Pete Namlook & Wolfram Spyra 「Virtual Vices IV」(2003)

 フュージョン風味のほんのり影のあるファンキーなテクノ。

 ドイツのミュージシャン、Wolfram Spyraとの共演第4弾で2000枚限定。この共演は"Virtual Vices"と銘打たれ、98年の1stを皮切りに06年の"Virtual Vices V"まで5枚がリリースされた。
 原盤はプレミアつきだが、i-tunesではMP3復刻あり1900円で買える。URLはこちら。なぜかAmazonではMP3の販売が無い。
https://itunes.apple.com/jp/album/virtual-vices-iv/id43943994


 Spyraは自己名義でもナムルックのレーベルFax +49-69/450464より、97年の"Phonehead"を皮切りに数枚のアルバムをリリースした。こちらもAmazonでMP3の販売無く原盤はプレミア価格だが、i-tunesでは定価で買える(URLは割愛)。
 

 本盤は最終曲こそシンセがねっとりドローン的にまとわりつくアンビエント・ドローン風味だが、ほとんどの曲が軽快なギターとビートが絡む、えらくポップで聴きやすい仕上がりになった。
 実際のセッションを聴いてるかのよう。鍵盤がナムルックでギターがSpyra?すべて打ち込み?ギターは生演奏に聴こえるが。

 (1)はパルス状の小刻みなビートに、シンセがうねる色合い。それらを彩りに、手弾き風なエレピ音源のコードへ、カウンター・メロディが足されていく。4つ打ち風のビートだがキックは控えめ、サウンドの重心は軽い。
 シンセのフレーズも小節線をまたぎ、拍の頭と裏をフレーズの区切りが浮遊する。リズムを作り上げたあとで、手でフレーズを足したかのよう。
 
 スペイシーかつミニマルな風景だが、メロディの部分で人力の生々しさを感じさせる。かっこいい仕上がりだ。

 各曲とも11分程度と中ぐらいの長さ。(2)は(1)のエレピ音源がテンポを上げ、そのままアドリブ風にフレーズが展開。インプロに雪崩れず、コード弾きと行き来してテクノの構築美は残した。
 リズムは変わらずポコポコ軽いけれど、小気味よいテンポ感が軽快で良い。途中でドラムの主張が高まり、低音成分は薄いがダンサブル差を増した。
 
 (3)に至ると、フュージョン風味が絶好調。このアルバムで最高に盛り上がる。
 鍵盤のファンキーなリフをベースに、エレキギターのブライトなソロがたっぷり広がった。メロディから刻みへ。ギターを主軸にどこまでもクールかつスタイリッシュに決めた。
 リフをユニゾンで鍵盤とギターがなぞったり、即興ではなくきっちり作曲されている。
 ドラムも打ち込みながら、生っぽいフィルを足したりセッション色を強めた。ナムルックにしては肉感的なアレンジが異色だ。細かい粒のビート感と、広がりあるシンセの揺らぎでテクノ的なアプローチはしっかり残す。この辺のこだわりが楽しい。

 (4)もドラムは打ち込みながらフィルが生演奏らしいムードを出す。こちらも鍵盤とギターのソロが的確にフュージョン風の盛り上がりをみせた。テクニカルさやメロディの質で押さず、あくまでも音像全体のクールさを保ちながらギターのアドリブで華やかさを演出した。

 ナムルックの盤としては、かなり特異なアレンジ。しかし聴きやすく楽しめる。下世話なポップさでなく、ファンキーさを丁寧に意識してリズミカルに仕上げてる。

 そして最後の(5)がアンビエントなシンセが幻想的に動く。本盤の方向性では異質。しかし敢えて統一させず、チルアウトで充満する電子音を聴きたがる聴き手の期待に応えた格好か。
 アルバムのバランスとして違和感あり。しかし最後で20分近い電子音が続けて、アルバムのカラーを抽象的なシンセで塗りつぶした。

Track listing:
1 Femto 11:50
2 Sat Mute 11:26
3 We Don't Mind the Rain 11:04
4 Sons and Daughters 11:22
5 Philomela Nocturne 17:10

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