Acid Mothers Temple & The Melting Paraiso U.F.O. 「The Ripper At The Gates Of Heaven's Dark」(2011)

 ライブ演奏での醍醐味とは別の魅力を、強烈に示した。多数の音を重ねライブで決して再現できぬスリルをが詰まってる。バラエティに富んだ5曲入り。だが、すみずみまでAMTサウンド。新境地とは別次元の、奥深い多様性が素晴らしい。

 2枚組LPは500枚、CDは1500枚と限定プレスだが、今はMP3で容易に音は聴ける。


 4人組アシッド・マザーズががっつりとジャムを炸裂させた。ハードロックなリフで幕を開け、ダビングを多用したエレキギターの奔流とシンセのきらめきがきれいに溶ける。
 混沌ながら切れのいいミックスがカッコいい。うねるベースと暴れ倒すドラムのAMT流グルーヴはそのままに、痛快なテンションが途切れなく続く。

 ジャム風の展開だが、ギターは幾層にもダビングされて分厚い世界を作った。4拍子のリズムに寄り添い、離れ、奔放にギターのフレーズが飛び交うさまがスリリング。
 さらに津山の叫びや低音がアクセントとなって、自由な流れにメリハリを付ける。

 (1)や(2)はハードロックの明確なリフからジャムに雪崩れる、楽曲を意識した作品。4人編成のライブでは再現できない。リフをループで回しても、ここまでガッツリとノリのいい演奏には行くまい。
 ライブこそがAMTの醍醐味だが、逆に本盤はアルバムでこそ成立。河端のこういう作りこみやコンセプト作りが凄い。

 (2)は(1)の激しい疾走と一転して、静かでアコースティックな即興。
 インドかぶれでドラッギーな垂れ流しの、60年代の英ロッカーの爛れたへなちょこさを、津山の奔放な歌声でパロディのように表現した。具体的な例はなく、イメージだが。
 つかみどころ無い淡々としたジャムだがサイケ風味でアコギとシタールの無秩序な揺らぎが心地よさを作る。
 ベースが歌とユニゾンで走ったり、きっちりとベースがアンサンブルを締めている。
 
 (3)はトラッドとアラブやインドの混交か。ブーズーキの高音が細かなフレーズを撒き、おもむろにギターが加わる。スペイシーなシンセや津山の唸りが加わって、サウンドは軽く深く鈍く展開する。河端の多様さと津山の奔放さが上手く混ざった、二人ならではの、中近東ブルーズ。ドラムが淡々と刻む。
 隙の無い4人によるサウンド。疾走や爆音と別次元で、こういう酩酊さの演出もAMTならでは。
 津山の叫びが次第に重たく膨らみ、サウンドも電気仕掛けに変貌していく。中盤からの粘っこいグルーヴがじわじわと見事にうねった。淡々と揺れるあいまいなアンサンブルだが、破綻も崩れもしない。

 ピンク・フロイドをパロった曲名の(4)は、透き通ったムードで幕を開ける。この曲はダビングを控えた。
 ダブ処理の小さなシャウトと、オルガン音色のシンセ。ドラムが軽快に刻み、ベースがしっかりと低音を広げる。ギターはザクザクとフリーに奏でながらも、歪みは控えて全体の音像はすっきりしてる。
 やがて鍵盤がじわじわとサイケに雪崩れ、演奏全体がジワッと酩酊を高める。
 力押し一辺倒でない、AMTの自在さをここでは表現した。5分過ぎにギターは歪み始める。粘っこくも確かなベース・ラインが強力だ。
 
 いったん静まったあと、サイケに膨らむがテンポは抑えめ。じわじわと音が漂う。
 中盤以降は二本のギターがむせび泣く格好。対話のように左右でギターが波打つ。
 このあたりはライブでありえない、スタジオならではのアレンジを採用した。迫力ある、切ないムードが広がる。

 最終曲(5)もインド風味。本盤のテーマはハード・ロックとインド音楽の融合な気もしてきた。切ないブーズーキのフレーズにシンセやエレキギターのノイズがかぶさっていく。
 静かにドラムが刻む。単なるビートでなく、ときおり崩れたフィルを混ぜながら。津山のインド風スキャットが胡散臭く響き、濃いサイケの色を塗った。テンポは緩やかに、じわじわとうねる。加速して高まるのは7分過ぎからだ。
 これもやはり数本のギターが鳴り、スタジオ録音流のAMTを奏でた。10分過ぎにいったんリズムがアフリカンに向かい、津山のアラビックなスキャットがダブやディレイ交じりで多様に充満した。終盤は猛烈に加速する。

 とにかく音楽性が多彩。それでいてAMT色をずらさない。貪欲で芳醇な彼らの魅力が、スタジオ録音ならではの厚みあるアレンジで楽しめる。傑作。

Personnel:
津山篤 : monster bass, voice, soprano sax, cimpo flute, soprano recorder, acoustic guitar, cosmic joker
東洋之 : synthesizer, dancin’king
志村浩二 : drums, latino cool
河端一 : electric guitar, electric bouzouki, sitar, organ, percussion,electronics, speed guru

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