梅津和時 「Pandora's Cocktail」(1999)

 凄腕NYダウンタウン・シーンのミュージシャンを集めたアルバム。

 当時にライブもやったようだが、単発で終わった企画。ユニットというよりNY版大仕事の一つ、みたいなものか。
 98年にNYで録音された。編成はギター入りのカルテット。同時期に立ち上げたKIKI BANDと同じ編成だが、方向性は全く違う。こちらではゴリゴリのジャズを、世界横断の音楽性で披露した。

 メロディアスさを土台に据えつつ、根っこはフリージャズ。基本的にスイング感を残しながら奥底にロックに通じるダイナミズムを持つ。
 確固たる多彩な素養が、自由に発令した。フリーキーなフレーズから滑らかに吹くスタイルまで幅広い音色もたっぷり。リズムもメロディも世界各地の要素を貪欲に吸収し、多国籍でコンパクトな世界を描いた。

 マーク・リボーやケニー・ウールセンを起用し、クレヅマーを演奏する梅津からしてユダヤ系に傾倒かと思いきや、全く違う。もっと幅広く民族性に囚われぬ音楽を作った。
 ベースにブラット・ジョーンズをブッキングからして独特だ。才人を集める梅津の目利きが見事に発揮された。

 そもそもウールセンをこの時点でピックアップしたのが凄い。ジョン・ゾーンのユニットですっかり顔なじみな凄腕ドラマーだが、この時点ではゾーンともアルバム数枚しか共演なかった。NYのライブハウス・シーンでは既に有名だったのかも。

 この時点で最も名を売ってたのがリボーか。リーダー作こそ少ないが、コステロやジョン・ゾーンらと共演を既に果たしていた。
 ブラッド・ジョーンズもすでに多数のセッションを果たして、ジャンル横断の活動だった。
 なお梅津の"Eclecticism"(1992)にてリボーとジョーンズは共演を既に果たしてる。いわば顔なじみのセッションに新鋭としてウールセンが加わった格好のようだ。
 
 (1)と(7)が全員のインプロ。(4)がモンゴル民謡で、あとはすべて梅津の作曲。98年12月の8,9,11日と三日間かけてじっくり録音された。
 
 冒頭に書いた通り、本盤ではジャズの志向が強い。けれどもオーソドックスなジャズでも、ラウンジ系のアンサンブルでもない。もっと雑多な世界が広がっている。
 長尺に雪崩れず、数分程度の短くまとめた楽曲が並んだ。あまり指揮をしてる様子はなく、そのわりにコントロールを感じさせない。実際は細かく指揮か譜面があったとしても、構築性はあるが自由な音楽が広がった。

 丁々発止の斬り合いではなく、あくまで主役は楽曲であり梅津。だが共演者へのスペースはたっぷりあり、自由度が高い。KIKI BANDほどバンドめいた志向を目指さない。よりセッションっぽい。
 コンパクトな世界が万華鏡のように広がる。のちにジョン・ゾーンが多発する疑似バンドのコンセプトを先取りしたかのようだ。

 梅津のサックスの美しさと、リーダー・シップの鋭さをしみじみ感じるアルバム。
 演奏の鋭さはばっちり。安定したスリリングな演奏をすんなり楽しめた。

Track listing:
1.ワウワウ 
2.松竹梅
3.A REVEREND UTTERANCE
4.CHIMTCHACK SALGHUM
5.THEY CRAVED THE MIRACLES
6.魂のマッコリ
7.INTERLUDE
8.WONBAT WALK
9.MERCURIAL
10.BIZARRE
11.KUMAMOTO

Personnel:
梅津和時:as,ss,cl
Marc Ribot:g
Brad Jones:b
Kenny Wollesen:ds,per

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