風味の軽やかなオージー・ロック路線から楽曲至上主義に向かいきれず、方向を見失った。いきなり大ヒットしての戸惑いもあったろう。

 少なくとも本盤で、ヘイは作曲に気を使っている。若かりしゆえのハイトーンが(2)で聴ける。きらきらと軽いギターのカッティングに引かれたアレンジは、AORと言うには尖った箇所もあり。むしろリンガラとかアフリカ風味に寄ってそうなムードすらあり。

 ただ、バンド・サウンドではないな。ずしんと鳴る今では古臭いドラム・サウンドが現れたり、ホーンをかぶせたり。楽曲ごとに音像を少しづつズラシて統一イメージは作らなぬようにしたっぽい。

 プロデュースに管と弦のアレンジはRobin Millarが配置された。多数のスタジオ・ミュージシャンを招いたつくり。
 なぜかハービー・ハンコックの名もクレジットあり。どういう話題性だろう。

 リンダ・ルイスがコーラスで参加。うおっと思うが、これまた単なるお仕事。
 チェロにはペンギン・カフェ・オーケストラのHelen Liebmannも。Noel McCallaはマンフレッド・マンズ・アース・バンドへ本盤のあと91年に参加する。

 Russell Hitchcockはエア・サプライのボーカル、Robbie McIntoshはプリテンダーズのギター。ドラムにはザッパ・バンドでならしたチャド・ワッカーマンの名もあり。
 Paul "Wix" WickensやAshley Maherとソロ作を何枚も出すSSWだ。
 やたら綺羅星。しかし脈絡や必然性はない。単にスタジオ・ミュージシャン的に参加してるだけ。この辺が無駄遣いだ。

 だが楽曲は地に足がついている。その後にセルフカバーするタイトル曲(3)を筆頭に曲の粒は揃った。ヘイの力がこもったアルバムなのは間違いない。
 惜しむらくはメジャーから出たがゆえに、廃盤が続く。今もヘイは現役で充実した活動をしてるけれど、インディ主体がゆえに本盤までビジネスの視点が届かない。
 
 アコースティックや簡素さをのちにヘイが選んだのは低予算って側面もあった。しかしピンチを音楽性に昇華してヘイは見事に復活してる。その耳で本盤を聴き返したら、さすがに豪華なアプローチへ戸惑う場面も。

 だが何度も言うけれど、曲は粒ぞろい。デジタル配信も無い廃盤で、このまま埋もれさすには惜しい盤だ。今となってはアレンジが古臭く、一見には魅力が伝わりにくい。ファン向けの盤なのは否めないが。


 いずれにせよヘイは本盤の出来と失敗したセールスを元に、もう一度冷静に地固め。
 3年後に英国ルーツを思い切り踏まえた傑作、"Wayfaring Sons"(1990)で捲土重来を図る。あいにくこれまたセールスには苦労したようだけど。

Track listing:
1 Hold Me 4:11
2 Can I Hold You? 3:36
3 Looking For Jack 4:11
4 Master Of Crime 4:56
5 These Are Our Finest Days 4:10
6 Puerto Rico 4:30
7 Ways Of The World 4:06
8 I Don't Need You Anymore 3:05
9 Circles Erratica 4:04
10 Fisherman's Friend 5:33

Personnel:
Colin Hay - acoustic guitar, guitar, electric guitar, keyboards, vocals, 12 string guitar, Synclavier
Jeremy Alsop - bass, keyboards, synthesizer guitar
David Bitelli - baritone saxophone, tenor saxophone
Mike Brittain - double bass
Raul d'Oliveira - trumpet
Herbie Hancock - piano
Ginya Joseph - vocals
Chris Laurence - double bass
Joe Legwabe - vocals
Dee Lewis - vocals
Linda Lewis - vocals
Helen Liebmann - cello
Martin Loveday - cello
Ashley Maher - vocals
Noel McCalla - vocals
Russell Hitchcock - vocals
Robbie McIntosh - guitar, electric guitar
Morris Michael - vocals
Robin Millar - keyboards
Nicky Payne - tenor saxophone
Nick Pentelow - tenor saxophone
Rufus Sefothoma - vocals
Steve Sidwell - trumpet
Richard Taylor - trombone
Rick Taylor - trombone
Chad Wackerman - percussion, drums
Paul "Wix" Wickens - organ, Hammond organ

関連記事

コメント

非公開コメント