Billy Ocean 「Time To Move On」(1993)

 髪型をドレッドにして、ダンス・ビートを強調したアルバム。

 僕の世代だとビリー・オーシャンと言えば"カリビアン・クイーン"(1984)。英ソウル・シンガーの彼は一発屋的なイメージしかなかったが、大間違い。
 86年に"When the Going Gets Tough, the Tough Get Going"、"There'll Be Sad Songs (To Make You Cry)"。88年に"Get Outta My Dreams, Get Into My Car"とその後も大ヒットを飛ばしたそう。

 本盤は5年ぶり8枚目のソロ。前半がアップ、(8)からスロー寄りと当時のソウルに良くある構成を取っている。
 まさに最後のヒット曲"Get Outta~"を収録アルバム"Tear Down These Walls"から久しぶりに出た。満を持してか、ようやく、かは分からない。母の死に落胆して活動を休止してたとも伝えられる。いずれにせよ本盤の売り上げ的にはあまり振るわなかったようだ。

 オーシャンの歌い方はハイトーンでまっすぐに伸びやかなイメージ。コブシをあまり効かさず、さらっとしてる。本盤では冒頭から打ち込みがディスコ風に盛り上がる、なんともバブリーなアレンジで幕を開けた。
 R. Kellyが(9)(10)を担当、(1), (2), (4), (12)をレゲエ界隈からSteely & Clevieなど、複数のプロデューサーを立てた。統一感よりバラエティさと売れ線をストレートに狙った感じ。硬い打ち込みデジタルな響きが、今となっては何とも古臭い。

 共作名義がほとんどだが、全曲にオーシャンのクレジットあり。作詞と作曲、どっちを担当だろう。デモを彼が作り、プロデューサーの貢献で共同クレジットになったって形か。
 あからさまにアッパーなリズムが全編を覆い、華やかで高音強調なアレンジが賑やかに跳ねる。クラブのフロア仕様、もしくはリゾート地のBGMに似合いそうな楽曲だ。おしゃれなカフェや服屋のBGMでもいい。
 要は変なこだわりを捨て、明るいムードを全編に提示した。いさぎよいポップ志向。

 歌い方もサンプリングっぽい硬質なムードで、かちかちにアレンジされた。
 そのわりにときどき、妙に暗い和音感が漂うあたりが、オーシャンのこだわりか。英国ソウルに共通するムードでもあるけれど。

 何も考えず後ろに流すにはいいが、面と向かって聴きこむには少しとっかかりが足りない。昔なら駄作と切り捨てたろう。この歳になると妙に守備範囲が広くなってしまい、良いとこ探しをしてしまう。再起を狙って張り切ったんだろうな、と。
 カリブ海、レゲエに傾倒も、どっぷりではない。エッセンスを振りかけに留め、逆にフラットな平板さを追求した。あからさまは(11)のダブ・レゲエくらいか。

 アップだとシングル曲(2)が、メロディの軽快さと滑らかな展開で良い感じだった。 この日本盤には(2)のシングル・テイクがボートラで追加あり。ただし派手でいまいち好きになれず。アルバム・テイクのほうがあっさりしてて良いな。
 スローでは(8)が、少し大仰ながらしっとりと盛り上げる。ほんのり切ないメロディが癖のない歌い方で素直に楽しめた。

 アルバム全般で見ると素直に持ち上げられない。でも、ビジネスに徹しながら歌手のプライドも守った大人の仕事だな。
 いずれにせよ芳しくなかった結果なのか、このあとリリースは"Because I Love You" (2008)まで15年も飛んでしまう。現在の最新は、それに続くベスト盤の"Here You Are"(2013)になる。
 ただし今も精力的にイギリスをツアー中。歌い続けている。

Track listing:

1 Pick Up The Pieces (Put It Back) 4:33
2 Pressure 4:43
3 Upside Down 4:03
4 Everyday Sunshine 5:12
5 Stand Up Stand Up 3:54
6 The World Wants To Dance 3:58
7 Time To Move On 4:46
8 Rose 5:52
9 Can We Go 'Round Again 5:04
10 Everything's So Different Without You 4:19
11 I'll Be There For You 4:28
12 On Your Knees 4:53

Personnel:
Billy Ocean - vocals
Steely & Clevie - producers (on 1, 2, 4, 12)
Hula & K. Fingers - producers (on 3, 4, 11), all instruments (on 3, 5, 11), additional backing vocals (on 6), other instruments (on 6), horn (on 12)
R. Kelly - producer (on 9, 10), keyboards (on 9, 10)
Timmy Allen - producer (on 7), all instruments (on 7)
Dorsey "Rob" Robinson - producer (on 8), keyboards (on 8)

Mr. Lee - remixing (on 6), editing (on 6)
Stephen George - remixing (on 6), editing (on 6), mix engineer (on 6), percussion (on 6)

Anthony Saunders, Chris Trevett, Collin "Bulby" York, Eric Gast, Gerard Julien, Carl Toppin, Martin Stebbing, Nigel Green, Pete Christensen, Peter Mokran, Stephen George - engineers
Chris Trevett - mix engineer (on 2-3, 5, 7, 9-12)
Nigel Green - mix engineer (on 1, 4, 8)
Tom Coyne - mastering

Keith Henderson - programming (on 9)
Peter Mokran - programming (on 9, 10), guitar (on 9, 10)
Cheryl Wilson, Joyce Faison - additional backing vocals (on 9)
Dawn Green, Roz Davis - additional backing vocals (on 3, 5)
Tinker Barfield - bass (on 8)
Peter Mokran - bass (on 10)
Clevie - drums (on 1, 2, 4, 12), percussion (on 1, 2, 4, 12)
Steve Kroon - percussion (on 8)
Ivan Hampton - drums (on 8)
Ron Simpson - guitar (on 6)
Vincent Henry - guitar (on 8)
Dalton Browne - lead guitar (on 2, 12)
Danny Browne - lead guitar (on 2), rhythm guitar (on 2, 12)
Steely - keyboards (on 1, 2, 4, 12)
Arthur Porter - saxophone (on 9)

関連記事

コメント

非公開コメント