Van Halen 「5150」(1986)

 栄光を掴みクリーンなハード・ロックに寄った盤。あえて、栄光と言おう。ものすごくなだらかな下り道の始まりでもあった。

 ヴァン・ヘイレンは"Jamp"(1983)で知った。あと、マイケル・ジャクソンの"Beat it"で。中学で洋楽を聴き始めた頃合い。キャッチーなシンセのフレーズで始まり、ソロでライトハンドをにこやかに弾きまくるエディのおっとりした表情と、荒々しくも胡散臭くワイルドなデイヴ・リー・ロスの対比も強烈だった。
 ハードロックの何たるかも知らない時代、演奏風景を編集しただけのシンプルながら効果的なPVも含めて、ヴァン・ヘイレンは分かりやすく中坊の耳に突入してきた。
 そしてキャッチーな"パナマ"も大好きな曲だ。

 大成功と裏腹にバンドは解体。デイヴが割ってソロをはじめてしまう。なぜビーチ・ボーイズ、と思うカバーを筆頭に幅広い曲想のミニ・アルバム"Crazy From The Heat"(1986)を経て、ドリーム・チームのバンドを結成。既にザッパで見知ってたスティーヴ・ヴァイの参加に驚喜した。
 したたかなハード・ロックなソロ第一弾"Eat 'Em And Smile"(1986)より、わかりやすくヘルシーなヴァイの才能が炸裂した第二弾ソロ"Skyscraper"(1988)のほうが親しみやすく、武道館までライブ見に行ったっけ。
 
 本盤はデイヴのソロ第一弾、"Eat 'Em And Smile"と同時期にリリースされた。ビジュアル的にわかりやすいデイヴに比べてヴァン・ヘイレンの方は高校生にとって地味だった。

 そのためヴァン・ヘイレンの方はあまり惹かれず。そもそもモントローズを知らない。小林克也のBEST HIT USAで流れたHSAS"Through The Fire"(1984)に参加って文脈でサミー・ヘイガーをかろうじて知ってたものの、なぜそんな名の売れた人を入れるんだと思ったっけ。
 
 本盤を通して聴くのは久しぶり。シングルの"Why Can't This Be Love"は当然、ラジオで耳にしてた。あとサビの"Dreams"は知ってたな。あと"Love Walks In"も記憶にあり。
 象徴的なのはどれもシンセが鳴ってること。
 エディはギターのヴァーチュオーゾでありながら、"Jamp"でのヒット・パターンから逃れられなかった。レコード会社の圧力かもしれないが。
 せっかくのアンサンブルなのに、なぜギターで押さないのか。それがもどかしかった。

 改めて聴いても、サミーの歌声は伸びやかな一方で癖が無い。ほんのり高音で揺れるニュアンスとしての特徴はある。だが下世話でエンターテイナー路線のエディに比べたら、さらにヘルシーでおっとりさが漂う。
 要はぼくはもっと非日常性をハードロックに求めていたのだろう。ぼさぼさの髪型でひらひらの揺れる服を着て豪快さを求めるのに、シェイプアップやトレーニングの地道さは似合わない。

 逆に本盤でヴァン・ヘイレンはきれいに脱皮した。1stでの燃え立つようなギター・ソロ、丸太を振り回すようなパワフルさから洗練されたBGM路線に向かった。
 結局はリズム隊か。時々シンセ・ドラムが入るのはご愛敬。アレックスの力任せに叩きのめすシンバル・ワークと、生真面目なマイケルのベースが作るリズムは、シンプルに跳ねる。

 ぴったり張り付くピッチの合ったハーモニーも併せて、演奏はすごく整いながら生真面目だ。そのまっすぐなビートへ、エディのギターが奔放に揺れて絡みグルーヴを出している。
 大音量で流すほどに理屈抜きのテンション上げができそう。しかしやっぱり、デイヴのけれんみあるシャウトのほうが好きなんだな、ぼくは。"Love Walks In"なんてデイヴのほうが味わい深く歌えたのではなかろうか。

 とにかくこの盤は売れた。シングルヒットが5曲。しかし"Jump"ほどの破天荒さには及ばなかった。
 ドーム・クラスの大会場で映えるスケール大きな曲ばかり。しかしデジタル・シンセの硬質に伸びるシンセのイメージが、どんなにエディのギターが吼えてもお仕着せめいた堅苦しさを感じてしまう。ヴァン・ヘイレンってブランドを抜けば、良いアルバムと思う。皮肉なことに。

Track listing:
1 Good Enough 4:00
2 Why Can't This Be Love 3:45
3 Get Up 4:35
4 Dreams 4:54
5 Summer Nights 5:04
6 Best Of Both Worlds 4:49
7 Love Walks In 5:09
8 "5150" 5:44
9 Inside 5:02

Personnel:
Sammy Hagar - lead and backing vocals
Eddie Van Halen - lead guitar, keyboards, backing vocals
Michael Anthony - bass guitar, backing vocals
Alex Van Halen - drums, percussion

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