Frank Zappa 「Dance me this」(1993/2015)

 きめ細かで自然な響きのシンクラヴィア音楽。幻想的なエキゾティシズムを内包した。

 ゲイル存命時の最終作で、ザッパが生前に完成させてたと言われる音源がこれ。04年頃にカセットが流出とも言われるが、当時の詳しいことは不明だ。モダン・ダンス用に作曲された音楽という。

 冒頭からホーメイの響きやザッパのギターがちらりとダビングされ、単なる複雑な現代音楽ではない。けれど、根本的には難解な楽曲が続く。
 ザッパの音楽は手が込んでいるけれど、生前はオーケストラ曲を除けばポップさを意識し続けた。売り上げをある程度は意識していたろうし、難しい音楽にユーモアを混ぜる楽しさも考えていたのかもしれない。

 とはいえ晩年は趣味性が強まり、"The Yellow Shark"で存分にクラシック・アンサンブルでの混沌を披露した。さらに死後、「完成していた未発表作」として発売が"Civilization Phaze III"。シンクラヴィアであれこれ作っていた様子が伝わった。

 ザッパのシンクラヴィア作品は、"Francesco Zappa"(1984)での素朴な打ち込みフレーズから、時代を経るにつれ滑らかさを増した。機材の更新があったのだろうか。
 ジャストで素朴な"Francesco Zappa"は、"Frank Zappa Meets the Mothers of Prevention"(1985)で涼やかかつミニマルな世界に進化した。

 生楽器と混ぜ、愚直にきちんと演奏するアンサンブルの一つとシンクラヴィアを解釈したのが"Jazz from Hell"(1986)。
 その後は88年ツアーの幕間に流したりはしても、シンクラヴィア曲がアルバムになることはなかった。

 没後のリリースでは"Civilization Phaze III"(1994),"Feeding the Monkies at Ma Maison"(2010)で当時の様子が伺えたけれど。特に後者の掴みづらい内省的な世界は、かなり聴く人を選ぶ。ザッパ好きでないとピンと来ないだろう。

 だが本盤は"Feeding the Monkie~"がデモだったのかと思うほど、きっちり作りこまれてる。確かにポップとは言い難い。けれど構成の雰囲気はしっかりしてる。
 ザッパがとことん存命していたら、プロ・トゥールズを使いこなしてたら、どんな音楽を作ったろう。本盤では生楽器の代用ではなく、響きから構成から、より自然なサウンドを狙った。
 オーケストレーションとして残響や音色の重なりまで意識しながら、変拍子まみれのザッパ・サウンドが提示された。

 確かにこれは生演奏が不可能そうだ。あまりに音が抽象的に飛び交う。けれども、ザッパ流の生々しい音楽が詰まった。
 旋律だけでなく和音感が、ザッパ流だ。
 "Feeding the Monkie~"では今一つ馴染めなかったが、この盤はもう少し聴きこみたい。

 ザッパ・トラストの流通時代は高価だったが、今はユニバーサルが流通を担ってだいぶ手ごろな価格になっている。もっと売れて欲しい。

Track listing:
1 Dance Me This 2:01
2 Pachuco Gavotte 3:27
3 Wolf Harbor 8:02
4 Wolf Harbor II 6:53
5 Wolf Harbor III 6:09
6 Wolf Harbor IV 3:38
7 Wolf Harbor V 3:09
8 Goat Polo 3:04
9 Rykoniki 1:59
10 Piano 7:09
11 Calculus 2:49

Personnel:
Frank Zappa - Synclavier realization, guitar
Anatolii Kuular, Kaigl-Ool Khovalyg, Kongar-ol Ondar - vocals
Todd Yvega - algorithm and Synclavier assistance

関連記事

コメント

非公開コメント