Elliott Sharp 「The Velocity Of Hue」(2003)

 混沌とパーカッシブな音列が、唐突かつ小刻みに空気を震わせた。

 多様なアプローチと実験を繰り返すエリオット・シャープが英Emanemからリリースしたエレアコのソロ。静かなノイズと細かなタッピングやボトルネックを利用した演奏スタイルで、時にその場でサンプリング・ループした音も重ねてるようだ。

 "The Velocity Of Hue"とは本盤1曲目のタイトルでありながら、この演奏コンセプトそのものを指すらしい。発表直後のライブでは一人ユニットとしてこのタイトルを使った。当時のトレイラーがYoutubeにあり。
 また、16/3/26にNYC Free Jazz Summit / Arts for Artでのソロ演奏でも、冒頭にこのタイトルを告げる。一過性でなく一つの作品として、本盤のコンセプトはE#の中で継続してる。
 

 他にもこのゴダンのエレアコを使ったソロ・ギターの動画もあるが、全てが本"The Velocity Of Hue"かは未確認。音を聴く限り、明確なメロディや構成が肝ではなく、演奏スタイルやコンセプトを指すようだ。
 彼のWebでもソロ・ユニットとして明確にページが作られた。
http://www.elliottsharp.com/velocity_of_hue.html
 E#のソロ・ギターでも8弦のギターベースを使えばOCTALと呼称され、アコギでもモンクの曲を演奏するsharp plays monkと区別あり。さらにラップトップを使うtectonicsってスタイルの演奏コンセプトも同列に定義されている。

 本盤の中心は通常のギター演奏から、半歩ズレた立ち位置にこだわる。
 指弾きで力強く弦をはじく。タッピングやハーモニックスも加える。E-BOWでの持続音も導入した。
 ビート性は希薄。拍子感も薄い。まさに即興で音楽が展開する。

 全く抽象的な音列ではないけれど、つぎつぎに跳躍し転換するフレーズがいっぱいだ。高速に旋律が走り回り、ときに一息つくような間を挟んだ。脈絡なく曲が始まり、ある意味唐突に終わる。
 テーマとアドリブのような構成は無く、全てがインプロ。
 若干は音色をエフェクターでいじってるが、歪みのないブライトな響きで耳ざわりはきつくない。

 全14曲、数分から長くても8分程度。延々とインプロを突き詰めるのでなく、ほどほどのところで切り上げる。この辺の合理性、もしくは見切り具合が特徴だ。興の赴くまま弦をはじき、あっさりと次に向かう。

 わずかにカントリー的な風味も感じるが、これは音色からの連想が強い。例えばデレク・ベイリーのように音列に独自性は出さず、指癖でスピーディーに次々と音を溢れさせた。
 むしろ身体に染みついたブルーズ、もしくはカントリー文化がフレーズに漏れ出たのだろう。
 センチメンタルさがそこかしこに滲む一方で、ロマンティックなムードは狙わない。無機質で性急な音列をぱりぱりと鋭角に奏でた。とことん鋭く危うい世界に行かない煮え切らなさも、E#の個性か。

 E#のスタジオzOaR NYCで収録。録音、ミックス、マスターもすべて自分でこなし、低予算であっさりと仕上げた。

Track listing:
1 Velocity Of Hue 1:31
2 The Skeptic 4:20
3 Anamnesia 5:50
4 Kuru 2:17
5 The Face Of Another 2:44
6 Beaks And Beans 6:17
7 Nebel 5:21
8 Euwrecka 8:17
9 Icontact 4:14
10 Polytope 3:29
11 Circadia 8:42
12 Gagers And Gan 2:33
13 Recognition 7:00
14 Otolith 5:27

Digitally recorded, mixed and mastered at Studio zOaR, NYC by Elliott Sharp, june 2003.

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