Elvis Costello and the Attractions 「Get Happy!!」(1980)

 勢いあるバンド・サウンドが詰まったポップ・アルバム。このあと、少しずつエルビス・コステロは軋み始める。

 全20曲。積み重ねられた古レコードでレーベル部分がかすれたさまを表したジャケット・デザインも含めて、60年代のロックンロールやR&Bにどっぷり影響受けたさまを、無造作に表した。
 パンクやパブ・ロックの時代背景を踏まえながら、コステロが惚れたのはアメリカ音楽だった。カントリー要素を出すのはこの次の次、"Almost Blue"(1981)まで先に延ばす。
 
 ・・・って、リリース年度で見たら翌年か。振り返ると、この時期のミュージシャンにとってスピード感は今の比でない。本当に次々とアルバムとツアーに明け暮れてたと痛感する。

 本盤はアトラクションズとして充実したアルバムだ。アンサンブル自体が、4人でシンプルかつ強固に出来上がっている。とにかくぶいぶいと唸るベースが強力だ。
 ドラムや鍵盤、そしてコステロ自らのギターを、ベースが剛腕で支えてる。
 歌いながらのギターだから、それほどテクニックにコステロは走らない。のちに存在感を増す鍵盤も、ここでは一歩引いて伴奏に控えてる。だからなおさら、しっかり低音が自己主張した。
 やたら硬く仕上げず少しエッジの甘いベースが魅力的。

 全20曲。多作なコステロの作曲パワーも炸裂した。本盤までのひとひねりは少し抑え、一つのアイディアでスルリと曲に仕立てた感じ。ライブ感を生かして、次々に録音したかのよう。

 カバーのセンスも良い。スローをアップに仕立てたサム&デイヴ"I Can't Stand Up For Falling Down"のアレンジが見事。
 オリジナルがTony Colton And The Big Boss Band"I Stand Accused"(1965),同年カバーのThe Merseybeatsのカバーを参考と言われる(19)もスピード感ばっちりだった。

 この盤では全編に焦るようなスピード感にあふれてる。これだけ多い曲を詰め込んだのも、オールディーズ感を出す目的だろう。切なく熱い(20)のようにバラードや、ミドル・テンポでしっとり来る曲もあり、決してアップテンポ一辺倒ではない。
 けれどもアルバム全体のイメージはとにかく性急で慌ただしい。そして甘酸っぱい。メロディもアレンジが生み出す音像も、ひねりより瑞々しいふくらみがある。

 2~3分のロックを、60年代のシングルが持つパワーを無理やり封じ込めた。録音もほぼ一発録りではなかろうか。クリック聞きながらジャストに打ち込んだとは思えぬノリがそこかしこにある。もっともこの時代、テクノが一般化の前だしクリックそのものが普及してなかったか。

 コステロは一気に本盤でレパートリーを増やした。たて続けにデビューからリリースを重ね、なおも満足せず。
 さらにリリース上は同年にレア曲集"Ten Bloody Marys & Ten How's Your Fathers"も発表。翌年には"Trust"のリリースに至る。

 だが後年の話によれば"Trust"(1981)は最もドラッグに逃げてた時期という。続く"Almost Blue"(1981)はリハビリのごとくカントリー世界へ地味に向かった。
 逆に"Imperial Bedroom"はジェフ・エメリック、"Punch The Clock"(1983)はクライブ・ランガー、"Goodbye Cruel World"はランガーに加えアラン・ウィスタンレー。売らんかなに走り、売れ行きはともかくアルバムの出来栄えは迷走なとこも、ちょっぴり。
 
 "King Of America"(1986)で仕切り直し、"Blood & Chocolate"でアトラクションズと決別。
 さらに数年の充電期間を踏まえて"Spike"(1989)に。コステロはが体勢を整え直すのに、81年から86年、もしくは89年までかかった。
 そんな悩ましい時期に向かう寸前。パワフルで生き生きしたバンド・サウンドを素直に紡ぎあげたのが本盤だと思う。

 この盤は溢れ出る創作力が、そこかしこに感じられる。そしてずっしりしたリバーブ感が、秘めた力を表現した。若さに加え、成熟する分別が粗削りにみせて緻密なアンサンブルと構成力を本盤に与えている。



Track listing:
1 Love For Tender 1:58
2 Opportunity 3:10
3 The Imposter 1:56
4 Secondary Modern 1:58
5 King Horse 2:57
6 Possession 2:00
7 Man Called Uncle 2:17
8 Clowntime Is Over 2:58
9 New Amsterdam 2:10
10 High Fidelity 2:27
11 I Can't Stand Up For Falling Down 2:05
12 Black & White World 1:54
13 Five Gears In Reverse 2:30
14 B Movie 2:04
15 Motel Matches 2:24
16 Human Touch 2:28
17 Beaten To The Punch 1:47
18 Temptation 2:32
19 I Stand Accused 2:19
20 Riot Act 3:36

Personnel:
Elvis Costello – vocals, guitar, organ on "Possession", all instruments on "New Amsterdam"

The Attractions
Steve Nieve – piano, organ
Bruce Thomas – bass, harmonica on "I Stand Accused"
Pete Thomas – drums

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