TZ 7078:Pierre-Yves Mace "Faux-jumeaux"(2002)

 静かで抽象的で、それでいて内省的な美しい現代音楽。

 フランスの現代音楽家によるアルバムで4曲を収録した。本盤がアルバムデビューのようだ。その後、アルバム4枚をあちこちのレーベルからリリースして、TZADIKからは"Segments Et Apostilles"(2013)を発表した。


 特徴はサンプリングを使ってダブ風の処理をところどころに取り入れた点。
 全体的な雰囲気は、耽美的だ。涼し気な風が吹きつつも、停滞するしとやかさはない。リズミックな激しさも薄い。

 鍵盤やハープ、木管楽器が漂い、いつの間にか音楽が進んでいく。けっしてノイジーな音列は無いが、ダブ風に揺らぐサンプリングと生楽器が交錯した。
 どの曲も少人数の編成。ハープや木管楽器などと、Maceのピアノにサンプリングが絡む。

 アンビエントな音像だが、ビートやミニマル性は希薄。生楽器の音列に鍵盤が絡み、つっとサンプリングに溶かされる。明確な進行感を持ちながら、音楽に連続性が欠けている。
 メロディを追っていると、つっとサンプリングに飛ばされて、違う世界にクロスフェイドした。脈絡ない空間が、ダブ処理で強引かつ自然に連結していく。

 その一方でコラージュのように唐突な連結の意外性も感じさせない。酩酊する思考の羅列が脈絡なく並ぶかのよう。

 つかみどころが無い。しかし、美しい。ガラス細工が溶けて入り混じり、入り口出口すらあいまいになっている。
 たぶん譜面を見たら、細かく解説を受けたらこの楽曲をもう少し理路整然と理解できるのだろう。
 
 しかし繰り返し聴いても、なかなかこの音楽がつかめない。耳ざわりは柔らかい。けれどもとっかかりが無く、いつのまにか曲が進んでいる。
 響きの美しさ、瞬間の鮮やかさへ着目して描かれた本盤の音楽は、自己愛のいやらしさはほとんどない。美学の追及をしながら抽象性を保っている。不思議な凛々しさだ。

Track listing:
1 Evocation 11:32
Harp – Valérie Kajelnikov
Percussion [Including Cymbals, Gongs, Bells, Chimes] – Arthur Gordon, Luc Leroy, Yann Macé
Vibraphone, Samples – Pierre-Yves Macé

2 Défense De Voir Au-Dedans 13:27
Cello – Ingrid Kuntzmann
Flute – Stéphanie Chatet
Harp – Valérie Kajelnikov
Marimba – Hervé Trovel
Piano, Samples, Treatments– Pierre-Yves Macé
Le Sentiment De La Nature Aux Buttes-Chaumont

3 Part 1 9:12
Clarinets, Soprano Saxophone – Sylvain Kassap
Glockenspiel, Samples, Treatments– Pierre-Yves Macé
Piano – Dan Warburton

4 Part 2 7:29
Clarinets, Soprano Saxophone – Sylvain Kassap
Glockenspiel, Samples, Treatments– Pierre-Yves Macé
Piano – Dan Warburton

5 Part 3 5:29
Clarinets, Soprano Saxophone – Sylvain Kassap
Glockenspiel, Samples, Treatments– Pierre-Yves Macé
Piano – Dan Warburton

6 Faux Jumeaux 7:31
Clarinet [Bass Clarinet] – Sylvain Kassap
Marimba, Vibraphone – Luc Leroy
Piano – Dan Warburton
Bowed Vibraphone, Marimbas, Samples, Marimba Editing– Pierre-Yves Macé

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