大谷能生 「Jazz Abstractions」(2012)

 混沌と雑駁なグルーヴを、メカニカルなサンプリングとヒップホップの鷹揚さでまとめ上げた怪作。

 膨大な知識と緻密な分析を誇る大谷能生は、低い声が良く響くラッパーであり、もちろん鋭いミュージシャンでもある。迂闊な知ったかぶりを躊躇うため、本盤の内容解説はこちらの解題を読んで欲しい。
http://blacksmoker.net/interview/yoshio-ootani/

 12人のジャズメンにスポットを当て、サンプリングを駆使してブレイクビーツと混沌な世界を作り上げた。ダンス音楽やグルーヴの要素より、電子音楽的な抽象性のほうが強い。ジャズのノリを生かしつつ、ぐちゃぐちゃに混ぜ合わせて不穏な空気をいっそう色濃くした。

 本盤に通底はジャズ・マニアの知識を踏まえ、一気呵成に作り上げるスピード感だ。上のインタビューで分かるように、楽曲の必然性やストーリー性は個々のトラックに存在する。しかし楽曲のイメージはダブと不規則なサンプリングの連発で、アイディアを瞬発的に作り上げた感あり。
 
 冷静な設計図を引き構築でなく、アイディアと感性の赴くままにトラックを作り上げる。ジャズのアドリブを紡ぐがごとく。
 インストの抽象ミックスだけではない。数曲でラップも披露し、ヒップホップとジャズを連結した。難しい評論の観点でなく、大谷のフィルターを通した肉感的なアプローチで。

 本盤のスリルはジャズ・マニアの知識のひけらかしではない。唐突かつ危なっかしいブレイクビーツと、せめぎ合うリズムの奔流、そしてヒップホップの不穏さが混ざり合った。
 この盤はうんちくを傾けながら聴きたくはない。もっと直観的にスピード感を楽しみたい。とはいえどの曲もグルーヴは屈折し解体され、素直にノリづらい構造を作ってるけれど。

 本盤はジャズの魅力を一ひねりして絞り出した。サンプリングを駆使した音作りを聴いてると、もっと色んなジャズを聴きたくなる。知識を蓄えたくなる。
 そして改めて、本盤の瞬発力とアイディアの構成力に唸る。大谷は膨大な知識量を踏まえ、なおかつ即興的にジャズを抜き出して鋭い不穏な世界を見事に描いた。 

Track listing:
1. Thelonious Study#1
2. Coleman's Mushup TV Dinner
3. Bob James
4. Percussion Bitter Sweet
5. No Cover, No Minimam
6. Elvinnvie
7. Cumbia Jazz Fusion
8. DlsMcx
9. Thelonious Study#2
10. Conquistador!
11. I'll Remember April Rejoice
12. StrangeFruits

関連記事

コメント

非公開コメント