Madhouse 「16」(1987)

 コンボ編成を一人多重録音で行う密室性が、一気に増したアルバム。

 1st"8"が1月。本盤は11月。速いペースであっという間にリリースされた。だが音楽性は明確に違う。クレジットの奏者はLevi Seacer, Jr.(b),John Lewis (ds),Dr. Fink(key),Eric Leeds(reeds)。だがたぶん、サックス以外はほとんどがプリンス。
 さらにクレジットは無いが、シーラ・Eも数曲で叩いてると言われる。なにがなんだか。
 多作や趣味性の多様さでプリンスのブランド棄損を避ける目的と、単に面白がって神秘性を出すためにクレジットをあいまいにしたと思うが、ややこしいことおびただしい。

 だが本盤は前作よりも密室性とダビングが増した。前作はダビングがあったにせよ、コンボ編成の一発録音"風"のシンプルさと勢いがあり。
 しかし本作はダビングが鬼のように施され、さらに楽曲の流れも一貫性が無い。アイディアを次々に詰め込んだみたいに、ごっちゃで混沌な世界が描かれた。

 プリンスはのちの"Xpectation"や"N.E.W.S"のようにラウンジ的なインストにも興味を示していた。もしくは同時期の"Crystal Ball"みたいにドラマティックで大作な嗜好とも通じる。
 すなわちポップなファンクを突き詰めたダンス・ミュージックも好んだ。映画作りやコンセプト・アルバムにもつながる物語性の構築が好きだったのではないか。
 
 本盤はそんな趣味が詰まってる。たとえば(4)。ビッグバンド風に盛り上がる楽曲に、コンボ編成のこじんまりさは皆無だ。だがストレートな大編成バンドとも違う。鍵盤はピアノとオルガン、ホーン隊も分厚く鳴る一方で音量的にはドラムと並列に並ぶ。
 つまりライブで実際の楽団のもつ音量バランスとは違う視点で、本盤はミックスされた。
 一歩引いた指揮者の視点でなく、楽団の中。もしくは舞台、客席にまで意識を飛ばしながら自由自在に好みの音を抜き出し、好きなようにミックスする。そんな自由な視点が本盤には感じられる。

 本盤は疑似オーケストラであり、幻想コンボである。
 一人の楽器奏者が一曲にわたって弾き続けるのでなく、場面ごとに現れては消える。そんな贅沢なアレンジを、多重録音ならではの自由度で作り上げた。

 楽曲のアレンジやアプローチもまちまち。4人編成のクレジットだが、まったくこだわらない。小規模な組み合わせから多彩な広がりまで好き放題だ。
 さらに打ち込みやサンプリングも多用し、メカニカルさと生演奏のダイナミズムを混ぜ合わす実験も行ってる。
 なおかつ聴きやすいキャッチーさと、骨太のファンクネスを保ち続けるところが才能だ。

 エリック・リーズは本盤でも活躍している。だが彼のエゴを満たすのでなく、単なるプリンスの素材として吹いている。
 後年のインタビューによれば、当時のリーズはむやみにレコーディングしまくるプリンスの姿勢へ、決して好意的には思ってなかったようだし。当時はわざわざプリンスに自分を目立たせろとも言わず、エゴの奔出は"Times Squared"(1991)まで抑えてたのかもしれない。

 Madhouseは本盤に続く"24"の予定もあったがポシャった。一部は楽曲が流出している。
"1-800-New-Funk"(1994)にてMadhouse名義で"Seventeen"はリリースされた。
 一方で当時の素材は"Times Squared"に変わったとも言われる。この辺もいつかきちんと、整理された情報を知りたい。

 Madhouseの既存盤はCD化もあるが、今は入手困難。惜しい。それこそ配信などでいつでも触れる環境にして欲しいものだ。今年の4/20に"8"はMP3化されたのに。
  

Track listing:
1 Nine 2:06
2 Ten 5:04
3 Eleven 6:14
4 Twelve 5:14
5 Thirteen 4:46
6 Fourteen 5:12
7 Fifteen 3:49
8 Sixteen 4:17

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