Terry Riley 「A Rainbow in Curved Air」(1969)

 人力ミニマルで精神世界を繊細に追及した一枚。

 ミニマル四天王のテリー・ライリーが初期に発表した傑作。カーブド・エアーのバンド名はここからとられたそう。
 ぱっと聴いて感じるのはミニマルといいがたい揺らぎ。全く同じ音型が続くように見えて、人力演奏の震えが全編にわたる。

 機械仕掛けで無機質なフレーズが延々続くパターンではない。高度なテクニックで正確無比に同じことを執拗に繰り返す方向ではない。
 本盤、特にA面はハイテクニックのスピード感をそのままに、同じ音像と音型でひたすら内省的にフレーズを追求した。

 鍵盤、サックス、打楽器とすべての演奏をライリーが多重録音した。和音感を一定に、展開せず淡々と(1)は高速フレーズが立ち上る。瞑想もしくは酩酊さもなくば忘我。インド的な精神世界の追及と、我を捨て心を広く大きく広げるような爽快さと、ドラッギーな危うさを両立させた。

 ひたすら同じ音が続くようでいて、実は細かく音列や構成は変化している。色合いを単一にしながらも、彩度や明度は変わり続けた。この単調でいてスリリング、なおかつ高速フレーズの応酬なスリルがたまらなく心地よい。特に本盤はA面の爽快感が格別だ。

 一転してB面はアッパーなA面と対照的に静かなムードに向かう。とはいえ沈鬱ではない。性急できらめき落ち着きないA面ほど、慌ただしくないだけ。
 じんわりとフェイドインで広がるさまは、やはりアジア。ピッチが揺らぐ管楽器はバグパイプに似てるが、荘厳さと奥底に滲む軽薄さは自らの文化を深堀りではない。

 むしろエキゾティックな憧れと、異文化の落ち着きへ憧れる軽薄さがにじむ。ダブ風に音が歪む場面も、重厚さより唐突な無邪気さがあり。
 低音成分が充満しつつも、どこか重心は軽い。

 本盤は先駆者ならでは、なおかつ機材の限界ゆえの面白みがある。
 ミニマル、アンビエント、もしかしたらニューエイジ。さまざまなテクニカル・タームが産まれていたとしたら。
 テープ編集、打ち込み、波形操作がある時代ならば。

 前者の幅が広いほど、本盤はこれほどストイックかつ素直に音が流れなかった。もっと余剰もしくは雑念で水膨れするか、さらに無機質になっていたろう。
 後者の発展が進むほど、本盤に充満する演奏テクニックの人間臭さと繰り返しの無常さが薄れていたろう。すでにテープ編集の技術はあった。けれども本盤ではむしろ生演奏のスリルが先に立つ。同じフレーズを貼り続けた単調さではない。
 そう、本盤は単調や停滞でなく、同じことを繰り返すことでダイナミズムを追求した。
 
 本盤はミニマルに分類される盤ながら、今の耳で聴くとすごくマニュアルで素朴だ。
 演奏は繰り返されつつも、常に変化している。その揺らぎ具合が、とてもキュートだ。
Track listing:
A A Rainbow In Curved Air 18:40
B Poppy Nogood And The Phantom Band 21:40

関連記事

コメント

非公開コメント