Junior Walker & the All Stars 「Shotgun」(1965)

 モータウン流に洗練された、いぎたないサックスが轟くジャンプR&Bの1st。

 この手の激しいブロウが炸裂するR&Bは再評価されないのだな。ぼくも全貌を知らず改めて検索してみたが、ひととおりのオリジナル・アルバムが再発されずで今に至る。そもそもヒットしてないわけじゃ無い。本盤のタイトル曲は当時、全米No.1。しかしモータウンの中途半端な立ち位置が、よけいしまつ悪い。

 モータウンはそもそも、洗練が売りだった。心底のぶりぶりなR&Bではない。黒人マーケット向けながら、きれいに整えられたアレンジで白人マーケットを狙った、わかりやすい楽曲がコンセプトだった。録音の質で今からだと荒っぽくも聴こえるけれど、そもそもは溢れるパワーをきれいに刈り込まれてる。
 一方で、R&Bはもっと泥臭い側面もある。それをモータウン流に解釈が、このジュニア・ウォーカー&オール・スターズだった。

 イギリスに端を発するノーザン・ソウルの流行はレア曲が主眼だった。したがって当時はインディなモータウンながら、メジャー系の一強を担った立場のため再評価から漏れる。
 日本でも特段、この手の音楽を必要とするマーケットは無い。アメリカでも打ち込みビートが主流となったとたん、再評価の隙間が無いらしい。いっそJBまで個性が特化しないとダメか。本盤みたいに匿名性が強いR&Bは古臭いみたい。

 したがって本盤のタイトル曲のように特大のヒット曲を懐メロとして残った以外は、埋もれてしまう。
 R&Bマニアの間でも評価が無いのか、Discogsでのアナログ販売価格みても、さほど値段はついてない。
 Youtubeで違法アップロードも見当たらず。いっそ超レアなシングルならば、好事家がアップするのに。彼らはR&Bの歴史の中で、中途半端な立ち位置なのか。
 何かの拍子に在庫リスクのない配信系で、公式の再発を待つしかないようだ。

 ウォーカーは31年生まれだから本盤ヒットの65年って34歳。遅咲きだ。ビートルズ旋風吹き荒れる中、うまいことこの曲をヒットに結び付けて歴史に名を残した。

 wikiによると、そもそもウォーカーの業界キャリアはBilly Nicks(ds)のバンドRhythm Rockersで50年代にデビューから幕を開ける。Rhythm Rockersはインディアナ州のローカル・テレビに出るくらいの人気はあったが、Nicksが陸軍に徴兵がきっかけでウォーカーがバンドリーダーにかわる。
 その時にミシガン州へ活動拠点を移したのが、このバンド「オール・スターズ」の結成につながった。
 やがて元ムーングロウズのハーベイ・フークアと知り合った。フークアのレーベルがモータウンに買収をきっかけに、モータウンに繋がる。

 バンドとしてはTony Washington(ds), Willie Woods(g), Vic Thomas(key)がオリジナル・メンバー。
 だがツアーはともかく、バンドとしてのアイデンティティはアルバムだと無い。当時ならありふれた話だが。

 そもそも本盤のタイトル曲ですら、演奏はモータウンのハウス・バンドなファンク・ブラザーズのメンバーが弾いてる。
 ベースはジェイムズ・ジェマーソン。ドラムは定説が無くベニー・ベンジャミンとも、Richard "Pistol" AllenともLarrie Londinとも言われるようだ。オリジナル・メンバーにベースの名前もいないが、本来はVic Thomasがオルガンを弾きながら足ペダルだろう。
 この録音ではベースに豪華なエキストラとしてジェマーソンが入ったとも、ドラムも含めてそもそもモータウン側のテコ入れとも、双方が考えられる。
 タンバリンが賑やかに鳴る、もろにモータウン流のアレンジだし。

 "Shotgun"ってワンコード・ファンクの曲。シンプルだからこそ、テクニックが求められるということか。歌はウォーカー自身らしい。一発録音だろうに、せわしない話だ。サックスからいきなり歌へ行く。すごいな。
 テレビでの演奏風景があった。歌いながら、ぱっとサックスを咥えるようすが見られる。あてぶりではなさそう。


 アルバムとしては12曲入り。ジュニア・ウォーカーの本名Autry DeWalt名義で、共作も含めて8曲を作曲した。このうち3曲を共作したWillie Woods(g)が、他に3曲で作曲クレジットあり。二人の楽曲で本盤は成立した。(A4)でぴょこっとホランド=ドジャー=ホランドの曲を採用。この辺のごった煮感覚が当時のしたたかなモータウンらしい。

 "Cleo's Mood"と"Cleo's Back"でやんわりサンドイッチするような構成で、賑やかにサックスとオルガンが轟く威勢のいいR&Bをブチかます。アップテンポだがぐいぐい押しまくらず、パーティ・バンド的な賑やかさが持ち味だ。
 
 なお(A1)は62年にフークアのレーベルHarvey時代のシングル曲。再録かな。オリジナルは未聴で分からない。少なくとも過去のレパートリーとあるていど地続きで本盤が作られたみたい。Harvey時代に3枚のシングルがDiscogsに記載あるが、本盤へは他に収録無し。
 モータウン移籍後のシングルを集大成のアルバムってわけでもなさそうだ。
 まずシングル"Satan's Blues"は収録無し。B面の(B4)が本盤に入った。次のシングルは本盤の(A4)/(A6)。次に(A3)/(B2)。さらに(A6)が再シングルでB面が(B6)。そして(A2)/(B1)、(A5)/(B5)、(A1)とシングルが続いた。

 発売順は不明だが順番にシングルを切って、丁寧に本盤からリクープを図った様子が伺える。それとも本盤がシングル集のLPってことか。
 最後のシングル(A1)のB面"Baby You Know You Ain't Right"は本盤に未収録だが、2ndアルバム"Road Runner"に収められた。

 この2ndアルバムじたい、(A4)を再度タイトル曲に押し立ててアルバムを作ってる。今から見ると、なんとも大ざっぱな構成だった。
 とはいえ1stと2ndで大きく違うのは、2ndですでにヒット曲集なイメージが強まってることだ。2ndはモータウン・サウンドが炸裂するソウル・アルバムの色が濃い。

 彼らのアルバムで聴いたことあるのは、1stと2nd。あとは70年のアルバム"Live!"のみ。シングルはモータウンのシングル集でリイシューある。ムードR&Bをアルバムで、泥臭い側面をライブでと使い分けてたようだ。

 個々の楽曲感想を書こうとしたが、いい加減長くなった。次の機会に回そう。
 だが少なくとも1stと2ndを比較するならば、圧倒的に1stを推す。
 魅力は、粗削りながらサックスのブロウとオルガンのつややかさを楽しめるところ。ぎりぎり、ショービジネスに飲まれずライブ感を残した、ファンキーさが詰まってる。

       

 最後のシングルはなんだ、こりゃ。ジュニア・ウォーカーは95年に他界してる。他のメンバーが作った再結成バンドかな?

Track listing:
A1 Cleo's Mood 2:38
A2 Do The Boomerang 2:24
A3 Shotgun 2:54
A4 Road Runner 2:45
A5 Shake And Fingerpop 2:43
A6 Shoot Your Shot 2:59
B1 Tune Up 3:04
B2 Hot Cha 3:02
B3 Monkey Jump 2:07
B4 Tally Ho! 4:41
B5 Cleo's Back 2:30
B6 Ain't That The Truth 2:58

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