Chicago 「Chicago 16」(1982)

 新要素で栄光を取り戻した。ポップだがシカゴの流れでは大きく変わったキュートな盤。

 ブラス・ロックで大ヒットを飛ばしたデビュー期から低迷に入り数年間。デビッド・フォスターを起用し分厚いシンセを導入で、4年ぶりに大ヒットを飛ばしたのが本盤。
 今とは違う。当時のリリース・ペースでの4年間は、ものすごく長かった。
 本来はブラスな生演奏の魅力だったはずなのに。骨太のロック・・・ってスタンスは"If You Leave Me Now"(1976)で変わってたかもしれないが、それでもフォスター肝入りの甘いポップスで売れたのは、このあとのシカゴの路線に大きな分岐点を与えた。

 ぼくはたまたま、変なタイミングで本盤を聴いた。ぼくが洋楽聴き始めた中学の時、この盤がヒットしてた。そしてFMステーションを買って夜6時にこの曲を聴き、夜9時に別番組でシカゴの1stから数曲を聴くって体験をした。つまり両極端へ同時に触れた。
 しかも洋楽が何たるものか、全く分かってない状況で。だから素直に双方を受け入れ、そして聴き進めるにつれ本盤がシカゴの歴史で特異な位置と実感した。
 
 だからこそ、本盤は聴き返すたびに印象が変わった。そして何十年もたった今。本盤は確かにフォスターの過剰プロデュースではあるが、決して根幹はブレていない。ブラス音色のシンセが高らかに響くが、それらは生の管楽器へ置換が可能。あくまでフォスターは音色としてアレンジにシンセを導入していた。

 楽曲としてメロウなシングルだったのは確か。けれども威勢のいいブラスが賑やかに解き放たれる魅力は本盤の別曲には詰まってる。さらにホーン隊の和音感もシカゴ流だ。
 作曲クレジットを見ると、シカゴのメンバーが参加してないのは"Waiting for You to Decide"のみ。そのわりにこの曲も、シカゴっぽさからブレてないのが面白いところ。
 本盤でロバート・ラムに変わり仕切ったピーター・セテラの手腕が冴えた。

 ちょっと煙った和音感のブラス。ハイトーンをきれいに伸ばすボーカル。歯切れ良いリズム感。従来のシカゴ・サウンドは見事に本盤で生き生きと弾んでる。
 たしかにフォスター流のシンセ音色はうざったい。だがこれを頭で生ブラスに置き換えたら、ちょっと小粋な昔ながらのシカゴ・サウンドに早変わり。そう思う。

 ちなみにこの盤でフォスターのアレンジとシカゴ要素が見事にハマったのは"Follow Me"だと思う。B面1曲目。エレキギターの重たいリフと、華やかなブラスが盛り上げていく。
 エレピの刻みやシンセのオブリが入るけれど、決して邪魔しない。クレジットを見ると、フォスターとジェイムズ・パンコウの曲だ。この路線で一枚仕上げたら。具体的にはヒット曲の"Hard To Say I'm Sorry"と"Love Me Tomorrow"を外したら。
 この盤は凄く骨太になったと思う。売れなかったろうけどさ。

 本盤の冒頭、"What You're Missing"も大好きな曲。シンセがフェイドインで高め、ギターが炸裂する。思い切りカッコいい。古くからのシカゴ・ファンにとっては噴飯ものとしたって、予備知識のない中坊には思い切りグッと来た。

 アルバム収録の他の曲も、AOR路線に盛り上がる大人な破綻の無さを見せながらも、まっすぐに跳ねる金管の音色がむしろ青臭さを演出した。ウォルター・パラゼイダーが木管を担当とはいえ、どうもこの盤では金管のほうが印象に残る。

 演奏面でシカゴはすべてを行える立場にいたが、フォスターはあえてTOTOなどスタジオ・ミュージシャンを入れてサウンドに多様性を導入した。
 結果論として本盤はシカゴの復活につながった。新たなマーケット、その時点の若者を取り込むコンセプトは大成功したと言える。

 それにしても旧来のシカゴ・ファンとの断絶はどうだったのだろう。あまり深く考えず、受け入れたのかな。教条主義に聴く日本の洋楽ファンと異なり、もっと無邪気にアメリカでは評価してたのかもしれない。うるさ型の評論家やマニアは横に置いて、日常に音楽を聴く人たちにとっては。

 なお本稿を書くにあたりWikiを見てたら、オリジナルの盤とライノの再発ではテイクが違うらしい。
 ライノ盤では"What You are Missing"と"Love Me Tomorrow"はシングル・テイクに差し替え。"Love Me Tomorrow"はエンディングが削除版とある。シカゴとしても、発表当時とリイシュー時点で価値観が変わったのかな。
 下にリンク貼った2010年のリイシュー盤だと、シングルとアルバム・テイクの双方が一枚に収められてるようだ。 


Track listing:
1 What You're Missing 3:29
2 Waiting For You To Decide 4:07
3 Bad Advice 2:58
4 Chains 3:24
5 Hard To Say I'm Sorry / Get Away 5:04
6 Follow Me 4:54
7 Sonny Think Twice 4:01
8 What Can I Say 3:48
9 Rescue You 3:58
10 Love Me Tomorrow 5:02

Personnel:
Chicago
Peter Cetera - bass, acoustic guitar on "Hard To Say I'm Sorry", lead & background vocals, BGV arrangements, rhythm arrangements
Bill Champlin - keyboards, guitars, lead & background vocals, BGV arrangements
Robert Lamm - keyboards, background vocals
Lee Loughnane - trumpet, flugelhorn, piccolo trumpet, background vocals
James Pankow - trombone, horn arrangements
Walter Parazaider - woodwinds
Danny Seraphine - drums, rhythm arrangements

Additional personnel
David Foster - keyboards, rhythm arrangements, additional horn arrangements
Chris Pinnick - guitar
Steve Lukather - guitar
Michael Landau - guitar
David Paich - synthesizer
Steve Porcaro - synthesizer programming
Jeremy Lubbock, Peter Cetera & David Foster - string arrangements on "Hard To Say I'm Sorry" & "Love Me Tomorrow"
Gerard Vinci - concertmaster

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