no.9 「http://9-9-9-9-9.com」(2009)

 Webの栄枯盛衰をしみじみ実感する一枚。サウンドは小粋で多彩だ。

 城隆之のソロ・プロジェクトno.9。本作が8thかな。web連動企画で、アルバム・タイトルのサイトへ接続すると、映像やライブ映像、スライドショーや未発表曲での音楽映画が見られたらしい。
 ・・・らしい、ってのは既に2017年6月現在、Webが閉鎖されているため当時の様子が伺えないからだ。ぼくはリアルタイムでなく、後追いでつい最近に本盤を聴いてるから、こんなことになる。

 帯には「このアルバムは未完成です。音楽だけでは未完成なのです」と書かれている。・・・虚しい。せっかくの企画、Webと込みで聴きたかった。インレイによれば、右クリックを4回すると曲を識別するという。すなわち楽曲ごとにBPMが変わってる。
 もちろんそれを感じさせるほど、安直な構成はしていないのだが。
 最終曲はPCのキーボードに音色がアサインされ、曲に合わせて音を足すって試みもなされたらしい。面白そうじゃないか。

 楽曲自体はもちろん、Webに繋がらなくとも楽しめる。未完成ってのは言葉のあや・・・ってことにしとこう。
 4つ打ちテクノからアンビエント、エレクトロニカからサウンドコラージュ風、ミニマルなテクノまで幅広い。音数やメロディアスさもまちまちで、オムニバス盤を聴いてるようなバラエティぶりである。
 
 電子音と生演奏のバランスも曲によって工夫された。打ち込み一辺倒でなく、生演奏による「no.9オーケストラ」なる楽団も収録された。
 Webが残っていればなあ・・・。レーベルなりが管理するドメインなら当然に維持費が発生する。資本主義の鉄則、いつまでもあるとは思えない。

 Webが一般化してきた90年代末期は、なにもかにもがWebにある気がした。だが個人サイトが勃興し、つぎつぎ閉鎖されていく。意図的に、もしくは放置され運営サーバーごと、Webのデータは次々消えていく。無限でも永遠でもない。
 確かにいったんネットに流れた情報を、意図的に消すことが叶わないこともある。注意深く個人情報なんかは扱わなくてはいけない。

 けれどエンターテイメントの世界は栄枯盛衰、次々に生まれては消えていく。残されたものは記憶をたどるしかない。デジタルのクッキリした世界を語るにもかかわらず、思い切りアナログな記録に頼るしかない。

 本盤の音楽は切なさと冷静な視点が交錯する。音楽性も楽曲ごとにまちまちで、聴きやすい爽やかなムードは通底するが、アイディアやアプローチに統一性はない。
 無邪気で無機質に心地よいサウンドが並ぶ盤。そんな音像を聴きながらふと、ネットの無常さに心奪われてしまう。なまじ音楽に強烈な自己主張がないだけに。

 本盤のサウンドはWebのコンテンツを楽しむためのきっかけか。BGMか。no.9の音源はろくに聴いたことないが、あまりにも耳に優しく心地よい一方で、毒やスリルが少ない。
 するするとこの盤の音楽は耳に滑り込んでいく。どの曲も、全く違った方法で。

Track listing:
1 Urban Nature 5:33
2 Will 5:00
3 Hikari Sasu Michi E 5:10
4 Flower Shop 4:00
5 Tomorrow Land 6:53
6 Re: Bug Beats 6:39
7 Auto Tech 3:38
8 Last Song (Album Version) 8:00
9 Melodion 6:30

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