Fedayien 「FedayienⅡ」(1992)

 セルフ・プロデュースで長尺じっくりな独自世界を広げた傑作。テーマはエレクトリック・ベースか。

 前作から2年と間を置いてリリースの本盤は、前作と同じチョコレート・シティで92年1月15日に発売された。彼らのアルバムの中で、ぼくが最も好きな盤だ。
 プロデュースを最小限にして、無造作に彼らの音楽性を披露した。やはり独特の微妙に繊細で線の細いマスタリングなため、思い切りボリュームを上げて聴きたい。今の音圧感のレベルだと、少し物足りないため。

 今回は全3曲。特に代表曲の(1)は32分以上にもわたる長尺で、たっぷりとフェダインの怒涛な世界を楽しめる。
 (2)は1stに収録の再演。新曲で埋め尽くさず、ライブで積み重ねた演奏の変化を楽しめる構図を作った。(3)もこのあとのライブで繰り返される曲。

 (1)は、じわじわとしかし着実かつ濃密に盛り上げ、サビでぶわっと開放する。その無常な広がり、ぽおんと宙に頬り出されるあやふやな不安定さが凄い魅力だ。大好き。
 その名曲をここでは一切の容赦なく、とことんじっくりと楽しめる。

 川下直弘の軋むサックスは本盤でも健在。だが1stよりいくぶん締まって聴こえる。1stでは中心すら見えない緊迫感があったけれど、次第に音色が収束してきた。
 (1)はソプラノ・サックスで最初は盛り上げ、まずはきれいにサビへ。8分以上もかけてじっくり高まったあとで、高く雄大に世界が広がった。

 そこから楽曲は止まらない。どんどんアドリブ要素が増えて、不破大輔の高速エレべが吼える。絨毯爆撃で低音が放出され、大沼志朗のリズムもビート・キープでなくパルス状に刻みが溢れた。しかしベースの確かなグルーヴでアンサンブルはガッチリと成立する。
 中盤を過ぎて川下はe-vlnに持ち替えた。歪み倒した音色が荒っぽく抽象的に溢れる。くきくき鋭角なエレクトリック・バイオリンの響きを、細かく打ち鳴らすドラムがしっとり広げていく。付点を効かせながら溜めて揺らすベースのフレーズも格別の味わいだ。
 そして再びサックスに持ち替えて、幕。好きな曲のひいき目もあるけれど、長尺ながら全く飽きさせぬスリリングな展開が素晴らしい。

 もごもごとライブの空気感を残し、きれいなドラムのカウントで(2)につながる。
 初手から粘っこくも骨太なテナーとベースのデュオに、カウンターでドラムが絡んでいく。これも頼もしいノリが心地よい。
 畳みかけるリズムを、ゆるやかなベースが受け止め、テナーはテーマからつなぎめ無くアドリブへ雪崩れた。サックスがどんなに暴れても、エレべの奏でるテーマが確かに楽曲を固めてる。

 (3)はサックス二本吹きが痛快だ。テーマに向かうとサックスは歯切れよくもつかみどころ無い、粘っこく滴るフレーズをばら撒いた。
 ベースがメロディアスに楽曲へ背骨を通す。そしてドラムは駆け続けた。

 わずか3曲。しかし彼らの優れたインプロと、ライブを重ねた安定した足腰が、抜群のスリルを味あわせてくれる。壊れそうで着実、安定に見えて同じことはしない。相反する要素が、きれいに結実した。

 検索してて気が付いた。本盤は今、AmazonのMP3でも聴ける。しかも曲数単位で値付けするAmazonのシステムのため、2ndと3rdはわずか450円でアルバムが入手できる。
 未聴の人よ、見逃すな。聴いて全く損はしない、激しく千々に乱れるジャズが文字通りお買い得で味わえる。
  

Track listing:
1 海
2 ピーマン・ナス・イタメ
3 Mile & Half

Personnel:
Tenor Saxophone, Soprano Saxophone,Violin - 川下直広
Bass - 不破大輔
Drums - 大沼志朗

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