Momus 「Oskar Tennis Champion」(2003)

 デカダンまで行かぬ日本の裏さびれた情緒と、テクノ・ダブ的な電子音ノイズが重なり、なんとも雑駁な世界が描かれた。前半は明るく、中盤から次第に沈鬱なモーマスの世界が前に出てくる。

 NYでの展示を元にした"Folktronic"(2001)から2年。東京は中目黒のスタジオで録音し、共同プロデュースにミシガン州に住むFashion Fleshを立てた。
 録音までモーマスがいったん終わらせ、ミックスとダビングが彼の役割か。そこかしこで聴けるダブ処理やノイズが彼の仕業らしい。

 彼の手腕で本盤は投げっぱなしのデモテープ的なアレンジに、ずいぶん細かいエレクトロ・ノイズが足されて混沌さが増した。SEを足すという生易しいレベルではない。単なる伴奏に留まらず、細かくダビングして汚しをトラックにかけている。構成まで弄っていそう。モーマスは好き放題に彼へ音を操作する権限を与えた。
 特に中盤以降で、モーマスの素材感がどんどん強まる。モーマスのソロというよりリミックス集っぽい場面もしばしばだ。

 なお日本盤では(17)の空白トラックを挟み、2曲のボートラが収録された。日本盤だけジャケットも違う。以下のジャケット無しが日本盤のようだ。
 

 モーマスは三ヶ月間も日本に住んで本盤を作った。(2)を筆頭に、そこかしこに日本情緒や演歌に通じる抒情的な旋律感やアレンジが滴る。モーマスは無邪気に異文化として取り入れてると思うが、日本人の感覚だと何ともむず痒い。微妙な違和感があるためだ。
 演奏はすべてモーマス。デモテープ風のエレクトロ・ポップに仕上がり、ほとんどが鍵盤のダビングだ。
 モーマスらしい耽美な毒も若干漂う。

 特段にストーリー性や統一感はないのだが、雰囲気は妙にひとつながりの印象を受けた。
 ビート感は日本の歌謡曲や演歌風味を取り入れたか、妙に間がありつんのめる。チープなシンセ音色も含めて、モーマスはいびつな割に意外と日本の大衆音楽を取り入れてる。物真似でなく、いったん彼のフィルターを通して表現した。本質とは言わないが、単なる日本かぶれには達しない、深い食指を日本へ突き刺した。
 ざわめくような電子音楽のトラック(6)も、西洋的なコラージュ要素とともに日本の雑踏に似た混沌がある。
 
 冒頭の日本風味を無造作に足した明るさは、曲が進むにつれて次第に電子音の主張が強まり、前衛的な暗さとつかみどころ無い曖昧が色濃くなった。
 アイディア一発の無造作なモーマスの味わいを、Fashion Fleshの爛れたノイズ感がさらに曇った世界へ塗っていく。
 
 かなり自由かつ好き放題、Fashion Fleshはモーマスの音世界をいじくり倒した。ともすればポップに仕上がってた(11)みたいな楽曲も、ぐしゃぐしゃのエレクトロ・ポップに解体再編成してる。

 なお同時期にモーマスは当時の妻ShaznaとユニットMilkyを作りアルバム"Travels With A Donkey"も残した。

Track listing:
1 Spooky Kabuki 3:05
2 Is It Because I'm A Pirate? 3:26
3 Multiplying Love 1:29
4 Scottish Lips 2:59
5 My Sperm Is Not Your Enemy 2:23
6 Oskar Tennis Champion 4:10
7 A Little Schubert 3:37
8 The Laird Of Inversnecky 3:40
9 The Last Communist 5:01
10 Pierrot Lunaire 5:28
11 Beowulf (I Am Deformed) 4:29
12 Electrosexual Sewing Machine 3:51
13 A Lapdog 4:18
14 Lovely Tree 3:22
15 Palm Deathtop 3:20
16 The Ringtone Cycle 7:32
Bonus Track
17 -
18 Beowulf (Digiki Remix)
19 Erostratus

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