ONRA 「Chinoiseries Pt..3」(2017)

 西洋目線でアジアのサイケなエキゾティシズムを、ビートに載せた。

 フランスのビートメーカー、Arnaud BernardのユニットOnraによるアジア圏のヘンテコな音源でブレイクビーツに仕立てたコンピの第三弾。1stが07年、2ndが11年で6年ぶりの第三弾となる。
 アジア圏へDJで赴いたときに現地で掘ったアナログ盤を元に構成とある。あまり長尺に仕立てず、数分で次々と曲が移り変わる全32曲入り。

 揺れるフレーズ感はまさにアジア音楽。民族音楽や歌謡曲に留まらず、電子音楽やアンビエントあたりを主軸にサンプリングで抜いてるようだ。
 無闇にギャグへ走らず、あくまでヒップホップのマナーでまとめてる。とはいえ全編にわたるチープで危うい感覚は何とも奇妙だが。

 あまり手をかけすぎず、シンプルに数個のサンプリングを載せるアプローチ。短くループを回してビートを載せた。アナログの針音がばりばり。60年代あたりの音源が主流だろうか。

 中国に留まらず東南アジアやインドあたりまで音楽は広がる。むしろ日本が出てこないか、妙にビクビクする。コケにされないかな、と。少なくとも、日本語は最後まで聴こえなかった。
 とはいえ全編にわたり愛情表現が基本だ。奇妙さをあざ笑わず、あくまで自分の文化価値観に無いエキゾティックかつチープな響きを無邪気に楽しみ、ビートに載せた。

 ウータン・クランがカンフー映画にひねった熱意とクールな不穏さを込めたのと似てる。ただ、この盤はへにゃっとした音像が、どうにも怪しさや危なっかしさを漂わす。
 ふわふわと漂い、同じところを回ってるような酩酊感がアルバム全体を覆った。いかにもアジアな抒情、メランコリック、マイナーな情感がしたたり落ちる。
 
 へんてこさで奇妙だけど。この情緒は大なり小なり僕の体に染みついてる。キリスト教的な荘厳さやカントリーの田舎っぽさよりも、もっと直観的に本盤で抜かれた音楽が持つ情感は馴染みやすい。

 しかし、共感はしづらい。洋楽に惹かれた10代からアンチテーゼとしてアジア的な情感から耳を背けていたためだ。たぶん「フランスのDJが選曲した」「アジアのレコード・ディギンの結晶」「新譜」って幾層ものフィルターによる免罪符が無ければ、本盤を聴くことはなかったろう。
 
 夢中になるタイプの音楽ではない。決して胸躍るカッコよさでもない。
 しかし数十年前の文化を覗き見してるような、二世代前のオヤジたちによる猥雑な飲み屋の下世話さを味わうような、歪んだサイケさがなんとも変な気分。

 Bandcampでは過去3作も併せてボートラ4曲付、全100トラックで 30ユーロ(約3500円)と太っ腹な配信が本日付で始まった。


 Youtubeでも全曲試聴が3月に公開済み。

 帯付きの日本盤で流通もあるみたい。


Track listing:
1. The Final Chapter
2. Loyality
3. Autumn Moon Shining Over the Calm Lake
4. Reminds Me Of...
5. Will I See You Again
6. Hold My Hand
7. The Storm
8. Fake Porcelain
9. Moonlit Street
10. Like the Seaons
11. Lin Shao Ding
12. Tea Vender On the Street
13. Behind the Curtain
14. Voices In My Head
15. Keep Your Head Up
16. Waterlily
17. Memories From 1968
18. Thank You Very Much
19. Last Cup of Wine
20. Zoodiac
21. Against the Wall
22. Trip To Yunnan
23. New Year's In Guang Zhou
24. A Distant Dream
25. Incantation
26. Pearl Song
27. The Spirit Blossoms All Over the Land
28. Legacy
29. Betrayal
30. Persons on the Blacklist
31. They Got Breaks Pt.3
32. Bye Bye

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