Fedayien 「Fedayien III」(1992)

 前作から2ヶ月後と短いペースで発表。こちらはグッと粘っこさが前に出た。

 2ndは92年1月15日の録音。本盤は同年3月14日と15日に神奈川県大和の足穂で収録された。(2)のみ14日、あとは15日のライブ。
 あくまでもフェダインはスタジオに入らず、ライブ感覚を大切にしてる。こちらも彼らのセルフ・プロデュース。この場所は彼らのホーム・グラウンドの一つであり、真摯ながら寛いだ演奏だったのではないか。
 
 生きのいい怒涛のアンサンブルが噴出してた時期なのだろう。前作と似たアプローチながら、まったく違う演奏が収められた。前作が繊細さと雄大さをテーマとしたら、本作は濃密で緻密。
 演奏形態や使用楽器は変わらないが、前作がエレクトリックで、本作がアコースティックな肌触りと思う。本盤でも(1)や(3)でエレクトリック・バイオリンは吼えるけれど。

 隙間なく音が埋め尽くされつつ、全員が疾走ではない。誰かが走ると一人がすっと受けに回り、メリハリが効いたアンサンブルが作られた。
 アルバムに作曲クレジットが無いため委細は不明だが、(2)がディランの曲で、あとは川下か不破のオリジナル。

 (2)はテーマが解体され、言われないとオリジナル曲が分からないかもしれない。走り続ける印象の強いフェダインだが、この曲ではフリー要素を強めて緩やかなテンポと、間を取り合って音が編まれていく。

 (1)が5分、(2)が11分。そして(3)が29分とだんだん長尺で広がる構成を取った。
 短い時間でくるくる世界が変わる(1)も、じっくり広がる(2)も、止むことなく暴れ続ける(3)も痛快な魅力あり。どれもこれも良い。

 音の太さでは全二作と大きく違う。ステージにぐっと近づいた迫力ある録音だ。
 テーマのメロディが解体されアドリブが広がる川下の、絶妙なインプロ性がたっぷり。緩急を効かせて強固なグルーヴを支える不破の逞しさもどっぷり。刻みと野太いスティックさばきの双方を持つ、大沼の鋭さもばっちり。

 このアルバムも、すごい傑作だ。ジャズの本質とは何か、を考えさせられる。ダンス・ミュージックではないが、強烈なビート感は存分に溢れた。ソロ回しの構築美とフリージャズの自由さが同居する。
 既成にとらわれず、頭でっかちな解体にも走らない。地に足の着いた、独特のジャズがここにある。

 前項に続いて、もう一度書く。本盤は今、AmazonのMP3で買えるが、曲数で値付なAmazonシステムが功を奏し、2ndと3rdはわずか450円でアルバムが入手できる。
 未聴の人よ、見逃すな。聴いて全く損はしない。骨太で空気を細かく切り裂き疾走するジャズを、文字通りお買い得で味わえる。
  

Track listing:
1.BOW~~~
2.風に吹かれて
3.Da Va Da Va Da Va

Personnel:
川下直広:sopranosax,tenorsax,six strings electric violin
不破大輔:bass
大沼志朗:drums

関連記事

コメント

非公開コメント