Prince 「The Rainbow Children」(2001)

 "Lovesexy"(1988)に次ぐプリンス流のゴスペル盤にして、プログレめいた構築美を持つトータル・アルバム。
 さらにアナログ的なサウンドを構築したプリンスが、00年代に新たな驀進する幕開けでもある。

 スポット契約でアリスタからゲストいっぱいの売れ線狙いな"Rave Un2 The Joy Fantastic"(1999)から約二年ぶり。むしろ地味な印象で、久しぶりのイメージが本盤だった。
 販売戦略で言うと、流通ルート模索の最先端なころ。えらく重かった記憶あるが、"NPG Music Club"を01年に立ち上げて次々に作品をネット販売。満を持して01年10月に本盤を発売した。インディのRedline Entertainmentに流通を任せて。

 MP3配信が一般化したのは、もう少し後の話。アルバムをデジタルで入手ってのは、なんだか慣れなかった。しかも楽曲単位だと今一つ印象が薄くなる。特にこのころのプリンスは打ち込みでシンプルなファンクを多用し、明確でキャッチーな路線ではなかったから。

 とはいえこのアルバム、CD発売は嬉しかったもののリアルタイムでは華を感じられず。
 プリンスの先鋭さにピンとこなかった。聴いてはいたが個々の楽曲を脳裏に刻み付けられず、「ジャジーなトータルアルバム」ってイメージだった。それこそ他の盤のように、プリンスの死後にあれこれ聴いて、楽曲の良さを痛感したのが本音だ。

 サウンドが野太くなったのが大きな特徴。90年代初期のデジタル臭さは、"The Gold Experience"(1995)あたりで拭われていた。しかし硬さは残り、"Emancipation"(1996)では音色を逆手に取った平たい世界観も試す。
 そして妙にエッジの立った"Rave Un2 The Joy Fantastic"の響きだった。

 だが本盤からアナログ的なふくよかさがサウンドに溢れてきた。卓を変えたのか、マスタリングなのか、技術的なことは分からない。けれども本盤から世間の流行を全く気にせず、じわっと柔らかく滲む新たなプリンス・サウンドが産まれてきたと思う。

 当時は山のようなアルバムが没になった。色々と試行錯誤だったのだろう。体制的にも、プリンスの創作的にも。
 ワーナーと契約解消の模索か、自作の再録音中ってニュースもあったような。なおかつNPG Music Clubからの単発曲をアルバムに仕上げたりも試みたらしい。

 未発表企画としては、オリジナル曲集らしかった"Madrid 2 Chicago",再録音集"When 2 R In Love",新たな蔵出し集の"Crystal Ball Volume II",当時の単発曲をアルバムにまとめた"High"。メジャー配給と噂のオリジナル盤"A Celebration"。
 他にもギター・アルバムやカバー盤などいくつもの企画が漏らされ、消えていった。

 すべてを没にして、新たにまとめたのが本盤。
 本盤はジャジーな印象と書いた。アドリブが多いとかコード進行の印象ではない。歌やビートを簡単に強調せず、場面展開や様々な要素を混ぜて演奏の比率を高めたところがジャジーと感じた。
 のちに"N.E.W.S."に結晶するような、フュージョンもしくはプログレ風味、と今では思う。プリンスはシンプルなファンクと別次元で、少しオーケストレーションを意識した世界観も好みのようだ。いわば過去は映画製作に傾けていた情熱が、音楽へ昇華したかたち。
 映像というよりストーリー性や複数要素を混ぜる豪胆さ。そんな方向性が、本盤へ結実した。

 ここではセクシャルなイメージは抑えてる。神への信仰を隠さず、なおかつ敬虔さは性根だけ。表面はファンキーな躍動感で覆うのがプリンスの気取りであり矜持だろう。

 派手なメロディやノリノリのビートで安易に押さない。ぐっと溜めて、それでいて煮えたぎるファンクネスを秘めている。
 喉を張らず、多重録音のボーカルでねっとりとメロディを厚く膨らませた。テープ操作も含めて、プリンスの声域はひたすら広い。
 
 楽曲は実質15曲と多いけれど、アルバム全体が音絵巻のようにひとつながりに聴ける。"Lovesexy"では「ひとつながり」をCDトラック1曲というメディアの仕掛けまで含めてコンセプト提示した。

 しかし本盤では小細工が不要。曲の並びだけで自然なトータル性を演出している。次々に曲が違う雰囲気を出しながら、滑らかに流れていった。

 エレピの弾む音色、ホーンのくすんだ音色。コーラスのねっとりまとわりつく音色。さまざまな温かく渋い音色が混ざって、奥行きある深い世界をプリンスは本盤で描いた。
 個々の楽曲に対して思うこともある。しかしまだうまく書けない。どうもこの盤は、アルバム全体の流れで聴いてしまう。個々の曲については、次の機会にしよう。

 いちおうシングルとして(4)が切られた。しかし本盤はシングルよりもアルバム全体での販売を重視した。続いて初のライブ・アルバム"One Nite Alone... Live!"(2002)に結実するように、ツアーで丁寧に本盤を盛り上げて。

 このアルバムで、プリンスは徹底的に俗世間に興味を失ったかのように感じた。独立独歩で自分のやりたいように行う。派手で強力な販売戦略を使わないぶん、積極的に追っかけないとプリンスに触れられない。

 聴きたければ、自分で近づいてこい。そんなニュアンスがここから始まった。

 本盤は未だにプレミアがついている。良いアルバムなのにな。もっと入手性が良くなって、多くの人に聴いて欲しい。

Track listing:
1 Rainbow Children 10:03
2 Muse 2 The Pharaoh 4:21
3 Digital Garden 4:07
4 The Work Pt. 1 4:28
5 Everywhere 2:54
6 The Sensual Everafter 2:58
7 Mellow 4:24
8 1+1+1 Is 3 5:17
9 Deconstruction 1:59
10 Wedding Feast 0:54
11 She Loves Me 4 Me 2:49
12 Family Name 8:17
13 The Everlasting Now 8:18
14 Last December 7:57
15 - 19 (no audio) 0:20
20 (no audio) 0:08
21 Last December (Reprise) 0:38

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