Prince 「Parade」(1986)

 横からにゅっと生えたホワイティなプリンス。すっきり絞り込み、洗練された引き算の美学を強烈に示した。

 アイディアをシンプルにまとめた。そこに退廃さとデモテープ集めいた、ざらつきが漂う。
 ノリが8分音符から16分音符の感覚に近しい、譜割の細かさが本盤から強まった。この精妙なビート感は、次作"Sign O' The Times"で結実する。

 約1年ぶりに発表の本盤は、白と黒のツートン。今までのムサくてカラフルなイメージ戦略から一転した。髪の毛を短く刈り込み、ヘルシーにリフレッシュ。洋服もだんだん脱ぎ始めた。
 "Dirty Mind"のパンツ一丁にコート姿な露出スタイルと、似て非なるもの。あちらは虚飾を削ぎ落したかった。本盤は装飾の排除。より生々しい自らのアピールを志向しながら、本盤は夾雑物を廃してシンプルさを志向した。

 その象徴がベースを抜いた"Kiss"。"When doves cry","Tamborine"に通じる乾いた静かなファンクが本盤のキラー・チューンだった。余分なアレンジを廃したデカダンで自己愛の世界観を、モノクロ世界の色合いな映画"Under the cherry moon"に込めたか。

 貴族趣味とは違う。しかしどこか本盤でプリンスは大きく日常性から跳ねた。性愛を筆頭に普段の生活では見せない暗部にスポットを当ててスリルを与えるのが、これまでのスタイルとしたら。
 本盤では生活感を削いだ。プリンスというアイコンを徹底的に突き詰め、人間の汗臭さをスマートな象徴性に突き詰めた。そんな感じがする。
 もっと言うと、より白人寄り。ファンクの根幹は譲らないが、黒人的な泥臭さを徹底的に排除し、白人のきらびやかさを狙った風に見えた。売れ線狙いのイメージチェンジでなく、スタイリッシュさを突き詰めた方向性として。この論調は推測が過ぎるため、この辺にしておこう。

 本盤のイメージはからりとしたファンクネス。そして滴るロマンティシズム。
 "Kiss""Under the cherry moon""Sometimes snow in April"あたりがメインだろう。しかし当時のぼくは、まだプリンスに追いつけなかった。
 "Mountains"に惹かれた。"Purple Rain"を継承するゴチャっと詰まったわかりやすいファンクが大好きだった。

 リアルタイムながら追いつけなかったプリンス。そんな聴き方をしてたため、本盤はデモテープっぽい作りこみの荒さを感じてしまってた。
 "Do U Lie?"のシンプルさ。"I Wonder U"の不安定さ。それらが本盤を奇妙な危うさに受け止めてしまう。
 スティール・パンめいた響きが象徴の"New Position"も、「もっと楽器を足してくれないかな」と思ってた。

 12曲とLPにしては多い曲数にして、1~2分で終わる小品も多い。だからなおさら本盤は素材段階で詰め込んだ気がしてた。

 ぼくにとっての本盤は、"Christopher Tracy's Parade"や"Life Can Be So Nice"での"Around The World In A Day"直結なサイケ・ポップ。"Anotherloverholenyohead"に溢れるファンクネス。
 そして"Mountains"の骨太さ。それらがカギとなる盤だった。

 いちおう言っとくと、本盤が嫌いなわけではない。当時、山ほど聴いた。"Kiss"も大好きな曲だった。ただし後年"名盤"と称えられるとき「ほかに良い盤があるじゃん」と感じてたくらい。ぼくにとってのベストは"Lovesexy"だから。
 
 しかしこの盤はどれも和音感が不安定だ。誰か詳しい人に楽理分析をして欲しい。プリンスの没後にYoutubeで"Under the cherry moon"のピアノ・カバーを聴いてしみじみ思った。

 
 そう、ぼくはプリンスの死後にこの盤に収録の楽曲を改めて良いなと思った。超遅い。"Sometimes snow in April"も、やたらとトリビュート・カバーされて、「ああ、こんなに名曲だったのか」と。なんとも情けない。
 
 録音で言うと、"Mountains"など数曲を除けば、シーラ・Eやウェンディ&リサの強烈なサポートを受けながら、あとはプリンスが一人で演奏した。
 バンド志向がすっかり冷め、再び内省的な美学の追及に向かう。そして様々な模索の末に、"Sign O' The Times"へ向かうわけだ。
 わずか一年くらいの間に。関連ブートへはすぐ触れられず、この猛スピードを全く理解しなかった。何年もたってから当時のプリンスによる、溢れ出る怒涛な創造力へ呆然とすることになる。

 リアルタイムゆえに、呆然と本盤に触れていた。贅沢な話だ。もし後追いでまとめて聴いてたら、もっと素直に本盤の魅力へ気づいていたろう。

Track listing:
1 Christopher Tracy's Parade 2:11
2 New Position 2:21
3 I Wonder U 1:40
4 Under The Cherry Moon 2:57
5 Girls & Boys 5:30
6 Life Can Be So Nice 3:12
7 Venus De Milo 1:54
8 Mountains 3:58
9 Do U Lie? 2:43
10 Kiss 3:38
11 Anotherloverholenyohead 3:58
12 Sometimes It Snows In April 6:50

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