Prince 「C-Note」(2004)

 ライブと即興にこだわり、色んな意味を込めたミニ・アルバム。配信でいいから容易に聴ける発売を切に請う。

 02年、プリンスが自らのWebなNPG Music Clubから配信限定で発売のライブ・アルバム。2015年にTidal配信でも発表された。ブートでは音盤化もあるが、いまだCDでの公式リリースは無い。

 音源は02年3月1日から同年11月29日まで断続的に行われた One Nite Alone... Tourでの後半レグ、欧州と日本公演での観客を入れたサウンドチェック公演からの収録。基本はインストで最後に"Empty room"が収められた。
 収録時間は30分ほどと短い。初期プリンスのLPならば同じような収録時間もあったから、アルバムと考えたら違和感はないが。

 さまざまな意味が込められたアルバム。タイトルのC-Noteは100ドル札のスラングで、ネットに流布するジャケットもそれを模したもの。5曲入りでコペンハーゲン、名古屋大阪東京に"Empty room"の頭文字を取るとタイトルになる。
 
 さらにこんな動画を見つけた。

 最後に収録されたキー・トラック、"Empty room"のコード進行はC# A F#mだという。ならばシャープが付いたとはいえ、"Empty room"の和音にも引っ掛けたのかもしれない。

 さらに。さらにさらに。"C-Note"。シーノオト。シーの音。日本語でもC-noteは同音同義語になる。これを面白がったプリンスが、日本語の意味も込めて後半音源は日本公演から選んだのではないか?!!・・・まあ、これは冗談。

 とにかくほとんどが日本公演からという、ナショナリズムを妙にくすぐる選曲になった。演奏はセッション一発のジャムが続くため、まあマニア向け。プリンスはエレキギターのみを担当かな。

 単にライブ音源を並べただけでなく、汚しのSEなども加えてあるていどの統一性は施した。"N.E.W.S"(2003)とは異なり、ライブ音源にオーバーダブは施してなさそう。

 完全即興でなく、キーだけ決めてソロ回しではないか。ファンク寄りのセッションが続く。プリンスのエレキギター・ソロを楽しめるが、いわゆるキメが多いインストをびしばしってタイプではない。スムース・ジャズと評したサイトも見かけたが、むべなるかな。
 
 ただし。本盤は"Empty room"を収録の観点で大きな意義がある。この名曲を埋もれさすには惜しい。
 もとは85年に録音され、さらに92年にも再録。そして02年に本盤。2014年には3rdyeygirlでもキーを変えてリハーサル音源がYoutubeで公開された。


 10年おきぐらいにプリンスはこの曲を世に出そうと練り直してる。気に入った曲らしく、02年以降にライブで幾度も取り上げてきた。もし存命なら改めてリリースの目があったかもしれない。"Purple Rain"デラックスの未発表曲集へ収録も期待してたが、ちょっと録音時期が合わないんだよな。


 アルバム全体を覆うのは薄いファンクネス。そして最後に切なくもロマンティックな"Empty room"がブチかまされる。ファルセットから地声へ。高らかに鳴る歪んだ音色のギター・ソロ。それこそアンセムになりうる曲だった。しかしライブを聴いたファン以外にはさほど知られず、埋もれてしまってる。
 
 前半のインスト集は寛いだ趣き。ライブ本編でのヒリヒリしたスリルや構築美、アフターショーでの発散した開放感や自由さとも違う。本編に向けプリンスからの緊張がバンド・メンバーにあるとしても、まさにサウンド・チェック。
 本来のショーでなく、観客サービス。指慣らしの奔放さと、無造作なアドリブが不思議な緩やかさを出した。

 つまり本気でぐいぐい熱いソロを提示するほどはじけない。けれど本番を控えてダレてもいない。そんな微妙なバランス感覚のセッション集だ。
 楽曲によってテンポやムードが異なり、わずかな不穏さがアクセント。自由に音を遊ばせる楽しさでアルバムを進行させ、最後はきっちりと楽曲で締める構成のアルバムだ。

 マニア向け、ではある。しかしこのまま廃盤にはなって欲しくない。
 
Track listing:
1 Copenhagen 10:07
2 Nagoya 8:53
3 Osaka 5:53
4 Tokyo 5:09
5 Empty Room 4:01

Personnel:
Prince - guitars and vocals
Rhonda Smith - bass
John Blackwell - drums
Renato Neto - keyboards
Candy Dulfer - saxophone
Eric Leeds - tenor saxophone and keyboards
Greg Boyer - trombone
Maceo Parker - saxophone

25. 10. 2002 at Falconer Salen, Frederiksberg (tracks 1 & 5)
18. 11. 2002 at Nippon Budokan, Tokyo (track 4)
28. 11. 2002 at Osaka-jou Hall, Osaka (track 3)
29. 11. 2002 at Nagoya ICC: Century Hall track 2)

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