Paul Chambers 「Paul Chambers Quintet」(1957)

 地味だが隙の無いハード・バップが楽しめる。がっつりベースが目立った。

 ブルーノートから2作目、3rdソロで前作"Whims of Chambers"からおよそ半年ぶりなリーダー作の録音である。"Miles Ahead"やレッド・ガーランド"Groovy,"Revisited!"を録音の合間に本盤が収録された。
 既に前年から膨大な録音を毎日のようにこなし、すっかり売れっ子だったポール・チェンバーズ。サイドメンは選び放題だったろう。
 前作の6人編成から一転、2管の実直なモダン・ジャズを繰り広げた。
   
 サイドメンも一新し、ドラムはフィリー・ジョー・ジョーンズからエルヴィン・ジョーンズへ。ピアノはホレス・シルヴァーからトミー・フラナガンに。
 このリズム隊はチェンバーズが参加しなかった、フラナガンの名盤"Overseas"(1957)を連想させる。こちらは同年8/15と数ヵ月後の録音。
 本盤のセッションがきっかけでフラナガンがジョーンズを起用に至ったりして。実際のところはどうなんだろう。毎夜、さまざまなジャム・セッションやギグ、レコーディングでミュージシャン間のコミュニケーションは濃密だったと思うが。

 ホーン隊は前作から引き続きドナルド・バードと、今回が初参加のクリフォード・ジョーダン。全体的に前回よりすこし若めのメンバーを選んだ感じ。とはいえチェンバーズがこの時点で22歳。思い切り若弾きなわけだが。

 全6曲中、次作は2曲(2)と(6)。ゴルソンの2曲を採用は、既に彼の作曲へ目を付けてたということか。この当時のゴルソンはデジー・ギレスピーのバンドに採用直前。売り出し中だったはず。"モーニン"は翌年のリリースだ。
 残るはスタンダード2曲。選曲のバランスは気負いすぎない。
 なおこのセッションのアウトテイクとして(4)の別テイクが発掘されボートラに今はついている。

 アルバム全体はバランス取れた仕上がり。不穏なムードの和音が響くゴルソンの曲(1)で幕を開け、どっしりとチェンバーズはベースを唸らせる。
 無闇に前へ出すぎないが、(1)の冒頭からベース・ソロを取るあたりはリーダー・セッションのプライドか。
 ホーン隊からのソロ回しは、ふらっとよろめく線の細さと逞しいグルーヴ感が同居した。がっしりとベースが唸り、軽快にシンバルが連打される。

 "St.Thomas"を連想させるイントロな(2)はベースがガッチリとリフを作り、テーマが2管で絡んで高まるさまが勇ましい。チェンバーズのオリジナル曲だが、ホーンのラインまで作曲してたのだろうか。ならば、対位的なラインの流れも良い。
 アドリブが始まると安定したファンキーさで進む。軽やかなピアノのソロが小気味よい。テナーにつながる雰囲気もカッコよかった。

 (3)もリード・メロディをベースが取って、だれがリーダーかを明確に見せるアレンジを施した。
 せわしなく刻むブラシのハイハット、音数を抜いた小気味よいピアノ。そこをベースががっつり走る。
 この曲ではホーン隊抜き。すべてがベースで描き、支えた。弾きすぎない音数だが、短い3分間をしっかり自己主張した。

 ちょっとうわずり気味な(4)もゴルソンらしい鮮やかな和音感と、スピーディな疾走感あり。ホーン隊を脇に回し、アルコでチェンバーズはゴリゴリとソロを取った。
 
 (5)もスタンダードの美しいメロディを2管で対話調子にアレンジした。この辺のさりげないフレーズづくりが上手い。しっとりしたテナーに、溌剌なペットと対照的な位置づけだ。二管ならではの華やかさをじっくり聴かせた。

 (6)はゴルソン風のハード・バップなチェンバーズのオリジナル。これも2管でストリングスのようにテーマを奏でる響きがきれいだ。流れるようにペットのソロに繋がる展開も洒落ている。
 プレイヤーとしてでなく、作曲家としても非凡なセンスを見せた。

 というふうに、隙が無い。瑞々しい若さと才能がきれいに開花した。ブルーノート2回目のリーダー・セッションで、色々とアイディアを素直に織り込めたのかもしれない。
 
Track listing:
1 Minor Run-Down 7:37
2 The Hand Of Love 6:22
3 Softly As In The Morning Sunrise 3:06
4 Four Strings 5:26
5 What's New 5:38
6 Beauteous 8:05

Personnel:
Paul Chambers - bass
Donald Byrd - trumpet (tracks 1-2 & 4-7)
Clifford Jordan - tenor saxophone (tracks 1-2 & 4-7)
Tommy Flanagan - piano
Elvin Jones - drums

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